少女は“力”を使う。
今回は戦闘です。下手かもしれませんが、あたたかい目で小説を読んでください(笑)
「かかってこい、レイラ!」
放課後、体育館の裏に仕方なくきたレイラを待っていたのは。
巨躯の男性だった。
年は2、3ほど上だろうか。身長は30センチも違う。
「ちょっと。どういうこと?」
片眉を器用にあげてレイラは言った。
にやりと笑って、ライノは言った。
「本人同士の対決っていうルールはないでしょ?」
(まいったな~。早く終わらせてライトのところに行きたいのに。)
レイラは内心ため息をつきつつも、全く表情を変えずに巨躯の男性と向かい合いました。
「頑張ってよね、ラール。」
ライノはにこりと笑って彼の肩をたたきました。
「んじゃまあ、初めてもいいかな?」
レイラはぽりぽりと頭をかきながらライノに問いかけました。
「あら、余裕そうね。じゃ、時間無制限。片方が戦闘不能になるまで!つまり、彼を倒した後あたしも倒さなきゃダメって寸法!」
レイラは深呼吸して体の力を抜きました。
「すたーとぉ!」
ライノが右手を大きく振り上げた瞬間。
ラールと呼ばれた男性の体が勢いよくこちらに突進してきました。
「うおらああ!」
右手がこぶしの形に固められ、わきが大きく空きます。
(隙だらけ、ね……)
レイラは、武術の教室に2年ほど通っていましたが、上級生に対しても余裕で倒してしまうレベルまで通ったところで、やめることになりました。
レイラはわきをかいくぐって背後をとると、ラールには目もくれずにライノに突進しました。
いつでも首の骨を折れる体制を整えると、大きな声でラールという男性に言いました。
(見たとここの二人恋人関係よね?なら、ちょっと脅せば止まるか。)
「動いたらこの子の骨折るわよ!動かないで!これで私の勝ちでいいかしら?」
(本気で首の骨はおらないけど……気絶はルールだからしてもらわないとね。)
レイラはその経験から、どれくらいの加減をすれば気絶して、どれくらいで傷がつくか、だいたいわかっていました。
「止おまああるううかああよおおおおおおっ!!」
大きな歩幅で急にラールが突進してきます。
思わずレイラは目を見開きました。
(構わず骨を折る?いや、こいつはライノが傷つこうが気にしてない。ただ負けたくないだけ!)
一瞬迷いましたが、ライノを離してばっとレイラは横に飛び退りました。
ライノは巨躯の男性に踏みつけられ、苦悶の表情をしています。
「あら、恋人を踏みつけても平気なの?」
距離を十分とって、じりじりと一進一退を繰り返しながら、レイラは歯を見せて嗤いました。
「はは。こんなやつ、遊びでしかねーよ。面白そうだから引き受けたが、もう面倒だ。――倒すか。」
獰猛な笑みを浮かべると、ラールは胸ポケットからナイフを取り出しました。
「ちょっと。刃物は禁止じゃないの?」
レイラは呆れながら言いました。
「は、そんなルールは聞いてないね。残念ながら。」
言うが早いかラールはぴたりと心臓を狙ってナイフを構え、突進してきました。
「隙だらけ……よっ!」
さっきのようにわきをかいくぐろうとしたとたん。
「残念。――ナイフは一本と、誰が言った?」
もう一本のナイフが、背後から迫ってくる。
振り向くと、思わずレイラは手で防御しようとしてしまいました。
(しまった……骨が折れる。入院かな……)
勝ち誇ったようなラールの顔がスローモーションのように流れました。
その時、深緑色の光が、ゆっくりと手の中に集まりました。
かあんっ!
それは、勢いよくナイフをはじき返し、それだけではなくナイフを一本折れさせました。
「なっ……素手でナイフを……!?」
レイラに見えていた光は、ラールには見えていないようでした。
(驚いてるのはこっちだけどね!私は絶対に、こんなふうに動きは止めないよっ!)
一瞬のスキをついて、ナイフを手から叩き落し、相手が拾うより先にそれをレイラは足で抑えました。
「残念だったね。降参したら?不利だよ、あはは。」
(後輩に刃物を使わなきゃいけないなんて、どれだけ弱いんだろう。信じられない。)
レイラはこのラールという先輩が、とっても嫌いになりました。
「くそアマがあああああ!」
いうなり素手でラールはまたもや突進してきました。
「お・そ・い!」
突進を軽くいなすと、レイラは首筋に手刀をたたきこみました。
「ふう。」
レイラはぱんぱんと両手をはたくと、ため息をつきました。
「早くライトのとこに行かないとね。――いろいろと、聞きたいこともあるしね。」
二人が倒れた体育館の裏を後にして、レイラは山へと向かいました。
草木をかき分けて昨日の祠へとレイラは向かいました。
「ああ、霧が出てきた。ライト、もういるかな?」
まわりが何も見えなくなっても、もうレイラは焦らず一筋の光が見えている広場へ入りました。
「ライト―!いるんでしょー?起きなさーい!」
口に手を当てて叫ぶと、突如として龍の置物からごおっと金の筋が立ち上がり、人の姿をなしました。
「――断っておくと、決して寝てるわけではないんだからね……。」
相変わらずの美少年は、顔にそぐわず頭を押さえて言いました。
「へえ、そうなのね。別にどうでもいいけど。」
「ま、掛けたまえ。要件は何かな?」
いつもに増して横柄な口調にイラっときながらも、レイラは冷静に口を開きました。
「今日、決闘をすることになったんだけどね。」
という話を始めました。
レイラの中では、夜ご飯の謎はもはやどうでもいいこととなっていました。
「――ってこと。さあ、これはどういうこと?言うまでもなくこれは昨日のが原因よね?」
問いただすように机をたたくと、ライトは顎にてを当てて考え込みました。
「ふむ……」
美少年というのは、どんなしぐさをしても様になるものです。
(ああもう、こういう特権はやめてほしい。)
「じゃあまあ、修行もかねて、ってことだけど、そうだね。」
すっとライトは両手でドッジボールのボールぐらいの空気を包むように構えました。
「こんな感じで、この中に守護の力の球を、作るイメージで、守護の力を集める――。」
きん、とコップを打った音を引き延ばしたような音がして、金色の光が手の中に充満しました。
「んで、これを対象に叩きつければ攻撃の基本、っと。」
ライトは、広場の片隅にたたずんでいたかかしに向かって、まるで球技のようにポンっと気軽にその球を投げました。
ばあんっ!
大きく爆発、炎上したと思ったらかけらも残らず、かかしは燃やし尽くされました。
でも、驚いたことに爆発した煙が薄れると、すぐに無傷のかかしが出てきました。
「ちょっとやってみてよ。まあ初めてだし、期待はしないけど。」
(そういわれると、なんだか、ねえ。)
レイラは、同じような手の形にすると、やり方も分からないので念じました。
(集まれ集まれ集まれ集まれ集まれ―!!)
小さくつぶやきながら、自分の体の一部がここに少し引っ張られるイメージを作りました。
「おおー!」
ライトが声を上げました。
「あ……!」
ナイフをはじいた時と同じ、深緑色の光が手と手の間により鮮やかになりながら溜まっていきます。
「投げてみて!」
ライトの掛け声と同時に、レイラは振りかぶってかかしに向かって投げました。
ばんっ!
かかしは、支えの棒を残して炭になりました。
「ふーん、おかしいなあ、その出力じゃ、ナイフは割れないと思うんだけどね。」
レイラも考え込みました。
「はっ!」
瞬間、勢いよくライトが手刀をレイラに向かって叩き込もうとしました。
「ちょっと!」
レイラは思わず防御態勢をとり、衝撃に備えました。
――が、いつまでたっても衝撃はやってきませんでした。
「ふーん、まいったなあ、こりゃ!」
そういうライトの声が少し震えています。
見ると、ライトの手刀ははじき返されたようです。
「とっさの力。加えられた力の二倍の防御力がある――!!」
ライトは少し血の出ている自らの両手を見つめながら、何かに魅入られたかのようにつぶやきました。
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