便利魔法と神聖魔法
宜しくお願いします。
下駄を脱ぎ、頭の上の手拭を肩に掛け、いつもの様に寛いでいると、魔力で強化加工された腕時計のガラスケースが、淡い空色で発光している事に気付いた。
おや、分かり難いけどこれって光ってる……。こういう場合は、どうしたら良いんだ。……困った時は右側のボタンを押す。そう言われてる様な記憶があるぞ。
『ピッ』
リューズの様なデザインのボタンを押す。視界に【☆所持品☆】【☆能力☆】【☆称号☆】【☆状態☆】と文字が浮かんだ。
【☆所持品☆】をクリックする。
名称 野営用寝袋 名称 東京の水道水
種類 寝具 種類 美味しい水
備考 消耗品 備考 1本=500ml
個数 7個 個数 24本
名称 おにぎり 名称 おにぎり
種類 食料 種類 食料
備考 梅 備考 鮭
個数 3個 個数 3個
名称 おにぎり 名称 サンドウィッチ
種類 食料 種類 食料
備考 銀シャリ(塩) 備考 BLT
個数 3個 個数 24個
名称 ビーフジャーキー
種類 食料・嗜好品
備考 ソフトタイプ
個数 101本
名称 イエローダイヤモンド
種類 宝石・贅沢品
備考 燃えます
個数 6個
名称 魔剣エクス
種類 武器・剣
状態 待機中
召喚 可能
名称 亡者のパウダー
種類 素材
備考 風に注意
個数 51個
名称 ブラックダイヤモンド
種類 宝石・贅沢品
備考 燃えます
個数 206個
名称 大銀貨 名称 中銀貨
種類 貨幣 種類 貨幣
個数 95枚 個数 3枚
名称 銀貨 名称 大青銅貨
種類 貨幣 種類 貨幣
個数 1枚 個数 8枚
名称 中青銅貨 名称 青銅貨
名称 貨幣 名称 貨幣
個数 14枚 個数 4枚
※所持金額日本円で約957,444円※
所持品の確認を終え、【☆称号☆】をクリックする。
魔物殺し☆★★★★★★★★★★
人命救助☆★★★★★★★★★★
亡者殺し☆★★★★★★★★★★(New)
悪人退治☆★★★★★★★★★★(New)
称号の確認を終え、【☆能力☆】をクリックする。
手拭戦技☆☆★★★★★★★★★(UP1)
下駄歩行☆☆☆★★★★★★★★(UP2)
宝石拾集☆☆☆☆☆★★★★★★(UP4)
薬草採集☆★★★★★★★★★★(New)
聖魔法S☆★★★★★★★★★★
所持魔法【ヒール】☆10
【キュア】☆1(☆開放☆)
土魔法A☆★★★★★★★★★★(New)
【ピソーク】☆1(☆開放☆)
【グリャージ】☆1(☆開放☆)
水魔法A☆★★★★★★★★★★(New)
【ヴァダー】☆1(☆開放☆)
【リュート】☆1(☆開放☆)
火魔法A☆★★★★★★★★★★(New)
【アゴーニ】☆1(☆開放☆)
風魔法A☆★★★★★★★★★★(New)
【ウラガーン】☆1(☆開放☆)
光魔法A☆★★★★★★★★★★(New)
【スヴェート】☆1(☆開放☆)
無魔法A☆★★★★★★★★★★(New)
【ミュスクル】☆1(☆開放☆)
【ムイースリ】☆1(☆開放☆)
※未開放能力は習得ポイントを
消費する事で、正式に習得所持します※
能力の確認を終え、【☆状態☆】をクリックする。
レベル7→62
HP70→731 MP100→874
攻撃力A☆☆☆☆☆☆☆★★★★(UP6)
魔力A☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★(UP6)
防御力A☆☆☆☆☆☆☆★★★★(UP6)
魔耐性A☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★(UP6)
速度A☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★(UP6)
幸運S☆☆☆☆☆☆☆★★★★(UP6)
習得ポイント6362
≫≫装備状況≪≪
名称 手拭
格付け ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
等級 神級品
防御力 9999
備考1 各種低下・状態異常100%回避
備考2 メンテナンスフリー
備考3 防具でもあり武器にもなる
所有者 ニノマエ トシ
名称 浴衣
格付け ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
等級 神級品
防御力 9999
備考1 非物理攻撃耐性☆1
※各種属性攻撃99%カット※
備考2 物理攻撃耐性☆1
※各種物理攻撃99%カット※
備考3 弱者回避☆1
※己よりレベルの低い者からの
攻撃を全て無かった事にする※
備考4 危機回避☆1
※戦闘時のみ敵対する者の
移動行動速度が10分の1で見える※
※HPが10%以下に減ると
HPとMPを何度でも全回復する※
備考5 メンテナンスフリー
所有者 ニノマエ トシ
名称 下駄
格付け ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
等級 神級品
防御力 9999
速度 9999
備考1 メンテナンスフリー
備考2 不燃性
所有者 ニノマエ トシ
名称 腕時計
格付け ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆☆☆☆☆
等級 超・神級品
備考1 各種管理☆1
備考2 通信機能≪OFF≫
※この世界では使用不可※
備考3 聖魔法【ヒール】☆10
※MP消費無し※
※☆1~10の範囲で使用可能※
備考4 メンテナンスフリー
備考5 自動更新
※1度ロードすると
次回からは自動で更新する※
所有者 ニノマエ トシ
レベル62だと。……高いのか低いのかさっぱりだ。比べる対象が必要だ。だが、個人情報だ。簡単には手に入らないだろう。ここは、会話の流れでさり気無く聞き出すとしよう。明日の朝まで保留だな。
魔法が使え無かった理由も分かった。まさか、二段階の罠に成っていたとは、所持してからの開放作業が必要だったとはな。解放するには習得ポイントが必要で、ポイントは6362ある。
【ピソーク】☆1の(☆解放☆)をクリックしてみた。
習得ポイントを5消費し解放しますか。視界に【☆YES☆】【★NO★】の文字が浮かぶ。
5程度なら問題無いかな。【☆YES☆】をクリック。
同じように解放前の魔法を全て【☆YES☆】をクリックし解放した。消費した習得ポイントは全部で50だった。
どうしよう。ムラムラする。無性に魔法を試し撃ちしたい気分だ。あぁ~……落ち着け。落ち着くんだ。うぅ~……いやダメだ。我慢出来無い。今直ぐ全部試したい。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽
ウズウズする身体を抑え切れずに、冒険者ギルドまで来てしまった。
……しかし、15時頃のギルドがこんなに混んでいるとは想像以上だ。こんな時間から食堂で盛り上がってる冒険者もいるのか。
ギルド内が活気に溢れるている姿を見た事は無い。地方から都会へ上京したばかりのお上りさん状態だ。
「ギルドへの依頼申請カウンターは、向かって左側の一番奥になります。始めての御依頼ですか」
「魔法の試し撃ちが出来そうな場所を職員の方に教えて貰おうと思いまして」
ニワトリに似た感じの着ぐるみに身を包んだ女性が話掛けて来た。ギルドの職員だと思われる。何とも痛々しい恰好だ。
「何だ家の冒険者でしたか。あれ……」
ニワトリに似た感じの着ぐるみに身を包んだ女性は、僕の顔をジロジロと……ん……視線が高いか……。頭に乗せた手拭を見ている。
「君が噂のルーキー君ねぇ~」
「初心者なのは確かですが、尻火付草を採集してるだけなのでルーキーには不適格だとおもいます……」
「何、言ってんのよぉ~。野良犬のネッガーと、大食いのヤッカイと、拷問好きのトゥアゴを1人で倒した冒険者ギルドランクNのトシって、君でしょう」
ネッガー。……ヤッカイ。……トゥアゴ。誰だ。
「ネッガーって人に覚えがありません」
「何ぃ~謙遜かしらぁ~……。冒険者達や冒険者ギルドにそんな物通じ無いわよ」
『スゥー』
「あぇぇえっ~。……おかしいわね。今背中を叩いたはずよねぇ~」
頭の上にエクスクラメーション・マークとクエスチョン・マークが浮かぶ人の表情ってこういう感じなんだろうな。素っ頓狂な声まで上げ、痛々しい恰好と相乗効果で傍にいるこちらまで恥ずかしく成る。
「君後ろが見えるのね……」
浴衣のおかげだ。レベルが自分より低い者からの攻撃は全て無効になる。そうだ、聞きたかった事を思い出した。確認するなら早い方が良いだろう。
「魔法の練習が出来る場所を聞きに来たのですが、……えっとぉ~。……ギルドランクを上げる時の参考にしたいなと思いまして……。レベルの高い人ってだいたい幾つ位ですか」
いかん。ミスった。……ランクNで高レベルの人を参考に……確実に間違った。
「レベルかぁ~」
あれ……以外に大丈夫そうだ。気にし過ぎたか。
「軍や冒険者ギルドでは、レベルよりもエクスペリエンスやセンスやスキルを重要視しているのよ」
経験則や修練度は確かに大切だ。勿論、適正や能力も重要だ。だからこそ、経験や修練度を見極める為にレベルが存在するのではないのか。
「戦闘って、武具の等級や属性の相性。何より人数が多い方が圧倒的に有利でしょう」
仲間が多いにこした事は無い。だが、話を聞く限り、数と装備に頼った印象を受ける。エクスペリエンスを積み重ねる事がこんな状況で可能か。
「だから、レベルよりも、ミリタリーランクやギルドランク、エクスペリエンスで能力を判断するのよ。家には、レベルが8だけどギルドランクAの冒険者もいるし。レベルが30以上だけどギルドランクDの冒険者もいるわ。レベルが低くても討伐や戦闘関連のクエストのコンプリート実績が高いランクAの冒険者の方が、どう考えたって信用信頼、あらゆる点で上だからね」
そうかなぁ~。数でゴリ押ししてるだけで、実績は参加した回数。経験になっていないからレベルが上がっていない。これって俗に言う寄生って奴じゃないのか……
レベル30以上でランクDの冒険者の方が信用出来る気がする。間違っているのだろうか。騎士団員のあの弱さには驚いたが、筋肉や豚やもやしと比べるとあれでもましだったと考えるべきだ。手拭で顔を叩かれただけで気絶する打たれ弱さ……分からないなぁ~あれでランクC。
「因みに、このギルドでレベルが高い人って幾つですか」
「レベルかぁ~。…………57だったか58だっか、56だっか忘れたけど、誰かいたはず何だけど忘れちゃった」
「そうですか。仕事中にありがとうございました」
レベル50後半の人がいる。今日はこれで良いや。
「そうだったね。魔法を気持ち良くぶっ放せる場所をお探しだったねぇ~。……午後は君の担当100%のサザンカが魔法道場の清掃管理兼受付担当だから、地下5階に行ってみると良いよ」
「地下5階にそんな施設があったんですね。早速行ってみます」
「はいよぉ~」
▽▲▽▲▽▲▽▲▽
「サザンカさん」
「あら、トシ君。こんな時間にギルドにどうしたの」
「魔法を幾つか覚えたので試し撃ちしたいと思いまして、それでギルドに良い練習場所が無いか聞きに来たら、ニワトリみたいな恰好をした職員さんにここを案内されたんです」
「あぁ~ヴァロナさんね。昨日はペンギンの恰好をしてたわよ」
「そうなんですね」
個人の趣味に口を出す気は無い。
「魔法の試し撃ちですよね。魔法って適正を持ってい無いと使え無い事は知ってますよね」
「はい」
たぶん。解放の有無だ。解放する事で適正を持った事になる。ヴァロナさんという名の職員が言ってたレベルよりギルドランク重視の体制は、習得ポイントと解放を理解してい無いからではないか。
「それで、試し撃ちする属性は何ですか。それに合わせて的を設定します。後、トシ君は初めての利用なので注意事項を伝えます。注意事項は3つ、申請した属性以外の魔法を的に当て無い。魔法を人に当て無い。MP用の回復道具を必ず持参する。さぁ~始めましょう」
他人様に魔法を当て無いのは当然だ。もしもの事を考えケアー用品を持ち歩くのも当然だ。属性以外とはどういう事だろうか。
「違う属性を的に当てると何かあるんですか」
「属性には優劣がありますよね」
そういえば、初級魔法の指南書の最初の方に書いてたな。土→水→火→風→土。土は水に水は火に火は風に風は土に対し優位属性である。つまり劣位はその逆で、土は風に風は火に火は水に水は土に対し劣位属性という事になる。
「はい」
「魔法道場の備品を長く大切に利用する為にも、必ず優位にある属性の的に、劣位の属性を当てる様にしてください」
「なるほど。分かりました」
ここで試せるのは発動の有無と、同属性の強弱の組み合わせ位か。
「それで、属性の設定はどうしますか?」
「まずは、土を試したいので、それでお願いします」
▽▲▽▲▽▲▽▲▽
「サザンカさん。その的って、ただの土嚢ですよね」
「そうよ。風の的が存在するなら見てみたいわね」
「確かに風の的って理屈は分かりますが、的として存在を維持させ続けるって大変そうですね」
「流動性の属性は、その場に留めておく事が不可能らしいです」
本だけだと分からない現場の声。良い感じだ。
「さぁ~良いわよ。好きなだけ練習して行ってね」
「ありがとうございます。ピソークとグリャージを試したら、そのまま水属性を試すつもりなので、土嚢は調度良かったかもしれないです」
「≪ピソーク≫」
おっ、掌から砂が出て来た。ヒールだけだったからちょっと嬉しいかも。
「トシ君。もしかして魔法の練習って、便利魔法の練習ですか」
「便利魔法……魔法と何か違うのですか」
「初級には、生活魔法、応用魔法、活用魔法の3種類がありまして、戦闘を考慮し生み出された活用魔法の事を、一般的には初級魔法。他の2種類は便利魔法って学校で習わなかったの」
断片的に残っている記憶から察するに、たぶんだけど習って無い気がする。しかし、これは痛恨のミスだ。
何て事だぁ~。やってしまった。習得ポイントを50も使って生活を豊かな物にする為の魔法を解放してしまうとは……。勢いに任せてやってしまうと必ず後悔が待っている。何を考えていたんだ僕は……。あれ。どういう事だ。何か後悔する様な失敗をした事何てあったっけ。……まぁ~良いかぁっ。
解放した魔法が扱える様になる。それ即ち、幸せを自らの手で勝ち取り安らぎを得る。湯船への招待状だ。源泉かけ流しの温泉では無いが解放するだけの価値はある。そうだ価値は計り知れないのだ。
「気を取り直して次行きます」
「そうですね。便利魔法は便利ですから。土以外の属性も扱える様でしたら、ギルトとしても斡旋可能なクエストが増えるので大助かりです。でも、ノービスのままが良いんですよね」
「何処かのタイミングでCまでは上げるつもりです。いきます。≪グリャージ≫」
正面1mの地点に、半径15cm程の泥溜りが出来た。
「何も考えずに発動すると、30cmの泥溜りになるのか」
「手に泥団子が出現する程度の魔法だったと記憶しているのですが……勘違いでしょうね」
「たぶん全部便利魔法だと思うので、このまま続けてしまって構いませんか」
「どうぞ」
「≪ヴァダー≫」
指先から水が出た。全ての指で試した結果。全ての指から水は出た。足の指は宿でやる事にした。
「≪リュート≫」
指先から氷が出た。全ての指で試した結果。全ての指から氷は出た。足の指は宿でやる事にした。
そして、≪アゴーニ≫は、指先から火。≪ウラガーン≫は、指先から風。≪スヴェート≫は、指先が発光。全てどの指でも出来た。キュアとミュスクルとムイースリは魔法道場では効果の感じを掴め無い。後日何処かで試す事にした。
「一通り扱える事が分かったので、今日はこれで帰ります」
明日、採集を終えたら魔法資料館に行って、戦闘用の魔法を覚える事にしよう。ギルドランクCが現実味を帯びて来た。良い感じだ。
「ちょ、ちょっと待ってください」
ん……あっ。土嚢を片付けて帰れって事ね。使ったら片付ける当然の事だ。僕とした事がうっかりしていた。土嚢は重い。率先して冒険者側が運ぶべきだ。
「これはこれは失礼しました。土嚢は何処に片付けると良いのでしょう」
「土嚢ですか……今日の清掃担当は私です。そのままで大丈夫ですよ。……って、土嚢の話じゃありません」
そうなのか。だとすると思い当たる節が無い。いや待てよ。気付か無い所で粗相をやらかしてしまったか。試し撃ちしたくて気が焦っていたのは確かだ。
「今、土水火風光の魔法を使ってませんでしたか」
何だ。ただの確認ね。あぁ~驚いた。
「はい、この10日間で覚えた魔法を試しました。実は、キュアって状態異常を改善する魔法と、ミュスクルって肉体強化と、ムイースリって思考強化の魔法も試したかったんですが。この3つって発動しただけだと分からないじゃないですか」
「【キュア】ですか……。【キュア】は神聖魔法の1つです。ようするに聖魔法です」
「そうみたいですね。同じ聖属性のヒールだけは前から扱えるので、キュアはたぶん使えると思うんです。ただ、僕としては無魔法に興味があります。初級魔法の指南書の中盤以降は無魔法ばかりでした。バリエーションに富み使える様になったら面白そうです」
「……面白い……と、言いますか、四大属性の土水火風と無属性。上級属性の光と最上級属性の光が扱えるって事ですよね」
「う~ん。今のところ無魔法は分から無いので、土水火風光聖の6つですね。さっきまではヒールしか使えなかったので何とも残念な感じでしたが、今日からは水と火を使っていつでも入浴生活です。水と火万歳って感じです」
「ヒ、ヒヒ【ヒール】……ですよね……」
心配されてるよぉ~。ですよねぇ~。普通に生活していたら、ヒールを使うタイミング何て全くと言って良い位に無いからなぁ~。
「そうなんですよねぇ~。ヒールもキュアも日常的に使う機会が少ないので微妙ですよね」
「えぇぇぇ~~~。な、何を……【ヒール】【キュア】を扱える人は非常に少なくてですね。宮殿や軍や教会も病院。何処も人手不足。慢性的なヒーラー不足の状態なんです。ですから、薬草採集のクエストが常にあるんです」
ありがとうございました。