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異世界で幸せを手に入れました。  作者: 諏訪弘
プロローグ
35/40

禁断の森の中の洞窟

2019年1月17日(木)

【視力強化】を【視覚強化】に訂正。

 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽トシ視点


 実に良い狩場だ。


 視界に詳細情報を表示し現状を確認していると、


「トシ。これで終わりよね」


 最後の1匹を討伐し終えたローザが、魔物の死骸の山の上から満面の笑みを浮かべ、声を掛けて来た。


「今の1匹で終わりのようです。ドルもローザもお疲れ様です」


「この位大した事ないわ。それよりもどうするの。この先に洞窟があるみたいよ」


「その洞窟から湧き出ている様でした。何か手を打っておいた方が良くないですか」


「洞窟の調査は明日にするつもりです。今日はここにキャンプを設置し、ステータスや能力の再確認。武具や道具の調整をしましょう。それと、働いたからには御褒美です」


「そうね。早く、蝙蝠羽蜻蛉(こうもりばねとんぼ)の体液と汗を流したいわ」


「うんうん。そうですよねぇ~。『汗をかいたら入浴、汗を流すなら入浴、入浴に理由は必要無い』立派な格言にもありますが、まさにその通です」


「そんな格言聞いた事がありません」


「何だ。ドルは読んだ事が無いのか。10年程前に私が出版した水属性の生活魔法をまとめた魔法の指南書【便利魔法・水編】の一節だぞ」


「俺が魔法を使えないの知ってて言ってますよね」


「あのなぁ~。エレーナさんにも話したが、ドルもエレーナさんも魔法が使えないのではなく、魔法を覚えて無いだけだ。記憶さえすれば後は解放するだけで使える様になる。能力に対象となる魔法の属性を持っている必要はあるがな」


「記憶って事は暗記するって事ですよね」


「疎覚えでは無理だ。だが心配する必要は無い。私が出版した魔法の指南書は、魔法式の無駄を省き、詠唱の詞を短くし、効果を高めてある。従来の指南書より優しくなっている」


「魔法式を組み替えたんですかぁっ」


「似た様な現象が起これば同じ物だろうと判断に至ってな。作り直した物の方が多かった様な気もするが、そんなところだ」


「トシ。アゴスマが簡単になった時のあれよね」


「そうです。体力回復魔法。習得難易度☆1水魔法【アゴスマ(聖水)】の詠唱時間を半分以下にし回復率を200%向上させる魔法式を書いた指南書です」


「あれって、効率的に清潔な湯船を準備し快適な入浴を楽しむ為の指南書だと思っていたわ」


「ローザさん。トシさん。騎士団では誰も呪文とか唱えてませんでした。魔法を使うのに詠唱って必要何ですか」


「唱える必要は無いわ。声に出すのは、イメージし易いのと相手を落ち着かせる為ね」


「落ち着かせる為ですか……。敵に使う魔法が……」


「敵にでは無いぞ。だいたいは、味方に回復魔法を施す時だな」


「あぁ~なるほど」


「人によっては、ヒールと聞いただけで、治ってしまうからな」


「そうなんですかぁっ」


「半分冗談だが、病気の場合は気持ちも重要だ」


「病は気からですね」


「ふーん。入浴の文化が普及していないルシミール王国に入浴を普及させたいんだとばかり思っていたわ」


「そのつもりでまとめたのですが……。ノーヴィ(新式)魔法の指南書だとか各国が騒ぎ立てたせいで、結局全属性をまとめる羽目になったんですよね。あれは悪夢でした」


「水を準備するのも、大量の水を沸かすのも大変な作業です」


「その為に、指南書【便利魔法・水編】をまとめたんだぞ。指南書【便利魔法・水編】の最初の魔法と【便利魔法・火編】の最初の魔法を記憶し練習して、水と火を扱える様に成ったら、【便利魔法・応用】で最初の魔法温かい水つまりお湯を出せる様に記憶し練習する。あら不思議、家庭でも簡単に湯船が。と、いう訳だ」


「記憶し練習したからって、魔法が使える様に成るとは限らないと思うのですが……」


「お湯の場合は、水と火の属性を持っていれば、何とかなると思う」


「人生をお湯の為に使い果たしちゃいませんか」


「素晴らしいじゃないか。入浴の為に費やす人生。人生とはそうあるべきだ」


「その前に、日々の糧を得る事とか、家族や自分を守る事とか、他にもやる事が沢山ありますよね」


「入浴の追求もその中の1つに是非頼む」



 ▽▲▽


「ところで、もしかしてですが、(ち・)、トシさんは【正しい魔力変換式・ルシミールの四季】って、速射の指南書も書いてませんか」


「あれは、陛下にしつこく頼まれてなぁ~。仕方なくまとめた物だ。酷い物だと10分の1程の威力に落ちてしまったのだが、魔法を早打ち出来るのは非常に便利で戦いの場では有利だと喜んでくれていたな」


「ルシミール王国軍の魔法師速射部隊はトシさんが……」


「ほう。今はそう呼ばれているのか」


「た、……助けてくださぁ~い」


「うん……」


 エレーナさんの声が気持ち遠くから聞こえた様な。


 身を隠している様にと伝えたはずの場所を見る。だが、エレーナさんの姿は見当たらない。はて…………。


「はて。エレーナさんは何処(いずこ)に」


「た、た、助けてくださぁ~~~い」


 声は上から聞こえている様だ。


 ドルとローザと私は空を見上げる。


 流石に、空に浮いてはいなかった。人間だしな。


(ち・)・・・。トシさん。あそこに」


 ドルが、高さ30m程の木の天辺を指さした。



 ▽▲▽


 エレーナさんを救出し、魔物の死骸6万9044個を右袖に放り投げ、竜巻が魔物と一緒に搔き集めた薬草類を左袖に放り投げ、綺麗になった討伐跡地にキャンプを設置した。


 何度も言う様で恐縮だが実に素晴らしい狩場だ。何度も言う様で恐縮だが実に素晴らしい森である。


 実は、桧葉の大樹を3本袖にいただきました。懐が温かい気がする。


 風呂の前に、森に入ってからの懸案事項を解決するかな。


「エレーナさん。ドル。こっちに来て貰えるかな」


 私は2人を呼び寄せた。


「まずは、魔剣エクスを返して貰おうかな」


「……」


 ドルは、エクスの刃を見つめている。


「魔剣に魅入られたのか」


「いえ……。ただ、……凄い切れ味だったなと……」


「私が愛用する私の自信作【名刀(めいとう)・湯揉み長船】は、聖属性の刃物な上に刃毀れの心配が無い優れ物だ。レベル99のお祝いにドルに譲ろうと思っているのだが、受け取ってくれるかな」


「レベル99のお祝い……」


「ドル様はレベル99になられたのですか」


「俺、昨日31になったばかりですよ」


「2に上がったばかりだからと言って、直ぐ3に上がってはいけないというルールは無いと思うが」


「2から3と、31から99じゃ話が別です」


「別と言えば、そうそう、エレーナさんも、昨日レベルが2から3に上がっていたのですが」


「私もレベルが上がったのですね」


「はい。エレーナさんもレベル99です。おめでとうございます」


「ありがとうございます。トシ様っ!……はぁっえええぇぇぇ―――わわわ99で、わたわたわた、私も99、でで、ですかぁぁぁ――ー」


「ホラ。ドル」


「ホラって何がですか」



 ▽▲▽


「先程の討伐で、11億470万4000の経験値を獲得しています。平均すると、1匹から約1600。10倍の効果があるので、実際は160って事だな」


「経験値は幾つあるとレベルが99になるんですか」


「レベル1から99まで上げるのに必要な経験値は、ざっと3926万5904。ドルはレベルが31だったので3922万9700で99。エレーナさんはレベルが3だったので3926万5812で99という事になる。ただし、私が経験値を配分する際には、獲得時とは別に10倍な訳だ。つまり、ドルは392万2970で99に、エレーナさんは392万6582で99に成った訳だ」


「わ、わた、わた私……、ぶら下がっていただけですよ。見ていただけですよ。それなのにレベル99って良いのでしょうかぁっ」


「ト、トシさん。俺も思います。こんなにあっさり99になってしまって良いものなのでしょうか」


「取得経験値が1倍の状態であっても、2人のレベルは99に上がっていた訳だし問題無いと思うが」


「あのぉ~。トシ様」


「どうしました」


「こんなに簡単に99になれるという事は、ローザ様とトシ様はかなり前にレベル99に成っていたと思うのですが」


「16年か17年前だったかしら。その頃にはレベル99だったと思うわ」


「17年前ですか……」


 ロッジの前に設置したテーブルで紅茶を飲んでいたローザが、エレーナさんの質問に答えた。


 エレーナさんは、ローザと私の姿を確認している。


「17年前なんですよね……」


 当時と余り変わってないからなぁ~。私達の姿見から想像出来無いのだろう。


「エルフか魔族の血ですね」


「血ですか」


「ローザ様とトシ様は20歳前後にしか見えませんし、先祖にエルフか魔族の方がいらっしゃるのではないかと」


「ルシミール家は先祖代々人間のはずよ」


「私も先祖に魔族はいませんね」


「そうなのですか……。でしたら、その見た目はいったい……」


「ドゥ―シャーの奇跡です。ハッハッハ」


「そ、そういえば、トシさんとローザさんは、レベルが99以上なんですよね」


「99以上ぉっ。レベルは99までですよねぇっ」


「ホラ、あれですよ。トシさんはドゥ―シャー様だし、ローザさんはドゥ―シャー様の奥様だから、凄いんですよ」


「……確かに。…………そ、そうですよね。ドゥ―シャー様ですし、そうですよねぇっ」


 変な盛り上がり方をしている様だが、エレーナさんもドルももう子供では無いだろうに……。良く分からん。


「ローザ様とトシ様のレベルはお幾つなのですか」


「俺も知りたいです」


「ローザと私ですか。そうですねぇ~……。何度か入浴した(・・・・)ので」


 私は、自分のレベルを確認した。


 ローザと私のレベルは同じだ。レベルが99になって以降、2人で一緒に入浴した時だけレベルが1上がるように成った。つまり、レベルは同じという事になる。


「今現在は、11799みたいです」


「家を出てからも、意外に上がってたのね」


「みたいですね」


「11799っ……ですか。ドル様や私より、11700もたた高いでです……」


「エレーナさん。この2人は規格外なので、自分と比べない方が良いですよ」


「規格外なのは分かります。ですが、どうやったら99までのはずのレベルが、11799なんて途轍もないところまで……」


「えっとねぇ~。トシと私の場合は、簡単にレベルが上がるのよ」


「先程の討伐の様にでしょうか」


「あぁ~あれよりももっと簡単ね」


「私は見ていただけなので何とも言えませんが、あれよりですか」


「あれよりもね」


「そうなりますね。今日もこれから1か2は上がると思います。なので、明日にはレベルが11800か11801にはなっていると思います」


「本当は99が最高なのですよね……」


「通常はそうですね」


「トシ。エレーナさんも99から成長するんじゃないかしら」


「わ、私がですかぁっ」


「ロ、ローザさんっ。……トシさんそれはまずいんじゃ」


「上がる可能性はありますが、ローザ。方法が方法なだけに厳しいと思います」



 ▽▲▽


 エレーナさんはレベルの話が気になる様子だったが、私は懸案事項を優先する事にした。


「それでは、エレーナさんの能力を確認します。魔法を覚えられそうなら覚えてしまいましょう。握手をする感じで、私の両手に手を乗せて握ってください」


「はい。……こんな感じで良いですか」


「問題ありません」


 魔法に集中して貰えるか気掛かりだったのだが杞憂だったか。随分と乗り気の様だ。


 視界の右下から中央に起動を視線でスライドさせクリックする。【☆接続☆】を中央にスライドさせ、エレーナさんの情報を視界に展開。そして、【☆能力☆】と【☆状態☆】を中央にスライドさせ2つの情報を確認する。


【レベル】99

【HP】2684 【MP】6101


 攻撃力 B ☆☆☆☆☆★★★★★

  魔力 A ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 防御力 B ☆☆☆★★★★★★★

 魔耐性 A ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

  速度 A ☆☆☆☆☆☆☆☆☆★

  幸運 B ☆★★★★★★★★★


 習得ポイント 1980


 薬草採集 B ☆☆☆★★★★★★★

 素材調合 C ☆★★★★★★★★★


 杖 戦技 D ☆☆☆☆☆☆☆☆★★

 法衣装備 E ☆☆☆★★★★★★★


 無 魔法 E ☆★★★★★★★★★

 土 魔法 F ☆★★★★★★★★★ 

 水 魔法 F ☆★★★★★★★★★

 火 魔法 C ☆☆★★★★★★★★

 風 魔法 D ☆★★★★★★★★★

 光 魔法 ―――――――――――

 闇 魔法 C ☆★★★★★★★★★


 習得ポイントはたっぷりある。これなら問題無く開放出来るのだが、肝心の魔法を覚えていない様だ。


「エレーナさん。魔法ですが」


「はい」


「無属性魔法E。土属性魔法F。水属性魔法F。火属性魔法C。風属性魔法D。闇属性魔法C。現時点で6属性の能力を持っています。ですが、魔法を本等で学んだ事が無いのか現時点ではまだ使う事は出来ません」


「やはり魔法は無理でしたか」


「残念です。もしかしたら直ぐに使えるようになるかもと思っていたのですが、……魔法の指南書を読んだ事はありませんか」


「魔法の指南書ですか。そうですねぇ~、幼い頃、祖母と一緒に読んだ事があるくらいでしょうか。最近は錬金や錬成や調合の指南書や教科書ばかり読んでいましたし……」


 その割には、能力に……。エレーナさんには、錬金錬成は難しいのかもしれないな。まっ、これに関しては追い追いで良いとして、まずは魔法を解放したい。記憶して貰うとしよう。


 左袖から魔法の指南書を12冊取り出した。


「エレーナさん。休憩時間や魔物の討伐中や時間がある時は、この魔法の指南書を読んで、書かれてある魔法を記憶してください」


「こんなに沢山ですかぁっ」


「必要な魔法だけで構いません」


「……わ、分かりました。魔法が使える様になるのでしたら、頑張ります」


 うんうん。この娘は実に良い子だ。


「まずは、記憶。つまり暗記です。取り出した魔法の指南書は【無属性】【土属性】【水属性】【火属性】【風属性】【闇属性】の便利魔法をまとめた物と、活用魔法の初級魔法。それと中級魔法をまとめた物だけです。上級魔法や応用魔法や【光属性】や【聖属性】の魔法の指南書はまだ出していません。無土水火風闇属性。どの属性の何から読みますか」


「他にもあるのですね。……そうですね……。出来れば、水か火の生活魔法からお願いします」


 素晴らしい。湯船へのエリートコースではないか。やる気が出て来たぞぉ~。


「それでは、指南書【便利魔法・水編】と【便利魔法・火編】2冊を渡します。水編から最初の魔法で飲料水を出す魔法と、火編から最初の魔法で着火の魔法。まずはこの2つの魔法を読んで記憶してください」


 俺は、便利魔法・水編のページを捲り、エレーナさんに魔法の指南書を手渡した。


「習得難易度☆1水属性魔法【ヴァダー()】ですか」


「飲み水や身体や衣類を洗う水があって困る事はありません。水属性の魔法の基本中の基本の魔法です。そのページの術式や詠唱や魔法の効果を暗記したら教えてください」


「1ページだけなので、これ位でしたら直ぐに覚えられると思います」


「素晴らしい。でしたら、【ヴァダー】の暗記が終わったら、火編の【アゴーニ()】も暗記しちゃいましょう」


「はい」



 ▽▲▽


 エレーナさんが暗記している内に、ドルの能力の確認を済ませておくか。


「ドル。両手を」


「俺もなのか」


「簡単な魔法位は使えた方が良いと思うぞ。それに、成長した能力は気になるだろう」


「気になる。それに正直魔法は使ってみたいかも」


「魔法は便利だぞ。私としては回復魔法を覚えてくれると有り難い」


「回復魔法ですか」


「回復魔法だ」


 怪我や疲労や状態異常のリスクを減らす事が出来る。心配事が減るという事だ。一応らしいが勇者な訳だ。この先、何があるか分からない。回復魔法は欲しい所だ。


【☆接続☆】を中央にスライドっと。


【レベル】99

【HP】240000 【MP】190000


 攻撃力 A ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

  魔力 A ☆☆☆☆☆★★★★★

 防御力 A ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 魔耐性 A ☆☆☆☆☆☆☆☆★★

  速度 A ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

  幸運 A ☆★★★★★★★★★


 習得&再習得 フリー


 薬草採集 C ☆★★★★★★★★★

 道具鑑定 N ☆★★★★★★★★★

 武具鑑定 N ☆★★★★★★★★★

 勇猛精進 N ☆★★★★★★★★★  


  剣戦技 A ☆☆☆☆☆☆★★★★

 突剣戦技 A ☆☆☆★★★★★★★

 視覚強化 S ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 嗅覚強化 A ☆★★★★★★★★★

 聴覚強化 A ☆★★★★★★★★★


 無 魔法 N ☆★★★★★★★★★

 土 魔法 ―――――――――――

 水 魔法 ―――――――――――

 火 魔法 N ☆★★★★★★★★★

 風 魔法 ―――――――――――

 光 魔法 N ☆★★★★★★★★★

 闇 魔法 ―――――――――――


 何と言うか。現時点で回復魔法は無理だな。水属性か風属性。欲を言えば聖属性を能力に持って欲しいのだが……。


「魔法は無属性と火属性と光属性がN(ノービス)だな。回復魔法に必要な水属性や風属性や聖属性は今の所無い。だが、不思議な能力が沢山増えている」


「どんな能力が増えてますか」


「道具鑑定N。武具鑑定N。勇猛精進N。嗅覚強化A。聴覚強化A。だな」


「微妙ですね」


「まぁ~何と言うか。頑張れ」


「……いつも通りって事ですね」



 ▽▲▽


 エレーナさんは、便利魔法の習得難易度☆1水属性魔法【ヴァダー()】と、習得難易度☆1火属性魔法【アゴーニ()】と、習得難易度☆1風属性魔法【ウラガーン(疾風)】を解放し使えるようになった。


 残念な事に、応用魔法の【オーショード(熱い水)】は解放出来なかった。



 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽ドル視点


「トシさん。魔剣エクスを貸して貰えませんか」


「構わんが、どうした」


「武具鑑定で見てみたいなと」


「なるほど」


 父上は、左袖から魔剣エクスを取り出した。


「何か分かったら教えてくれ」


「はい」


 俺は、魔剣エクスを受け取った。思考に直接鑑定結果が知識として浮かびあがる。


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