表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金色の光に包まれて。  作者: えくれあ。
4/9

少女は“目覚め”る。

振り仮名は、結構直訳です。10文字に収めるのは大変でした……(-_-;)

そしてレイラは、ライトの背中に乗って、祠まで戻ることにしました。


「ライト。」


レイラの真剣な声に、ライトは思わず後ろを向きそうになって、あわてて前を向きました。


「なんだ?」


「あのさ、“加護”ってどういうものなの?身につけたいとは思うんだけど、分かんなくてさ。母様とか父様のこと、教えてよ。」


ライトはふっと笑いました。

……龍なので分かりませんでしたが。


「えっとな。何も知らない人に、あえて説明するとするなら、魔法のようなものだ。」


「魔法?」


「そうだ。子供の話す、おとぎ話に出てくる魔法だ。えーと、なんだ、その、手から光線が出るとか、うーん、敵の攻撃をはじく……見えない盾?だとかな。」


「そういうのが使えるってこと?」


背中の上でレイラが身を乗り出すのがライトには分かりました。


「うーむ……ちょっと違うんだ。例えば、お前の母上。母上の“加護”は、“水の加護”だった。それはな、水に――特に川など自然のものに――触れると、それから力、つまり加護をもらえる、というものだったんだ。具体的にどうとは言い難いが……」


レイラはちょっと考え込み、聞きました。


「じゃあ母様はどうやってあれを倒されたの?」


「そうだな。母上の攻撃……は、あいつらの致命傷にはなりえなかったが、動きを止めるとか、のろくする、あとはその力を、刃に乗せて切ると、あいつらには毒が回った。あとは飛べるとか、身体能力の向上、だな。」


「待って、飛べるの!?」


「加護次第さ。加護にもいろいろあるしな。お前が飛べるかどうかは五分五分、ってとこかな。ちなみに父上は飛べたぞ。」


レイラは考え込みました。時折眉をひそめて、指で何もない空間をなぞるかのような動きを繰り返して、目を閉じて集中しているようでした。


ライトは、そんなレイラを刺激しないように、ただ前方に集中しました。


しばしの沈黙が、そっと二人を包みました。


(ある意味では、それは魔法のようだ。でも、魔法と違う点と言えば?……ふつうは出来ないことが出来る点は同じだし、敵に対して攻撃できる点も同じだ。)


ライトには、考え込むレイラを包む雰囲気が、少し変わったのが分かりました。


さっきまでが、雷を腹に秘めた雷雲だったとすれば、今のレイラはまるで知りたいことをすべて知りたい、わくわくしている美しい朝焼け空の雲のようでした。


(好きな時に使える点も……いや。)


そこでレイラははっとしました。


(ライトは、水に触れたとき、特に自然のもの、力を発揮できるといっていた。好きな時ではないのだ。ということは、違う点は……)


「力を“分けてもらう”点……!」


思わず少し声に出してしまいました。


「そうだ。」


さきほどまで沈黙していたライトが、低い声を発しました。


「そこは、魔法と違うのだ。“加護”とは、自分の心に力を分け与えてもらい、それを実物に――目に見える形に、変えるものなのだ。」


レイラは身を乗り出して、口走りました。


「父様は?何の加護だったの?」


早く知りたくてたまらないという顔のレイラに、ライトは苦笑を漏らしながら、


「風の加護だ。突風の刃なんかは強くて、しっかりあいつらを殲滅してくれた。父上がいなければ、きっと私らの代はうまくいかなかっただろうよ。特に突風の日なんか、父上にとっては絶好の日だったよ。」


(かっこいい……)


幼いころに、両親を亡くしたため、両親のことを何も知らず、その強さもひとつも分からなかったレイラ。きっと、一番寂しかったのは、両親というのが名前だけの存在のように思え、自分の存在が孤独に思えたからでした。


思わず、目の中に光る液体が満ちてきたレイラは、それをライトに悟られまいとそっと袖で目をぬぐいました。


「ほれ、着いたよ。降りろ。」


ライトは、優しく促しました。


地上十センチほどの高さで止まっている龍の体から滑り降りると、美しいうろこがきらきらと光りながら一枚、落ちました。


「ライト……うろこ、落ちたわよ。」


「ん?そうか。じゃあペンダントにでもして、首にかけておけばいい。私は何も感じないからな。それは少しだけ、お前を守ってくれるよ。」


「ふうん。」


レイラは、それをポケットにしまいました。


「では、儀式を始めるか?」


レイラはきょとんとしました。


「ああ、言い忘れていた。そのな、加護の力を表面に出し、より強くするためには、儀式が必要なのだ。神の私による、な。」


(神だったのか……まあ龍なら神ってこともあるよな。)


レイラはそっ、とひざまずいて、言いました。


「始めます――。」


少年の姿になったライトは、レイラの頭に手をかざしました。


「森よ、母なる山並みよ。加護の力を、どうかこの少女にお与えになりますよう!少女の父は、メイニング・“風の加護(ウィンド・プロテクト)”ドラノ、少女の母は、メイニング・水の加護(ワラ―・プロテクト)レイカ。彼女の名は、」


そこでライトは言葉を切り、大きな声で空に向かって言いました。


「メイニング・《森林の加護》ガーディアン・オブ・フォレスト・レイラ……!」


ライトが、その言葉を発した瞬間、ざわざわっと周りの木々が、まるで生きているかのように動きました。


円形の広場の床そのものに描かれた魔法陣が、突如金色の光を宿しました。その光は、空まで登って、一瞬、村全体を包みました――。



「あんれ?気んのせいかね~?今、お空様が金色じゃあなかったかいな。」


今年70の年になる、ラッチェばあさんは、洗濯物を干す手を止めてふと空を見上げ、息子嫁のロインに聞きました。


「気のせいでしょう、お義母(かあ)さん。もう年なんですし、体に不調が出るものですわ。」


「いんや。今のは確か~に、20年前と同じだべ。こういう風に、金色にでっけ~川がぺかーっと光ったもんだべ。」


「ええ、そうですね。」


残念なことに、ロインには、義母の言葉を真剣に受け取ることはないと思っていたし、ほかに目撃した人もいなかったので、ラッチェばあさんがぼけていた、という風になり、だれもこのことを気に留めたものはいなかった――。




レイラは、突然に金色の光が小さく、凝縮されながら自分の体に入ってくるのを感じ取った。


嫌な感じは、みじんもしなかった。


レイラはただ、迫りくる金色の光、大きな力を胸へとしまおうとしていた。


心の扉が、あの時と同じように開いていく。


ライトは、目を見開いて目の前で、強大な力を飲み込んでいくレイラを見ていました。


(君の、父上とて、母上とて。……これほどの力を飲み込む、心の“器”はなかっただろう。……美しい……)


ライトは、ただ、その様に、見惚れていました。


(いや、私が知りうる限りの君の血筋で、これほどまでの大きな力を飲み込みうるものは、一人だっていなかった。君は……!)


今や、レイラは目を大きく見開いて、豊かな黒髪を後ろに下げ、ただ一心に心の扉を開き、金色の光を、一滴残らずその胸にしまおうとしていました。


(君は、とてつもない、力を持っている。この私ですら、時にはかなわないと思わせるような――!)


そして、金色の光は、少しも残らず、ゆっくりと収まってゆきました。


ゆらっと、レイラの体がぐらついて、ぱさり、とその場に倒れました。


「大変だ、“加護麻痺”だ!」


ライトは慌てて駆け寄り、少し華奢なその体を支えました。


(……。)


そっと、そばの長椅子に寝かせて、自分の力を少し、送り込みました。


「きっと、君は私たちの光になる――。」


そっとつぶやくと、血色の良くなってきた頬をなでると、そのからだを、彼女のベッドへと、そのままの姿勢で“転移”させました。


読んでくださりありがとうございます。良ければ評価、ブクマお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ