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剣と魔法・・・時々超能力  作者: しう
魔法の章
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3章 53 リヴェンダート3

酷い有様だ・・・あの時もそうだったのである


泣き叫ぶ子供の声・・・燃え盛る炎・・・逃げ惑う人々・・・その中で悠然と立ち破壊の限りを尽くした炎龍リヴェンダート・・・


お前を倒す為にのみ費やした日々・・・決して平坦ではなかったぞ


《久しいな・・・息災だったか?》


「随分と社交的になったじゃないかーい・・・暴れるだけが取り柄のドラゴン君が」


《ふっ・・・10数年も毎日話しかけられれば社交的にもなるというもの・・・そろそろ返したいのだがな》


「!・・・もちろん返してもらう・・・返せ」


《返したいのはやまやまだが・・・こびり付いて離れん・・・お主なら出来るだろ?我から引き離してみよ》


「上等だーよ・・・切り刻んですぐに・・・引きずり出してやる!」


こびり付いてだと?どんな想いで・・・まあいい・・・この時の為に研鑽を重ねて来た・・・その成果をとくと見よ


魔法には2種類ある


精霊の存在が知れてから精霊だけが注目され、本来の魔法の意味を違えてしまった・・・魔法は全て精霊のお陰という間違った認識・・・いや、意図的に捻じ曲げられた常識が蔓延してどれくらいの月日が経ったであろうか・・・


全ての魔法使いが精霊使いとなり、個性が消えていく・・・確かに精霊に願い魔法を発動すれば魔力の消費は抑えられる・・・魔力を増やす事が出来ないと分かった時点でそれはかなり有効な手段である


だが果たしてそれで良いのであろうか?


皆一様に魔法が使えれば満足なのか?


違うであろう


魔法とはもっとクリエイティブであり、夢のあるものであったはずだ


誰かに合わせるのではなく、誰かに夢を与えられるものであったはずだ


吾輩はたまたま魔力の量が多かった


だから吾輩は誰かに・・・魔法を夢見る者達に・・・夢を与える者でありたい


敬われなくてもよい・・・羨ましく思われ嫉妬されてもよい・・・吾輩を見て憧れ・・・未だ未知の部分に興味を持ち、吾輩を超える為に努力してくれれば・・・それでよい


魔法とはそうあるべきである


吾輩がファークラに憧れ・・・嫉妬し・・・努力し続けたように・・・吾輩も道標となろう


「行くのであーる!・・・風水魔法:ウインドスプラッシュ!」


風魔法と水魔法を組み合わせたオリジナル魔法・・・精霊に力を借りては決して出来ない複合魔法である。自らの魔力を消費し風と水を生み出す


精霊に力を借りる場合、ひとつの属性しか集められない事がほとんどである・・・それは精霊にも感情があり、他属性がいるとへそを曲げてしまうからと言われている


精霊にも相性がある為、相性が合えば可能ではあるかも知れないが制御が難しく現実的ではない・・・いきなり見ず知らずの者と意気投合しろと言っているようなものなのである


ならばどうすれば複合魔法を創れるか・・・それは自らの魔力で創り出せばよい・・・魔法を


魔力とは魔法を使う力ではない・・・魔法を創る力・・・それが昨今では更に曲解され、精霊に渡す力だと勘違いしておる者がほとんどである


ウインドスプラッシュがリヴェンダートを切り刻み、痛みか怒りか知らぬが大きな声で喚きおる


「風と水のハーモニー・・・堪能したかーい?」


《グハハハ・・・悪くない・・・これでこそ溜飲が下がるというもの・・・存分に楽しませい!》


薄皮1枚切り裂いただけ・・・それでもリヴェンダートは傷付き、血を流す生き物であると分かったはず・・・臆せずクリエイティブな魔法を見せてみたまえ・・・ここにいる『魔導』の諸君!


「・・・動かんのかーい!」


先程の炎の渦に運良く巻き込まれなかった者達・・・その者達に勇気を与えたつもりだったが・・・


「無駄だぜ・・・ありゃあもう戦えねえ・・・」


思いの外・・・いや、当然であるか。巨大なドラゴンを前にして立ち向かえる者などそうそういない


「・・・チミはどうなんだい?ラオット君・・・ゴーレムに足をやられて走る事も出来ない状態で・・・アレに挑めるかい?」


「当然だ・・・それに足は治った・・・」


「ふむ・・・」


治った訳がない・・・恐らく立っているだけで激痛が襲っているだろう・・・足を獣化させて何とか誤魔化しているといった所か・・・漢であるな


「チミを過小評価していたようだ・・・謝罪しよう・・・だがまだ吾輩の出番であーる・・・少し下がってなさい」


「チッ・・・まあいい。どうやら因縁があるみてえだからな・・・俺様の分は残しとけよ」


「期待に添えるよう努力しよう」


《話は終わったか?ではそろそろこちらから行くとしよう・・・頼むから全滅だけはするでないぞ?》


「たかだか獣のクセに言うじゃないかーい・・・吾輩を以前の吾輩と思ったら大間違いなのであーる!」


リヴェンダートはニヤリと笑うと翼を大きく広げた・・・翼を羽ばたかせ風を操るか、それとも飛び上がり上空からお得意の炎を吐くか・・・


《複合魔法・・・久しく見なかったから忘れられていると思うたぞ・・・お主が見せてくれたのだ・・・我も見せてくれよう》


なに!?まさか・・・


リヴェンダートはその場で翼を羽ばたかせ、目の前に巨大な竜巻を創り出す。そしてその竜巻に炎を吐き・・・巨大な炎の竜巻が生まれる・・・


ファイアストーム・・・火炎旋風とも呼ばれ火の精霊単体でも起こせる広範囲魔法・・・しかしこれは旋風ではない・・・言うなればファイアトルネード


「ぬぅ!・・・なれば・・・風水魔法:ウォータートルネード!!」


あの巨大な炎の竜巻が動き出せば被害は甚大!であれば動き出す前に相殺するしか他あるまい!


炎の竜巻と水の竜巻がぶつかり合う


威力はリヴェンダートの炎の竜巻の方が上・・・だが吾輩の水の竜巻はそれを見越して水を多めに配合してある


水は炎を消し、リヴェンダートの竜巻は吾輩の竜巻を飲み込んだ


ここからが勝負である!


大地に触れ魔力を流し込む


そして残った竜巻目掛けて一斉に放った


「アースバインド!!」


一本ではとても足りない・・・何本も何本も竜巻にぶつけていく


砕けても砕けても・・・竜巻がその姿を消し去るまで何度でも何本でも・・・


《ほう・・・我が複合魔法を消し去るか・・・だが、魔力は大丈夫か?矮小な人間よ》


竜巻は威力を弱めやがて消え去った・・・が、その代償は大きい・・・魔力が心許ない・・・


「羨ましい限りであーる・・・それだけの大きさであれば魔力もさぞかし潤沢なのだろうな」


《そうさな・・・一割も減っておらぬが・・・なんなら後10ほど繰り返して見せようか?今の魔法を》


誇り高いと言われるドラゴンが嘘をつくとは思えない・・・つまりリヴェンダートの魔力はほとんど減っていない・・・片や吾輩は・・・


「おい!オッサン!」


呼ばれて振り向くと目の前に小瓶が・・・慌てて受け取り見ると今喉から手が出るほど欲しかったものである事に気付く


「これは・・・」


「貸しだ・・・たっぷり恩に着やがれ」


「ラオット君・・・確か君の仲間に私の秘蔵のマナポーションが割られたのだが・・・」


「・・・チッ・・・覚えていやがったか・・・じゃあ、貸し借りなしだ!もう二度とたてがみに触るなよ!」


「肝に銘じる・・・そして感謝する・・・」


吾輩にまた再びリヴェンダートに挑めるチャンスをくれたことを!


マナポーションを一気に飲み干し魔力が回復するのを実感する


《ほう・・・その液体が何なのか知らぬがまだやる気のようだな・・・では今度はそちらからやるがいい》


別に交互に打つ必要もあるまいに・・・前と一緒だな・・・リヴェンダートはただ戦いたいだけ・・・暇潰しなのか、それとも・・・気になる事も言っていたな・・・『溜飲が下がる』と・・・まあよい・・・受けてくれると言うのだ・・・それに乗らぬ手はない


「リヴェンダートよ・・・チミは空にたなびく雲の隙間から・・・刹那に光る現象を見た事があるかーい?」


《なに?・・・まさかお主・・・》


アレを自らの手で起こそうとしたらかなり苦労したぞ・・・新たな属性・・・いや、無属性魔法・・・


「チミを葬り去る魔法だ・・・覚えておきたまえ・・・ライトニング!!!」


リヴェンダートの上空に風魔法で空気の層を創り出し水魔法で氷の粒をぶつかり合わせて生まれた力・・・その力を溜めに溜めて放出した


激しい光が視界を奪う


遅れてきた轟音が鼓膜を揺らした


実験の時でもここまで溜めた事はない・・・加減は分からぬがそれなりのダメージを与えられるように限界ギリギリまで溜めた・・・これでダメなら・・・


むせ返るような焦げた臭い・・・煙が充満してるがリヴェンダートの巨大な影がそこにまだ存在している事を知らしめていた


人ならばライトニングを食らえばひとたまりもないであろう・・・対リヴェンダート専用の魔法・・・頼む・・・吾輩に希望を・・・あの人を・・・返してくれ!


《・・・グハッ・・・》


効いて・・・いるのか?・・・もしそうなればここで畳み掛け・・・くっ・・・魔力が・・・それならば精霊達を・・・


《グハハハ!・・・身体の芯に響くいい魔法だ・・・久方ぶりだ・・・痛みを感じたのは・・・いいだろう・・・我も少しばかり本気を出すとするか・・・》


なっ!?・・・本気ではなかったと言うのか?・・・そんなバカな・・・それでは吾輩は一体・・・


「ボケっとすんなオッサン!来るぞ!!」


ラオット君・・・もうダメなのだよ・・・これ以上の魔法は吾輩にはない・・・つまり・・・




「炎の精霊さん!あたしに所に来てー!!」


こ、この声は・・・そんな・・・


「借りるわよ?ゴーレム」


「好きにしろ!もう私達の操作ではピクリとも動かん」


ホワン君まで・・・


「んがー!!」


ドスン君・・・ダメだ・・・行ってはいけない・・・


「大丈夫ですよ・・・レジーさん・・・僕らは貴方の戦い方をこの目で見ていた・・・なので戦う資格がある・・・そうでしょう?」


「シュルドフ君・・・君まで・・・」


クリティ君がリヴェンダートに炎の精霊が集まらないように精霊を集め、ホワン君が『魔導』のゴーレムを草木魔法で操り、ドスン君がゴーレムの反対側に周りリヴェンダートから更に精霊を遠ざける為に精霊に嫌われる体質をフルに使う・・・見事な連携だがそれは精霊を使う相手にとって有効な手段・・・リヴェンダートは・・・


「チラス!今だ突き刺セ!」


「うおおおおぉ!!」


槍を・・・そんなものは効かな・・・いや、チラス君が槍を突き、その後ろから少女が槍を蹴った


槍は光を帯びると勢いを増しリヴェンダートの足に深く突き刺さる


「槍の突きに私の流打衝の威力を上乗せしタ・・・さっきより効くだロ?ドラゴン!」


「よく俺の突きに合わせられるよな・・・で、また抜けないんだけど・・・」


確かにリヴェンダートは顔を歪めているが・・・その傷程度では・・・


《愚かな・・・我が戦いに水を差すとは・・・恥を知れ!》


リヴェンダートは体内の魔力を使う・・・精霊を遠ざけた所で無意味だ。そしていくら少しづつ傷付けても・・・もう・・・


大きく息を吸い込むリヴェンダート・・・次に放つ魔法を吾輩は知っている・・・ブレスではない・・・ファイアトルネードでもなくリヴェンダートが好んで使ってた魔法・・・風が円を描き炎を纏う・・・無数の炎の刃が幾つも宙に舞う


広範囲に散らばる炎の刃は確実に1人・・・また1人と殺めていく


まるで生き残る者を選別するかのように・・・


「ラオットさん!!」


炎の刃から逃げ惑う中、ラオット君が動きを止めた・・・それにいち早く気が付いたシュルドフ君がラオット君の背中を押す・・・間一髪で炎の刃はラオット君の横を通り過ぎ、ラオット君は無傷であったが・・・


「シュルドフ!てめえ!!」


「・・・良かったです・・・無事で・・・」


「無事じゃねえだろ!てめえ!!」


炎の刃はシュルドフ君の上を通過していき・・・下半身を切り落としていった


《弱き者は去れ・・・これ以上我を不快にさせるな・・・》


やはりリヴェンダートは選別している・・・そして残った者と戦いを続けるつもりなのだ・・・


「それならば!吾輩を狙うがいい!!もはや魔力も残っていない!!さあ!打て!」


《お主はあの液体を飲めばまだ戦えるであろう?待っていろ・・・すぐに終わる》


ふ・・・巫山戯るな!・・・同胞の屍の前で戦えと言うのか!また・・・あの時のように・・・吾輩は1人となり・・・


《絶望・・・か。つまらぬ・・・やはりお主も所詮はその程度か・・・戦えぬのなら死ぬがいい》


炎の刃が一斉に吾輩に向かい来る・・・そうそれでよい・・・もう吾輩は1人になりたくはない・・・共に・・・共に行こうではないか・・・


ファークラよ・・・チミに任されたのに・・・叶えられずすまぬ・・・もう1人は・・・疲れたのであーる・・・せめてもう一度だけでも・・・会いたかった・・・リーシャル・・・




「凍てつく世界:絶凍堅牢」


聞き慣れない女性の声がした後に耳障りな甲高い音が鳴り響く


冷気を感じて目を開けるといつの間にか氷の壁に囲まれていた


「何が・・・」


スヴェンが来てくれた?いや、女性の声だった・・・しかしこれだけの魔法を精霊王以外で・・・


「思ったよりデカイな・・・」


「・・・ハア・・・見に行った時に離れてるとはいえ大体の大きさくらい分かるでしょ?あの時何を見てた訳?」


「実際に近くで見るのと遠巻きで見るのじゃ全然違うだろ!?」


「はいはい・・・それよりも貴方の出番でしょ?」


「あっ、そうだった・・・」


上空より話し声が聞こえて見上げると2人の男女が宙に浮いていた


1人は吾輩もよく知る人物・・・もう1人は・・・見覚えはあるが思い出せない


《お主・・・精霊王か・・・だが・・・なぜ浮いている》


「おお!?喋った!本当に喋ったぞ?」


「だから言ったでしょ?・・・て言うか早く行きなさいよ・・・シュルドフが危ないわ」


《お主ら・・・一体何者だ?》


「ん?ああ、少し待ってろ・・・後で相手してやる・・・新精霊王と聖女の旦那が、な──────」


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