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異世界で幸せを手に入れました。  作者: 諏訪弘
プロローグ
38/40

我が家の別荘

 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽トシ視点


 素晴らしい檜に桧葉に山毛欅の原生林が広がるセクレート大森林(旧禁断の森①)が私の土地になった日。我が家のあるルシミールの森(王家の森)も正式に私の土地になった。


 高度な自治権が認められた私の名義の私の土地だ。


 私の土地になると同時に、ルシミールの森の正式名称は【ドゥ―シャー自治区・ルシミール森林自治管区・ルシミールの森】に、セクレート大森林の正式名称は【ドゥ―シャー自治区・セクレート大森林自治管区・セクレート大森林】に、変更された。巷では、旧ルシミールの森を聖森(せいしん)ルシミール。元禁断の森で旧セクレート大森林を聖杜(せいと)セクレートと略した呼称が定着しつつある様だ。


 自治区(私の土地)の住民は、妻でルシミール王国の王女のローザ、長男で勇者のドル(16歳)、長男ドルの家庭教師&私の研究仲間でハーフエルフ(エルフ50%魔族25%人間25%)のエレーナさん(18歳)、魔王のカシュちゃん(年齢不詳)、魔剣のエクス(見た目、剣)、ルシミール王国の王宮から派遣されている使用人達、たまに帰省する長女でルシミール王国の王都にある王立魔導研究所付属魔法学校の最上級クラスに通うアルマ(14歳)、次男でルシミール王国の王都にある騎士団付属指揮官養成寄宿学校の騎士科の上級クラスに通うラズ(12歳)、三男で騎士科の下級クラスに通うトポ(7歳)。長女のアルマと共に王宮で暮らす次女のグラナ(0歳)。


 次女グラナはまだ幼く帰省は難しい。もう少し大きくなるまでは私達が会いに行く事にしている。


 ▽▲▽


 聖森(せいしん)ルシミールのルシミール湖の湖畔にある我が家は、手に入れた当初地上3階建ての中庭(中央に東屋完備)&プライベートビーチ(東西40m南北900mの砂浜)付きの普通の大豪邸だった。


 今では、風呂&露天風呂&砂風呂&岩盤浴等私的に色々と諸事情あって増改築を繰り返した結果、地上3階地下13階建ての中庭(中央に東屋完備地下施設は東屋からのみ出入り可能)&露天風呂(温泉)と脱衣所と休憩室が完備された離れが3棟(総檜の棟&総桧葉の棟&総山毛欅の棟。時間を見て総紅檜の棟を建てる予定でいる)&プライベートビーチ(東西40m南北900mの砂浜、露天風呂付き浴室が1つ)&船着き場(全長80m総t数1000tの船が1隻)&農場(約1000ha、家畜専用の温泉完備)付きのちょっと立派な大豪邸になっている。


 既に御存知の御方もござりましょうが、我が家の売りは誰が何と言おうと、私が総桧葉の浴槽に魔法で張った至高の湯舟。地下77mから汲み上げている温泉もこの上無く極上の一品ではあるのだが、我が家の売りは私が総桧葉の浴槽に魔法で張った至高の湯舟だ。


 間違い無い。




 ▽▲▽▲▽


 湯舟で思い出した。


 約16~17年前のある日の事だ。


 我が家からオクタ湾(南西海)まで船で行ってみよう計画を実行した。船着き場から乗船しルシミール湖からゆったりのんびりまったり船でルシミール川を下りオクタ湾を目指す。ちょっとした冒険旅行だ。


 冒険旅行は順調そのものだった。


 だが、下流にある禁断の森②に入って230Km程下った辺りで計画は失敗に終わった。山も丘も無い森の中に落差130m強の大滝が現れたのだ。


 私はジャンプして下流を確認した。


 現実とは反則レベルで残酷だ。130m強の大滝の下流には、同じく130m強の大滝が6個待ち構えていた。


 私の夢は計画は志半ばにして潰えた。


 何故、そこまで海に執着していたのか。それは、新鮮な海の幸を我が家の食卓に安定して並べる為だ。


 内陸にあるルシミール王国には海が無い。中央大陸スィリディーナにある国の中で海が無いのはルシミール王国だけだ。だから私は海を目指したのだ。


 ▽▲▽


 潰えた後、私に好意的な歴史の大国ルガキタイル王国の王都アーセンに移住しようかと本気で考えた事もあった。


 移住は、ローザに反対され諦めた。


 冷静になって考えれば分かる様なものだ。新鮮な海の幸を我が家の食卓に並べたい。それだけの理由で、ここでの生活を捨て移住するのは愚行でしかない。


 海を眺めながら風呂に浸かりたい。せめて、この位はまともな理由が欲しい物だ。


 海の見える風呂かぁ~…………。好きなだけ新鮮な海の幸が手に入る海の見える風呂………………。


 私は熟考した。そして一つの答えを導き出す事に成功した。


 【そうだ、アーセンの海の近くに別荘を建てよう】


 ▽▲▽


 何故、オクタ湾に面した歴史の大国ルガキタイル王国の王都アーセンなのか。二度目になってしまうが、それは、私に好意的だからだ。訂正しよう。ローザと私に対して異常なまでに好意的だからだ。


 異常なまでの好意を向けられるのには訳がある。


 それは、冒険旅行を実行する少し前の事だ。ルシミール王国に侵攻した独裁政権下の歴史の大国ルガキタイルは色々あって武装解除し主力部隊を失った。


 主力部隊を失ったルガキタイルは、忍耐の大国シチート王国とサプフィール王国に攻め込まれ、あれよあれよと言う間に滅亡5秒前。首都アーセン(現在の王都アーセン)は包囲され陥落寸前の状態だった。


 ……成り行きで色々あり、現在の歴史の大国ルガキタイル王国で、ローザと私は【救国の英雄】と呼ばれる様になった。


 首都や王国を解放する序に幽閉されていた王族や大貴族達も解放した。王族や大貴族達には【復古の大恩人】と呼ばれる様になった。


 救国の英雄であり、復古の大恩人。それが、好意の理由だ。


 ▽▲▽


 【そうだ、アーセンの海の近くに別荘を建てよう】


 私は、王都アーセンの王宮まで一っ走りし、国王に話をした。


「陛下。アーセンの海の近くに別荘と船着き場が欲しいのですが、許可は必要ですか」


「復古の大恩人ドゥ―シャー様。許可等不要です。王家を王国を挙げて協力させていただきます」


 復興中の王国から金銭や食料や労働力を提供して貰う訳にはいかない。私は、私の魔法と技術だけで別荘を建てる決意をしていた。気持ちだけを受け取り、国王には感謝を伝えた。


 ▽▲▽


 別荘を建てるのに最も優れた場所を探して海岸を走り回り、そして王都アーセンの南約200Kmにある草原と砂丘と海のコントラストがとても美しい小さな半島に辿り着いた。


 最寄りの人里は王都アーセン。道も森林も雑木林も無い。見渡す限り360℃大パノラマの最高の別荘地だ。


 私は早速作業を開始した。


 砂浜と草原の境界草原側に地上5階地下3階の別荘を建て、海には大型船が5隻停泊可能な大き目の船着き場を整備し、船着き場に隣接する様に倉庫と小屋をを3棟ずつ建て、別荘と船着き場を真っ直ぐ繋ぐ直線の道を敷いた。


 我が家から連日七日も通い詰め完成させた我が家の別荘。


 充実した七日間だった。


 達成感に満たされ満足した私は、私が開発した防犯グッズで万全のセキュリティー体制を施し我が家への帰路についた。


 ▽▲▽


 半年程経った頃だ。


 けたたましいビープ音が我が家中に鳴り響いた。


 私は1階にあるセキュリティー中央管理室へ急ぎ向かった。


 ビープ音の発信元を確認した私は、思い出した。


 【別荘を建てたんだった】


 ビープ音は、小屋への侵入を知らせる警戒音だった。


 私はビープ音を止める為、一っ走りし半年ぶりに別荘を訪れた。


 ▽▲▽


 小屋の中には、産気付いた身重の人魚と、三叉槍を構え威嚇する人魚がいた。


 色々あったが、私の魔法で出産は安産に終わった。


「君も今日から父親だ。奥さんと子供の為にも死んではいけない。生きて抜いて守り抜くんだぞ」


「はいっ。ありがとうございます」


「出産のお祝いで渡す様な物ではないのですが、これを差し上げます」


「「これは」」


「箱に入ってる黄緑色ポーションは滋養強壮状態異常回復用です。飲む時は小瓶1本全部飲んでください。瓶で渡した黄色ポーションは体力魔力回復傷怪我治癒用です。大、中、小、微小と4サイズありますが、中身は同じです。飲む時は微小瓶1本です。大きい方を微小瓶に移して飲んでください。目安はこの線です」


「「ありがとうございます」」


 産後の肥立ち母体の健康と生まれたばかりの子供の免疫を考え自作のポーションを木箱ごと渡し(小瓶25ccが240本)、父親になった人魚にも体力の回復と傷や怪我を治癒を考え自作のポーションを手持ち(左袖に放り投げた)、大瓶(2000cc)6本、中瓶(500cc)12本、小瓶(200cc)36、本微小瓶(12cc)60本を渡した。


「あっ、そうそう。あそこに見える建物以外は自由に使ってくれて構いません。一応、建てたばかりなので綺麗に使って貰えると嬉しいです」


「「ありがとうございます」」


「それと、使ったら掃除。掃除位は頼みます」


「畏まりました。ドゥ―シャー・トシ・ニノマエ・ル・ルシミール様。私も妻も人の言葉が得意ではありません」


「上手だと思いますが」


「ありがとうございます。御世辞でも嬉しいです。驕る事無く日々努力致します」


 その辺の人間より遥かに上手に扱えていると思う。


「それで、お聞きしても宜しいでしょうか。この木の洞窟は何と言うのでしょうか」


 木の洞窟……。この木の洞窟。……あぁ~。


「ここは、船着き場や倉庫で働く人用に建てた休憩用の小屋(こや)です」


「えっ」


 通じてないのか。


「小屋です」


「おぉ~【こや】ですね。木で洞窟を再現してしまうとは、なんと素晴らしい御力か。こや。覚えました」


「因みに、小屋の裏にある大きな石造りの建物は、倉庫(そうこ)と言います。海の方から順に壱番倉庫、弐番倉庫、参番倉庫です」


「石の洞窟は【そうこ】、海側から【いちばんそうこ】【にばんそうこ】【さんばんそうこ】ですね」


「発音が良いですね」


「ありがとうございます。精進します。もう1つだけ教えていただきたい事があります。ここは【べっそう】で間違いありませんか」


「あってますよ。難しくない言葉なので直ぐに耳に慣れると思います」


 ▽▲▽


「陛下。別荘の近くに生まれたばかりの子供を抱えた若い人魚の夫婦がいたら問題になりますか」


「復古の大恩人ドゥ―シャー様。人魚ですかぁっ。あの人魚がセプト岬にいるのですかぁっ」


「はい」


「そうですか人魚がですか。…………問題はありません。問題無いのですが、人魚の密漁密売が心配です」


「密漁に密売ですか」


「人魚は観賞用としても素材としても人気があり、かなりの高値で取引されているとか」


「人魚がですか」


 鑑賞するなら浴槽、堪能するなら湯舟で十分だろうに。


「見栄えの良い人魚は観賞用やそれ以外に、そうでない人魚は素材として加工されると聞いた事があります。必ず稼げる海の鴨と呼ばれ人魚は乱獲され続け数を減らし今では希少性まで加味されているとか」


 国王との話し合いの結果。セプト半島(先端のセプト岬含む)は国定の自然保護地区となり、私は自然保護地区の責任者になった。


 【ドゥ―シャー自治区・セプト半島自治管区・セプト半島】。通称セプト自然保護区が誕生した瞬間だ。




 ▽▲▽▲▽


 エレーナさんとカシュちゃんが我が家で暮らす様になって3ヶ月程経ったある日。


 歴史の大国ルガキタイル王国からユリヤ第1王女(17)が大量の嵩張る家具と召使い246人と共に我が家へやって来た。


 遊びに来た訳では無い。何度も丁重にお断りした結果、この度、晴れて、ルガキタイル王家より私のもとへ降嫁して来たのだ。


 何かが変わる訳では無いが、私に親族が増えた。


 歴史の大国ルガキタイル王国のグレーブ・トゥー・ラーイ・アーセン・ルガキタイル国王(41)は義父。マイア・トゥー・ラーイ・アーセン第1王妃(39)は義母。タラス・トゥー・ラーイ・アーセン王太子(22)は義兄。ザウル・トゥー・ラーイ・アーセン第2王子(20)は義兄。ボリス・トゥー・ラーイ・アーセン第3王子(16)は義弟。


 グレーブ国王には、マイラ第1王妃の他に妻が、第2王妃、第3王妃、第4王妃、第5王妃、第6王妃、第7王妃、第8王妃、第9王妃、第10王妃、第11王妃…… ……第33王妃、第34王妃、第35王妃。34人いる。


 ルガキタイル王国の王国法では、腹違いの兄弟姉妹は父親が同じ場合父系籍(父方の戸籍)上、(正)兄弟姉妹にあたり、父親が異なる場合母系籍(母方の戸籍)上、準兄弟姉妹にあたる。


 義兄弟姉妹として親族として認められるのは、(正)兄弟姉妹のみと定められている。80人以上の義兄王子、義姉王女、義弟王子、義妹王女が出来なくて良かった。


 降嫁し来てしまったものはしょうがない。些細な事をいちいち気にして等いられない。


 と、いう訳で、


【3ヶ月の滞在と降嫁を記念し、セプト岬にある我が家の別荘に遊びに行こう】


 ▽▲▽


 そんな訳で、皆で我が家の別荘にやって来た。次女グラナと留守番役の使用人は同行していない。


 私達は別荘の正門を後ろに港を眺めている。


 綺麗な青く輝く海。白く輝く砂。緑輝く草原。…………は、見えない。…………丈夫そうな金属の柵。清潔感漂う白漆喰壁に鮮やかな緑煉瓦屋根の石造りの街並み。等間隔に植えられた街路樹。


「ここが自然保護地区ですか。……父上、聞いてた話と、かなり違う様なのですが……」


 多少変わったかな。


「ドル。正面の開けた所に見えるあれが何か分かるか」


「ここから、正面に見える柵のゲートまでが約500m。ゲートから約1300m先に見えるのは金ぴかの像です。高さは3m位だと思います。その像の5m程後ろには大きな噴水池があって、噴水池の中央には5段の台座があって台座は小さな滝になってます。上から1段目には中央と左右に大きな噴水が1つずつ、正面に向かって小さな噴水が7個あります。たぶん四面同じかな。2段目には小さな噴水が13個。3段目には水が邪魔して良く見えませんが像が沢山並んでいる様です。彫り物かもしれません。4段目は左右に小さな噴水が13個ずつ。5段目はこっちに向かって大きな噴水が5個です。見えませんが陰にも噴水があると思います」


「そっか…………少し変わったかもしれないが、別荘はあの頃のまま記憶の通りだ。間違い無くここは我が家の別荘……だと思うぞ」


「……少しですか」


 ドルは、ローザの顔を見る。


「トシ。砂丘と草原に囲まれた自然豊かな静かな場所に建ってた記憶が私にはあるのだけれど……。トシの像なんていつ置いたのよ」


「私の像ですか」


「あれよ」


 ローザは正面を指差す。


 当然の事だが、私には見えない。


「トシ様。ここは、セプト半島なのですよね。野生の楽園大自然溢れる自然保護区だと聞いていたのですが……」


「ユリヤさん。都会の様に見えるかもしれませんが」


「見えるかもって、父上、どう見ても都会です」


「トシ様。首都アーセンには及びませんが、ここは間違い無く三級集落ではないかと」


 三級集落とは、歴史の大国ルガキタイル王国独自の地方行政自治体の呼称で、人口5万人以上の集落の事だ。


 王都=人口120万人以上

 アーセン(グラード(大都市)


 一級集落=人口50万人以上

 ハロル(スク()


 二級集落=人口20万人以上

 ピンハイ(スク()

 ジャンキー(スク()


 三級集落=人口5万人以上

 ユーイン(スク()


 四級集落=人口3万人以上

 五級集落=人口1万人以上

 六級集落=人口4000人以上

 七級集落=人口2000人以上

 八級集落=人口1000人以上

 九級集落=人口500人以上

 十級集落=人口300人以上


 ▽▲▽


 周囲を見渡していると、丈夫そうな金属の柵のゲートが開き。大型の馬車が3車両と、追走する武装した兵士達がこちらに向かって来た。

ありがとうございました。

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