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到着

 8月17日 0531時 エジプト カイロ西空軍基地


 朝焼けの砂漠の空港に"ウォーバーズ"の戦闘機がオーバーヘッド・パターンで次々と着陸した。後ろからは空中給油機、輸送機などが続き、E-737がアプローチを開始する。更に、その後ろからは、人員・物資の輸送支援のためにやって来た"アーセナル・ロジスティックス"のC-5MやA400M、C-17A、KC-30A、KC-10A、B747-8iが続々と着陸した。

 着陸した軍用機は、フォローミー・カーの誘導で空軍エプロンへ向かった。エプロンには、ラファールB/CとF-16C/Dが並べられている。


 エジプト空軍のサイード・バリス大佐は、やって来た傭兵たちの航空機を眺めた。A400Mからは早速、AH-64E、HH-60Wが、C-5MからはCV-22Bが引き出された。他の輸送機からはミサイルや爆弾、機関砲弾が入ったコンテナが降ろされていく。傭兵たちの動きには、一切無駄が無い。銃を持った警備兵がB747から次々と降りると、即座に防御態勢に入り、自分たちの航空機に不審者が接近しないように警戒している。彼らはプロだ。バリスは確信した。そして、この演習では、自分たちを楽しませてくれるだろう。


 佐藤勇は、F-15Cをマーシャラーの誘導に従って駐機させ、エンジンをカットした。エジプト空軍の兵士が、タラップをかけてくれる。酸素マスクを外し、キャノピーを開けると、熱く乾燥した空気が纏わりついてきた。日はすっかり昇り、気温はどんどん上がっていく。眼の前には掩体壕が並び、その周囲には技術スタッフや"アーセナル・ロジスティックス"の傭兵たちが、荷物を近くの格納庫に運び込んでいる。どうやら、この区画を使う許可は出ているらしい。

 それにしても、どうして演習先はいつも砂漠なのだろうか。前回はUAEで、今回はエジプト。普段から熱帯のディエゴ・ガルシア島で過ごしているため、暑さにはだいぶ慣れたが、乾燥で目が乾くのは我慢ならなかった。


 E-737のタラップからゴードン・スタンリーが降りてきた。彼がエジプトに来るのは初めてだが、現役兵士だった頃は、アフガニスタンやイラクに派遣されていた経験があるので、砂漠の気候には慣れっこだった。だから、ここに来る前に、部下たちには、何度も注意事項を確認させ、伝達していた。常に水筒を持ち歩け。夜は冷えるから、温かい格好をしろ。皮膚には保湿クリームをしっかり塗っておけといったようなことだ。

 "ウォーバーズ"のメンバーが始めたことは、航空機の整備と状態確認だ。戦闘機に搭載された空対空ミサイルと増槽に不具合が無いかどうか確認した。技術スタッフたちは、輸送機から降ろされた実弾、整備機材、電子機器、訓練用模擬弾の状態を確認し、それが完了したものは弾薬・機材庫に運び込まれた。


 ゴードン・スタンリーはサイード・バリスの方へ歩いていった。スタンリーが敬礼すると、バリスが答礼する。

「エジプトへようこそ、ミスター・スタンリー。エジプト空軍大佐、サイード・バリスです」

「"ウォーバーズ"司令、ゴードン・スタンリーです」

 スタンリーはバリスに付いていきながら、基地の様子を見た。全ての戦闘機は、鉄筋コンクリート製の掩体壕に入れられ、完全に守られている。自分たちの戦闘機は、そのうちの空いている9戸の掩体壕に入れられた。これらの掩体壕は、最近、建設されたばかりのもので、コンクリートと鋼鉄、セラミックで強化されており、Mk82通常爆弾の直撃程度には耐えられるように設計されているそうだ。

「近年、我々は外部の傭兵部隊との訓練に力を入れておりまして。つい先月、陸軍がオマーンにいる傭兵部隊"レッドライオンズ"と演習をしたばかりです」

 スタンリーは、"レッドライオンズ"のことは知っていた。オマーンに駐屯する、陸上戦力を主体とした傭兵部隊で、戦車や自走砲、歩兵戦闘車、多連装ロケットシステム、攻撃ヘリ、輸送ヘリ、汎用ヘリなどで武装している組織だ。アメリカ陸軍、アメリカ海兵隊、陸上自衛隊出身の傭兵たちが主体となっている。

「今日はお疲れでしょうから、ゆっくり休んでください。朝食を食べたら、明日からの演習内容の確認をしましょう」


 8月17日 0613時 スーダン ドンゴラから西300kmの砂漠


 未整備の滑走路にAn-124が着陸した。この大型輸送機には、ナンバーも所属を表すマークも描かれていない。周囲には、格納庫が並び、建設中の建物も幾つか目立つ。

 グラント・ウォーマーズは、この急ごしらえの航空基地の状態に満足していた。予定よりもずっと早く3本の滑走路と4か所の広いエプロンが完成し、そこにはMiG-35SやJ-10B、J-11Bも並べられている。飛行場の周囲は鉄条網で囲まれ、数箇所に機関銃座と狙撃手が配置された監視塔が建設されている。万が一、無関係の人間が近づいてきたときは、威嚇して追い払うか、場合によっては射殺するよう、見張りをする部下たちには命じてある。まあ、命令通り不審者を排除すれば、噂が広まって、不用意にここに近づく人間はいなくなるだろう。

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