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剣と魔法・・・時々超能力  作者: しう
魔法の章
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3章 62 勇者とアタルと

悪魔?・・・俺の事?


白銀の鎧の男は立ち上がり振り向きざまにそう言った


そしてこちらに向かって来ると目の前まで来て俺を見下ろした


人を見下したような目・・・でもそれ以上に気になったのはコイツが左手で持っているモノ・・・髪と思われる部分を掴みプラプラさせているのは間違いなく人の生首・・・その生首から滴る血が教会の床を汚している


今見えているのは後頭部だから誰のモノか分からないが、何故かその生首から目が離せないでいた


「ああ、コレか?ここじゃなんだから外で説明してやる・・・表に出ろ」


「え?・・・ガッ!」


右手を俺にかざすと何か衝撃波のようなもので俺を突き飛ばす


勢いで教会の外に出てしまい立ち上がろうとすると男とそれに付き従うようにローブ姿の者が教会から出て来た


魔法・・・じゃない・・・念動力でもない・・・不思議な力・・・何者だ・・・コイツ・・・


「いきなり何を!」


「自分の胸に聞いてみな・・・この悪魔め」


男は腰にぶら下げていた剣を抜くと俺に向けた。コイツ・・・俺を誰かと勘違いしてるのか?それとも・・・


「待て!俺は・・・」


「アタル・・・だろ?『聖女殺し』の・・・。いやー、ビックリしたぜ。いざ聖女を捜そうと思ったら聖女候補を殺した奴がいるって言うじゃねえか。候補とは言えそんな奴をのさばらしちゃダメだろ?だから俺が直々に始末してやろうと思ってな」


聖女を捜す?・・・もしかしてコイツ・・・


「・・・勇者?」


「勇者()だ。クルシス様と呼んでもいいぜ?」


コイツが勇者・・・魔王を唯一倒せると言う・・・もしかしてさっきの俺を突き飛ばした力も勇者特有の力なのか?


「ま、待て!俺は聖女を・・・シーナを殺してなんかいない!」


「・・・殺ったか殺ってないかなんてどうでもいいんだよ。世間は聖女を殺したのはお前だと思っている。ならそれを成敗するのが勇者たる俺の役目だ」


「殺ったか殺ってないかどうでもいいって・・・一番そこが重要だろ!確かに俺はシーナを守れなかった・・・けど俺は・・・」


「ごちゃごちゃうるせえなぁ・・・どいつもこいつも・・・」


「あ?・・・くっ!」


剣から妙な力を感じる


警戒して飛び退くと元いた場所に雷が落ち地面を焦がす


「ほぉ・・・勘がいいな・・・。これは神剣のひとつ『雷鳴剣』。俺のお気に入りだ。振れば電光石火、喚べば雷を落とす代物だ・・・いいだろ?」


神剣・・・本物の勇者かよ・・・


「無実の罪を着せて人を殺すのが勇者の仕事かよ」


「お前みたいに暇人じゃないんでな・・・疑わしきは罰せよ、だ。聖女候補でかなりイケてたって話・・・俺が味見する前に殺した罪はデカい。死んで詫びろ」


味見?コイツ何を・・・


「聞けばお前は聖女候補とかなり親しかったみたいだな・・・そんなお前の前で聖女候補を味見・・・楽しいイベントが台無しだよまったく」


「おい・・・お前さっきから何言ってんだ?」


()()?口の利き方に気をつけろ『聖女殺し』・・・とにかくお前はここで殺す。で、俺はようやく本当の聖女を捜しに行けるって訳だ」


想像してた勇者とだいぶ違うぞ・・・勇者ってのは正義感溢れた青年じゃないのか?コイツの場合、勇者は勇者でも闇堕ちした勇者としか・・・


そう言えばコイツ・・・何か持って・・・


「ああ、そう言えば説明がまだだったな。お前を殺すって言ったら歯向かいやがって・・・元使徒か知らねえが勇者に逆らうなんてとんだボケ老人だぜまったく」


ウソだ・・・そんなの・・・ウソだ!!


「この大陸じゃ知らねえ奴はいない・・・そんな奴でも勇者である俺にかかれば・・・こんなもんよ」


縮地からの気功を込めた一撃


完全に不意をついたのにあっさりと躱された


勇者?ふざけるな・・・コイツは生かしておかない!


「お前も俺に歯向かうか・・・どうってんだまったく・・・奈落の近くにいると精神がおかしくなるのか?」


「黙れエセ勇者!お前は死んどけ!」


何となく分かる・・・コイツに念動力は効かない・・・直接は、な


「喰らえ!キリキリ・・・舞い!」


気功と念動力が渦巻きクルシスのがら空きの胴にヒットする。白銀の鎧を傷付け、更に突き進もうとするが途中で力が消えてしまう


「おいおい・・・この鎧・・・高かったんだぞ?」


「なんで・・・くそっ、もう一度・・・」


「フッ・・・させるか」


もう一度キリキリ舞いを放とうとするがクルシスは右手に持った剣を横に振るう。その速さは尋常ではなく、咄嗟に飛び退くが胸の付近を斬られ血が吹き出した


シールは!?・・・大丈夫だ・・・にしても速い・・・それに俺の身体が重い・・・普段ならあれくらいの斬撃なら躱せたはずなのに・・・


ダメだ・・・考えるな・・・アレは違う・・・そんな事あっちゃならない・・・そんな救いのない物語なんて・・・望んじゃいない!


「雷鳴剣の一撃を躱すか・・・それも不可思議な力の恩恵か?()()()


「さあ?どうでしょう」


あのローブ姿・・・女か・・・しかもカオルなんてまるで・・・


「どちらにしろ封じておけ・・・それで封じられるのだろう?」


「ええ・・・あら?どうやら私に気付いたようね・・・お久しぶり・・・見違えたわ・・・まさかこっちの世界で人殺しになっているとはね」


ローブを外すとそこには見覚えのある顔・・・そう・・・俺を研究所で案内した・・・


「おま・・・」


「とにかくコレは返そう。共に逝け」


投げ渡された生首・・・目が合って・・・


「うあああぁぁぁぁ!!」






「へぇ・・・念動力ね。是非調べ尽くしたい所だけど残念ね。ここにある道具じゃ何も出来ないし・・・」


「コイツの周りの物が浮いてる・・・これがコイツの力って訳か。くだらないな・・・むっ!」


自我崩壊してる?もう無茶苦茶ね。色んな物を浮かせて・・・更に勇者の剣を取り上げて・・・


「あらあら・・・勇者様大ピンチ?」


「神剣なら他にもある・・・咆哮剣!来い!」


どんな力が働いてるのかしら・・・呼べば来る剣・・・リモートで操ってる訳でもないし、ドローンで運んでいる訳でもないし・・・興味深いわね


呼び寄せた剣が勇者の手に・・・彼はもうお終いね・・・前に魔物に使っているのを見たけどあの時は魔物が跡形もなく消え去ったし


「ハッ!俺に神剣を向けるか・・・その罪万死に値する!」


彼が操る雷鳴剣を弾くと勇者は構え彼に剣を向けた


剣から発せられるエネルギー波が彼を捉え・・・ていない!?


念動力でエネルギー波を弾き返している・・・凄い・・・形あるものだけではなく、衝撃自体を操ってるとでも言うの?


念動力・・・いえ、超能力は全て我らが定義した脳波(シグマ)波によって生み出されている。人間では出せるはずのない周波数・・・そして擬似的に同じ周波数を出したところで再現不可能な不可思議な力・・・いずれは再現してみせると意気込んでいたけど・・・もう無理そうね


でも・・・現代の化学では再現出来なかったけど、その力を無効化する事には成功した。Ω(オメガ)波・・・∑波を打ち消す事が出来る波長・・・そして開発されたのがpsychic control gun・・・通称P・C・G。この銃にはふたつの機能が備わっている。ひとつは広範囲にΩ波を出す機能・・・これは完全に超能力を打ち消せない為に補助的に付けられた機能・・・そしてもうひとつは・・・


板状になっていたP・C・Gがボタンを押すと銃の形に姿を変える


「昔話が出来る相手がいなくなるのは残念だけど・・・さようなら」


もはや彼には私に興味がないのかまるっきり気付いていない。gunと名付けられたのは拳銃を模しているからではない・・・拳銃のように銃口から弾・・・P・C・Gの場合はΩ波を出せるからだ


彼に照準を合わさると引き金を絞りΩ波を発射する。広範囲にΩ波を出すのではなく収束させ対象に当てることにより完全に超能力を抑え込むために


「なっ!?・・・グッ!」


ようやく私の手の中にP・C・Gがある事に気付いたようね。でももう遅い・・・彼はこの世界で生き抜く為に苦労してきたのだろう・・・出会った頃より精悍な顔つきになっているのが物語っている・・・それももうお終い・・・


「カオルの言う通りだったな・・・妙な力を使う・・・まっ、そのままでも俺の敵ではなかったが」


勇者の剣は彼の胸を突き破る。日本でももしかしたら治せるかもしれないし、この世界なら尚更・・・魔法という非科学的な力があるのだから・・・それは当然勇者も心得ている。完全に殺すには・・・首を刎ねるか心臓を完全に破壊するか・・・


「粉々に砕け散れ!」


勇者は剣で突き刺した彼を放り投げると彼に向けて構えると剣は白く輝き始めた


「ホーリーハウリング!」


「ざっけんな!てめえは絶対ブッコロス!・・・ブ──────」




勇者の剣から放たれた一撃は空中で為す術なく喚き散らす彼を飲み込み跡形もなく消し去った


これで日本の私を知る者はいない・・・


「へっ、大した事ねえな・・・アレくらいならカオルの持ってるヘンテコな物に頼らなくても勝てたんじゃねえか?」


「そうですね・・・ただ不思議な力を使うので用心に越したことはないかと・・・」


「・・・まあな・・・ただひとつ疑問に思ってたんだが、その不思議な力を消し去る道具をなぜお前が持ってる?」


「・・・」


意外・・・脳みそ空っぽの脳筋かと思いきや少しは考えているのね。まっ、念の為に使徒とかいう従者を離しておいて正解だったわ。勇者1人なら何とでもなるから・・・


「お話する時が来たようですね・・・全てお話致します・・・我が勇者様──────」

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