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空戦演習-2

 8月17日 1107時 エジプト上空


 アフマド・アリー・シャリク大尉は、ラファールCのコックピット画面を操作し、真ん中のディスプレイに空対空モードに設定したレーダー画面、右ディスプレイには戦術GPS画面、左ディスプレイにレーダー警戒画面を表示させた。このフランス製戦闘機は、特にネットワークとミッションソフトウェアに優れ、正に現代の戦闘機といった感じだ。前任者のF-4Eとは一線を画し、更には、現在の主力機でもあるF-16Cに対しても大きなアドバンテージを持っている機体だ。以前、空軍内部での演習でも、シャリクの部隊は、F-16を装備した飛行隊を"壊滅"させたことがある。

「こちら"スカラベ1"、敵は戦場を渡り歩いた手練ばかりだ。背中に注意しろ。おまけに、AWACSの援護付きときている。だが、近年のテロ行為を考えると、これすら生ぬるいシナリオだ。テロリストが組織的な航空攻撃を仕掛けてくるケースなんてザラだ」

『"スカラベ2"了解』

『"3"了解』

 しかし、状況としては、こちらが決して有利とは言えない状況なのは明らかだ。確かに、エジプト空軍側は、基地と付近のレーダーサイトから管制を受けながらの戦闘となるが、向こうはAEWを持ち出している上に、実戦経験豊富な連中だ。だが、こちらも、欧州の空軍部隊と数多く演習を重ねてきた。簡単に負けるつもりは無い。


 一方、"ウォーバーズ"は通常の敵拠点攻撃のための体制を整えていた。F-15C、Su-35S、MiG-29K、ミラージュ2000Cがやや広めに間隔を開けて前方を飛び、後ろからはF/A-18C、F-16V、タイフーン、F-15E、JAS-39Cがついてきている。

『"ゴッドアイ"よりウォーバード各機へ。敵機が接近中。方位、006』

 佐藤勇はF-15Cのレーダーモードを切り替え、遠方探知モードにした。4つの輝点がMFDに表示される。

「こちら"ウォーバード1"、ターゲット確認。1番機を最優先目標に指定・・・・・・」

 "ウォーバーズ"の全ての戦闘機のレーダー画面に表示された、エジプト空軍編隊の1番機のアイコンに赤いボックスが重なる。

『まだミサイルの射程外だ。様子見しよう』

 無線からハンス・シュナイダーの声が聞こえてきた。確かに、ターゲットは"ウォーバーズ"が持つ最大射程の空対空ミサイルであるミーティアの射程圏には入っていない。

「ECM作動開始。妨害電波発信・・・・・・」

 F-15C、F-15E、F-16VのセンターパイロンにはAN/ALQ-188訓練用電子妨害装置が搭載されている。あくまでも訓練用の機材であるため、実戦で使うことができるものでは無いが、本格的な電子妨害環境をシミュレートすることができるため、多くの軍、傭兵部隊、PMCなどで使われていた。


 8月17日 1114時 エジプト上空


 "ウォーバーズ"の司令塔であるE-737、コールサイン"ゴッドアイ"は、大空を悠然と飛び、周囲の航空機の動きを見回していた。訓練空域は、エジプト空軍によって飛行禁止区域に指定され、民間機が入ってこないように管制され、万が一、進入するような事があれば、武装した戦闘機がスクランブル発進することになっていた。

「ようし、どうかな?」

 ゴードン・スタンリーがレーダーを長距離探知モードにして、周辺の空域をスキャンした。"ウォーバーズ"の4機の戦闘機が『敵』に向かい、残りの5機はその場から離れ、遠巻きに様子見をしているようだった。

「攻撃に4機、バックアップに5機。通常通りのパターンだが、それが通用するだろうか・・・・・・」

 一方、エジプト空軍の戦闘機は、半数が向かってくる飛行機を攻撃しに向かい、残りの戦闘機はバックアップのために離れていく。

「エジプト空軍の動きは・・・・・・ちょっと教科書通り過ぎるような気がしますが」

 原田景は、やや辛辣な口調で敵を演じる部隊を評価した。やがて、"敵機"の編隊がUターンして、攻撃部隊へと向かってくる。

「"ゴッドアイ"より"ウォーバード1"へ。敵は君らを狙っている。6時方向から4機だ。残り4機は・・・・・散開して、遠巻きに様子を見ている」


 8月17日 1116時 エジプト上空


 アフマド・アリー・シャリクはラファールCを旋回させ、傭兵部隊の方へ真っ直ぐ飛んでいった。後ろからはしっかりと僚機がついてきている。シャリクは、部下たちには、ほぼ普段どおりの戦術を使うよう指示していた。特別なことを無理にするよりは、慣れた方法で戦う方が良いという考え方だ。

「全機、360度全方位に気を配れ。現在、敵は正面。後ろを取った」

 やがて、レーダー警報音がコックピットに鳴り響いた。

「レーダーにロックされた。ミーティアが飛んでくるぞ!全機、散開!」

 ラファールは2機ずつの編隊に分かれ、攻撃を躱そうとした。シミュレーターソフトは、まだミサイルが飛んできたとは知らせてきていない。

「くそっ、やはりか!」

 真っ直ぐ飛んでいた4機編隊は、やはり囮だったようだ。遠くで様子を伺っていた5機が、攻撃を始め、こちらに向かってくる。

「全機、一旦この場を離れて態勢を建て直せ!その後、再度攻撃を仕掛ける!」

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