少女の修行。
投稿遅くなってすみません!書きかけのタブが3回消えまして……(泣)今後も遅れることもあるかもしれませんが、えくれあ。をよろしくお願いします。
「何が言いたいのよ、急に襲ってきて。そんなことするとは思わなかったわ。」
レイラは険悪な顔でライトを睨みつけました。
「いいや、これは喜ぶべきことだ。お前は加えられた力の二倍の力ではじき返す、無意識下の力がはたらいているんだ。もちろんその分力は消費するが、もうこれで死ぬ可能性がぐんと減る。」
ライトは無残に折れ曲がった右手を無表情に見つめ、そっと左手をかざしました。
「ふーん。悪いけど、生きることを第一にしてちゃ勝つことなんてできっこないのよ?」
レイラは口をひん曲げていいました。
ライトの左手から出た光が、右手を包み、光が晴れた後には無傷の右手がありました。
「まあ、分からないだろうから、私が分かりやすく教えてやろうではないか。心して聞け。」
レイラは不快そうな顔を思いっきりすると、睨むようにライトを見ました。
「いいか、お前のご両親が死んだのは、境界の修復に気を取られて背後をとられたことだ。」
レイラの顔が苦しそうに歪みました。
「そんなことはもう知っているわ。いちいち確認しないで――」
「人の話とは、最後まで聞くものではないか?」
ライトはぴしゃりというと、口を開いて、さっと手を広げました。
「まあ、人には視界の限界がある。基本的には前、これぐらいしか――見えない。」
そういうとライトは手を100度ぐらいに広げました。
「だけど、例えば後ろから襲撃されても。」
ライトは広げた手を平らにすると、その上に人が後ろを向いています。
その後ろから黒いものが攻撃すると、シールドが出てはじかれ、人は襲撃者に気付きます。
「こんなふうに、死ぬことだってなく気付ける。」
ぱちんと手を閉じると後に残ったのは金の霧だけでした。
「ええ、そうね。でも、それだけじゃ勝てない。いずれ魔力を使い果たして、死ぬ。そうでしょ?」
あまりにもあっさりしたその声に少し震えがあるのをライトは敏感にかぎ取りました。
「なら修行すればいい。そうだろう?今のお前の力は、両親以下。当たり前だがな。」
レイラは今度は嫌な顔をせず、素直にボール大の球を生み出し、かかしに向かって投げつけました。
(ライトはああいったけど、このボールじゃまったくもって攻撃力がない。もっと、もっと何かいいものは……!)
レイラは、脳裏に数々の武器を思い浮かべました。
(槍、ってどんなんだったっけ?こんな感じに練って、もっと細長く、凝縮させて。)
右手に僅かな重みが加わりました。
「ハアァァアアアッ!」
気合を乗せて、右手の深緑色に輝く槍をかかしに向かって勢い良く投げました。
(しまった、コントロールが!)
レイラは瞬間、失敗する、と思いました。
槍は、狙いを外れてかかしの横に突き刺さるはずでした。
が、しかし深緑色の光が軌道を真っすぐに支えて、あろうことか加速までして、槍はかかしの心臓にピタリと突き刺さりました。
かかしは直後、爆発四散しました。
「今、何をしたんだ。」
ライトは鋭く目をさっきまで槍のあったレイラの右手に据えて言いました。
「えっと、ボールを。槍にした、わ。」
レイラは首をすくめて悪気はないことを示しました。
「ほうほう。で、手ごたえはどうだったんだい?」
ライトが怒っているようではないので、レイラは少しほっとしました。
「んんー。ボールの時より、手ごたえがあったわね。何よりスタイリッシュだわ。」
「ふんふん。じゃあ、もっとだ。」
レイラは思わず口を開けました。
「もっと?」
レイラが聞き返すのを待っていたかのように、ライトは答えました。
「もっと、いろいろな武器ができるのか。もっと、攻撃力を高めることが出来るのか。……見せてみろ。」
レイラはううむと考えこみました。
「んじゃ、行くよ?」
(右手に矢、左手に弓……)
きらきらと光りながら深緑色の二組が手の中に出現しました。
ぎりりと引き絞って、眉間を狙う。
「シッ!」
短い掛け声とともに、矢をきゅっと放しました。
深緑色の矢は、空気を切り裂いて飛び、正確にかかしの眉間に突き立ちました。
そのまま、かかしは霧となって消えました。
「それは、かかし本体にダメージはないけど、人なら間違いなく死んでるダメージが入ったときの処理だね。」
ライトは顔を輝かせて言いました。
「さすがじゃないか。攻撃の幅が広がりそうじゃないかい?」
レイラはにこりと笑いました。
(ふうん。爆発とかはしないけど、ちゃんとダメージ入ってるじゃない。)
一方ライトは難しい顔をしました。
(ふむ、まあ実践向きじゃないかな……。これから次第かもしれないか……?)
「ふむ。ところで、剣はしないのか?」
手でぶんぶんと剣を振る動作をするライト。
「うーん、剣ねえ。」
(昔、誰かに負けてすごく屈辱的なことを思った気が。)
レイラはふと昔の記憶に浸りました。
いくらか剣の道場で真ん中ぐらいになると、大会にも出してもらえるようになっていた。
『3番、メイニング・レイラ。そして――』
アナウンスの記憶は、ここで途切れる。
戦っていた記憶は、ほとんどない。
ただ、覚えているのは、倒れた土の感触。
首筋に当たった冷たい刃。
見下ろしている、漆黒の髪を腰まで垂らした背の低い少女。
あれ?
ふと、小さな違和感。
でも、その違和感の正体に気付く前に。
「どうした、やらないのか?」
ライトの声で、思考は断ち切られた。
「行くわよ。集中、集中……」
レイラは、愛用していた細剣の、形、線、大きさ、すべてを正確に思い浮かべました。
レイラが目を開けた瞬間、美しい剣がレイラの手には握られていました。
地面をけって、かかしに接近します。
「セイッ!」
斜めに深緑の光がかかしにはしりました。
切られたところから、徐々に、少しずつ、光が広がって。
ぱりぃん!
鏡が割れるかのように、かかしは後もなく消え去りました。
「どうよ!通用、しそう?」
レイラはどこか不安そうにライトに問いました。
ライトは眉をひそめました。
(今の一撃だけ、ほかの時とは気合が違った。早かったし、力の込め方もきめ細かかった。)
「なら、試すだけ。」
素質が、あるかどうかを。
「いいか、奴らを一撃で倒せる私の技を見せてやる。片時も、瞬きするではないぞ!」
高らかに右手を空に突き出すと、ライトはそのまま吸い寄せられるように少し浮かび上がりました。
莫大な力が迸りました。
太陽の光が遮られ、雲が空を覆いました。
一滴、ぽつりと。
レイラの額に雨粒が落ちました。
雷鳴が、轟きました。
「来たれ!――黄金の稲妻!!」
ライトが、あげた右手を振り下ろすのと同時に。
目の前に金の稲妻が落ちてきて。
正確に、ただ正確に。
かかしだけを、打ち抜きました。
(これが、ライトの真の力――。)
ライトがまた元の椅子に優雅に座るのと、雲が晴れ、太陽が出てくるのは同時でした。
長い沈黙が訪れました。
かかしの下の地面は、大きくえぐれていました。
「――さて。」
ライトはすっと右手をかかしのあった地面に向けると、金色の光を地面へと放ちました。
「そうだな、これを見て、どうするか。私は、母上、父上にも、同じことをした。どうするかは――お前次第。次にお前を見るのは、二日後――。成長しているか、楽しみにしておくよ。」
そういうと、ライトは金の光となって姿を消した。
(決まったあああああ!)
そんなライトの心の叫びには、一つも気づかず。
(あれに、マネできることと言えば。……)
レイラは少し考えて、結論を出しました。
(技に名前を付けることだな。うん。)
レイラは、さっきまでライトの座っていた椅子に座って技の名前を考え始めました。
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