防空戦闘-3
9月19日 1041時 エジプト カイロ西空軍基地
基地の防空司令部は緊張に包まれていた。自軍機と友軍機、そして敵機と判定されている彼我不明機のアイコンが電子の地図上で入り乱れ、時折、消えていく。
サイード・バリス大佐は腕組みをしてスクリーンを見上げた。エジプトとスーダンの国境地帯の地図が拡大され、そのあたりを戦闘機が飛び回っているのが分かる。
防空司令部は民間機と運輸局に対して、戦闘が行われている空域へ飛行機を飛ばさないよう警告を送っていたものの、突然の事なので一部の民間航空機が未だに離脱中だ。
こいつらが何者なのか、全くわからない。スーダンにそのような大規模な武装集団が巣食っているいるという情報も無かった。しかし、そんな事は問題では無い。まずは、奴らを排除するのが先だ。それに、こいつらが何を企んでいるのかも、この戦闘を切り抜けたら調査する必要がある。
9月19日 1043時 エジプト カイロ西空軍基地
基地のエプロンに駐機したE-737ウェッジテイル早期警戒管制機のドアにかけられたタラップの上で、ゴードン・スタンリーは真っ黒なサングラス越しに空を見上げた。雲一つ無く晴れ渡った深い青に染まった空に、強烈な光と熱を放つ白い太陽がポツンと浮かんでいる。
スタンリーたちは結局のところ、部外者として要撃管制室に立ち入る事を許可されなかった。仕方が無い。自分にできるのは、ただ戦闘機乗りたちを信じて待つだけだ。
エプロンではCV-22BオスプレイとHH-60WジョリーグリーンⅡ、AH-64Eアパッチ・ガーディアンがいつでも飛び立てるよう、整備員たちが準備をしていた。昨日、ディエゴガルシア島から資材を持ってきたC-17AグローブマスターⅢは空中戦に巻き込まれる恐れがあるとして、地上に留め置かれている。
基地の各所ではパトリオットPAC-2ミサイルが入ったS-300がランチャーを空に向け、侵入者に備えている。
基地の防空司令部は緊張に包まれていた。自軍機と友軍機、そして敵機と判定されている彼我不明機のアイコンが電子の地図上で入り乱れ、時折、消えていく。
サイード・バリス大佐は腕組みをしてスクリーンを見上げた。エジプトとスーダンの国境地帯の地図が拡大され、そのあたりを戦闘機が飛び回っているのが分かる。
防空司令部は民間機と運輸局に対して、戦闘が行われている空域へ飛行機を飛ばさないよう警告を送っていたものの、突然の事なので一部の民間航空機が未だに離脱中だ。
こいつらが何者なのか、全くわからない。スーダンにそのような大規模な武装集団が巣食っているいるという情報も無かった。しかし、そんな事は問題では無い。まずは、奴らを排除するのが先だ。それに、こいつらが何を企んでいるのかも、この戦闘を切り抜けたら調査する必要がある。
9月19日 1043時 エジプト カイロ西空軍基地
基地のエプロンに駐機したE-737ウェッジテイル早期警戒管制機のドアにかけられたタラップの上で、ゴードン・スタンリーは真っ黒なサングラス越しに空を見上げた。雲一つ無く晴れ渡った深い青に染まった空に、強烈な光と熱を放つ白い太陽がポツンと浮かんでいる。
スタンリーたちは結局のところ、部外者として要撃管制室に立ち入る事を許可されなかった。仕方が無い。自分にできるのは、ただ戦闘機乗りたちを信じて待つだけだ。
エプロンではCV-22BオスプレイとHH-60WジョリーグリーンⅡ、AH-64Eアパッチ・ガーディアンがいつでも飛び立てるよう、整備員たちが準備をしている。昨日、ディエゴガルシア島から資材を持ってきたC-17AグローブマスターⅢは空中戦に巻き込まれる恐れがあるとして、地上に留め置かれている。
基地の各所ではパトリオットPAC-2やS-300、更には古めかしいMIM-23ホークといった対空ミサイルシステムが稼働し、迎撃に備えていた。
「くそっ、こんな状況なのに何もできないなんてな」
シモン・ツァハレムはAH-64Eアパッチ・ガーディアンの周囲を歩き回り、アクセスパネルを開けて機体の状態を確認しながらぼやいた。このガンシップグレーに塗られた攻撃ヘリのスタブウィングにはM261ロケットポッドとM299ランチャーが取り付けられていた。ロケットポッドにはハイドラ70FFARロケット弾、M299にはAGM-114Lロングボウヘルファイアが搭載されている。その隣では、CV-22BオスプレイとHH-60WジョリーグリーンⅡがいつでも飛び立てるよう準備をしていた。もっとも、自分たちが飛び立たねばならない状況に陥らないことが一番なのだが。
9月19日 1044時 エジプト南部
ハッサン・アブドゥル・ハリファ中尉は苦境に立たされていた。後ろから2機のフランカーが追撃してくる。その2機のうちの1番機に、先程、自分の1番機を撃墜されたばかりだ。
コックピットの中でロックオンしてきたことを知らせる電子音が聞こえてきた。ハリファ中尉はAN/ALQ-184を作動させ、ロックオンを逸らそうとした。それが功を奏したのか、警報音は途切れた。ハリファ中尉は、なんとか短射程ミサイルの射程内に入らないよう、エンジンのパワーを上げ、逃れようとする。しかし、それが致命的なミスとなった。
J-11Bが搭載しているR-27ET1のシーカーヘッドがアフターバーナーの熱を捉えた。フランカーのパイロットは操縦桿の発射ボタンを押し込む。
ミサイルはロケットモーターに着火し、捉えた熱源に向けて飛翔した。ハリファ中尉のラファールCのミサイル警報装置が危険を知らせる。
ハリファ中尉はチャフとフレアを撒き、ミサイルから逃れようとした。だが、ロシア製のミサイルは確実にフランス製の新鋭戦闘機に迫り、至近距離で信管を作動させた。無数の金属の破片が戦闘機に食い込み、フライバイワイヤシステムの電線を複数個所に渡って切断し、油圧アクチュエイターや燃料タンクを切り裂いた。
ラファールCのコックピットでは複数の警告灯が点滅し、けたたましく警報音が鳴り響いた。ハリファ中尉は機体を捨てて、脱出する決断をした。射出ハンドルを引くと同時にキャノピーが吹き飛び、イジェクションシートがハリファ中尉を空中に射出した。
ハリファ中尉は空中に飛び出すと同時に、全身に激しい衝撃が走るのを感じた。パラシュートが開き、12000フィート下の地面に向かって空中をふわりと漂う。だが、無事に着地できるとは限らない。すぐ近くを飛ぶ戦闘機に気流をかき乱され、パラシュートが制御不能になる可能性や、爆発した戦闘機やミサイルの破片を浴びる危険性、更には、飛び回る戦闘機が突っ込んでくる可能性もある。ハリファ中尉は不安げに周囲を見回し、パラシュートのコードを引いて自分が進む方向を微調整しながらゆっくりと地面を目指した。




