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異世界で幸せを手に入れました。  作者: 諏訪弘
プロローグ
32/40

調査開始、禁断の森で薬草採集

 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽トシ視点


「この禁断の森は、東西約720Km南北約1080Kmと非常に広大な森です。なので、ここに拠点を設置し、最深部の調査を進めるつもりです。何か質問はありますか」


 数年前、ローザと私で討伐した。エルダーサイプレス(冥府(死)の長老)が生えていた場所に私はロッジと浴槽を設置した。


 浴槽は広目の仕切りで囲み中が見えない様に工夫済だ。


 浴槽のサイズは5000mm×5000mm×高さ70mm。材質はエルダーサイプレス(冥府(死)の長老)。そう超高級桧葉だ。


 湯椅子、湯桶、簀子、仕切り板。全て超高級桧葉。拘りの一品だ。


 ロッジは、たぶん杉が松か何かだろう。


「あのぉ~……。調査に関してでは無いのですが、宜しいでしょうか」


 エレーナさんは、私が設置した浴槽の素晴らしさが分かるのだろう。食い入る様に見つめながら、小さく挙手する。


「挙手何て必要ありません。普通に話掛けてください」


「は、はい……。トシ様っ。それって浴槽ですよね……」


「これの良さが分かりますか。そうです。これは高級桧葉を何年も寝かせてから自作した私の自慢の一品です。しかもですね。調度この辺りに生えていたエルダーサイプレス(冥府(死)の長老)を伐採した際に入手した木材を使用しているのです。この土地の風土に最も適した浴槽と言う訳ですよ。見てください。この板の厚さを。素晴らしいですよねぇ~。126mmですよぉ~。はぁ~……。当初は、丸形を予定していたのですが何せこの厚みです。何日も試行錯誤した結果、渋々正方形にしたのです。ですが、これはこれで意外に飽きが来ないと来たもんだ。見てくださいよぉ~。西(かわち)(あずま)さんの総合芸術にはまだまだ足元にも及びませんが、美しいですよねぇ~。……、あっ。触ってみますかっ。ですよねぇ~。どうぞどうぞ。手すり加工を施してあるので掴み易い上に転び難い。凄いでしょうぉ~。いやぁ~これの良さが分かる何てエレーナさんはお若いのに素晴らしいですなぁ~」


「トシ。エレーナさんがドン引きしてるわよ」


エルダーサイプレス(冥府(死)の長老)……ですか……」


「まぁ~まぁ~。そう言わずに、どうぞどうぞ。減る物じゃあるまいしぃ~……。あっ。まさか、入浴タイムのお楽しみとして取っておくつもりですね。かぁ~何て素晴らしいお嬢さんだぁっ。……。うむ。……。分かりました。良いでしょう。極上の時間をエレーナさん貴女。貴女に湯船への招待状を贈りましょう」


「えっと、招待状……えっ……エルダーサイプレス(冥府(死)の長老)ですよね……えっ……」


「ごめんね。エレーナさん。これトシの病気みたいな物だから気にしないであげてね。至って正常なのよ。これで……」


「は、はい」


「すみません。エレーナさん」


「す、凄いです。ドル様。私感動しています。遠出や野宿が多い冒険者には不衛生な方が多いのですが、野外であっても衛星面を重視する姿勢。流石はドゥ―シャー様です。あっ。でも、浴槽ですよね……。入浴なんですよね……」


「さぁ~。仕事の後の極楽が待っている事が分かりましたね。今日も一日張り切って参りましょう」



 ▽▲▽


「森の奥へ向かう前に、エレーナさんとドルをローザと私のパーティーに入れたいと思います」


「先程、ギルドでトシ様とローザ様のパーティーに入れていただきましたよ」


「さっきのはギルドが管理するギルドパーティーです。私が話ているのは私の能力が管理するスキルパーティーです」


「スキルパティ―ですか」


「はい。物は試しです。エレーナさん手を出して貰えますか」


「えっと、手ですか……。……、ど、どうぞ」


 私は、エレーナさんが差し出した左手を、右手の掌の上に乗せると、エレーナさんに能力と称号を1つずつ与えた。


「次はドルだ」


「俺もですか……」


「良いから、早く出しなさい」


「分かりました」


 私は、ドルにも同じように能力と称号を1つずつ与えた。


「ドル様。トシ様はいったい何を……」


「トシさん、説明して貰えますか」


「今、エレーナさんとドルに、【指導者に導かれし者】という称号を与えました。あと、ギルドカードでは簡易情報しか確認する事が出来無いので、詳細情報を確認する事が出来る【ズナーチ】という能力も与えました」


「称号や能力をですか……」


「そんな事が出来るのかよ。あ、いや出来るんですかっ」


「皆には秘密です」


「はい。トシ様」


「それで、その指導者って称号とズナーチって能力はどうやって使うんだ」


「ドル様。ドゥ―シャー様に対し失礼ですよ」


「あっ……。そ、そうですね。ズナーチはどうやって使うんですか」


「ズナーチは自分自身の状態や能力や称号を知りたい時に知りたいと思えば頭が理解します。ギルドや軍にある最新の測定器でも測定不能な詳細情報まで知る事が出来る。自分専用のスキルです」


「自分だけなのか、なんですか」


 第三者の情報を知る能力もあるが今はまだ早いだろう。もう少し修練と経験を積んでからの方が良いだろう。


「うわぁ~凄いです。私の能力ってこんなだったんですね」


「私が、エレーナさんは魔法の才能に恵まれていると言ったのが分かったかな」


「はい。……。あのぉ~私の称号ですが、【魔族(先祖)返り】【種族を繋ぐ者】【指導者に導かれし者】と3つ持っている様なのですが……」


「それなのですが、【種族を繋ぐ者】と【指導者に導かれし者】は、ズナーチでしか確認する事が出来ないと思います。【魔族返り】は何か条件をクリアする事でギルドカードでも確認出来る様に成ると思います」


「条件ですか……」


「はい」


「えっ。お、まじかっ……。指導者に導かれし者って称号。これありなのかっ」


「ドル。気付きましたね」


「これ反則レベルで凄いんですけど……。エレーナさんも称号の詳細情報を見てください」


「えっと」


「能力や称号で知りたい対象を知りたいって思うと情報が理解出来るみたいです」


「なるほど……」



 ▽▲▽


「なかなか優秀だろう」


「優秀とかそう言う次元の話じゃないぞこれ。じゃなかった。無いですよ」


「えっ……。これ、トシ様。スキルや能力の成長が10倍になるんですかっ」


「えぇ。成長が10倍になって、全てのステータス値が+50%になる称号です。それとですね。この称号を持つ者が討伐した魔物の経験値は10倍で私に1度集積されます。そして私は集積している経験値を10倍で付与する事が出来ます」


「実質100倍で経験値を分配出来るって事かっ……事ですか」


「トシ様に分配していただく経験値とは別に、修練度の成長が10倍な訳ですから……」


 没収も出来るのだが、これは言わないでおこう。


「私の言ったパーティーは、共存共栄共闘共密(きょうみつ)の関係に成る事です。共密は私の造語です。秘密を共有する仲間だと思ってください。そして、このスキルパーティーですが、ギルドパーティーと紛らわしいじゃないですか。浴槽に対する愛をお持ちのエレーナさんに良い感じの名称を付けていただきたいのです。宜しくお願いします」


「えっ。私がですかっ……」


「今日も、良い日になりそうです。さぁ~それでは調査を開始しましょう。エレーナさんとドルは魔物に注意しながら、薬草や素材の採集も忘れずに」


「はい」


「了解っ」


「あ、そうそう。ドル」


「ん」


 私は左袖から魔剣エクスを取り出しドルに渡した。


「これ、魔剣だよな」


「その通り魔剣エクスだ。貸すから使うと良い」


 専用の鞘に納めると眩し過ぎてどうしようもないので、自作した鞘に納め袖の中に保管していた。


「貸すって、魔剣だぞ」


「お前の剣は、悪い剣では無いが、昨日の戦闘で歯がボロボロになっていた。犬程度ならボロボロの剣でもなんとかなるかもしれないが、ここは禁断の森だ。それを使うと良い」


「……そ、そうだな。そうさせて貰うよ」


「ローザ」


「何」


「今日は後方の警戒を頼むよ」


「任せておいて」




 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽ドル視点


「ドル様。この辺りは薬草の宝庫みたいです。採集しましょう。ドル様、聞いてますかっ」


「……あっ、はいっ。聞いてます。聞こえてます。薬草ですね」


 腰のこれ魔剣何だよなぁ~。大丈夫なのか……。


「ほら、採集しますよ」


「あっ、はい」


『……やっと…………』


「ん。何か言いましたか」


「薬草が沢山あるので採集しましょうって言いました。聞いていませんでしたね」


「あ、いえ、すみません」


 ▽▲▽


「トシ。魔物の反応はどうかしら」


「今のところは、何もありません」


「高原寄りの獣や魔物は、昨日の犬の群れに狩り尽くされたと考えて良いと思うわ」


「その可能性が高いです。エレーナさん。ドル。この辺りに自生している覚魔性草(かくましょうそう)は極上級が多いみたいです。等級の高い物を中心に採集してください」


「はい。トシ様」


()・・・トシさん。チラッと見ただけで等級も分かるんですか」


 あぶねぇ~。父上って呼ぶ所だったよ。


「大抵の物は見るだけで視界にその情報が浮かび上がる。頭に直接ではないので読み理解する必要があるがね」


「そんな能力があったのか。たんですね」


 喋り難……。この状況窮屈過ぎる。


「余裕がある時は良いが、有事の際にのんびり理解している時間は無い。だから、平時の際に知識を蓄えている訳だ」


『さぁ~……。け……。…………ぬ……』


「ん」


「どうした」


「あ、いえ」


 何だろう。さっきから誰かに話掛けられている様な……。


「何でもありません。薬草採集頑張ります」


「竹籠がいっぱいに成ったら私の所まで持って来てくれ。薬草や素材を預かるから」


「了解」


「ドル様」


 エレーナさんが、小声で話掛けて来た。


「何ですか?」


「あの風の法衣の袖ですが、いったいどうなっていると思いますか」


 風の法衣……。父上の一張羅高級浴衣の事かな。


「浴衣の事ですか」


「そう言えば、マイナーな呼び方の1つに、ドゥ―シャー様の御召物の事を高級ゆかた(・・・)とぉ~。ドゥ―シャーとかわちあずま(・・・・・・)の世界という作品の中に一度だけ登場する高級ゆかた(・・・)と何度か登場するゆかた(・・・)の違いを想像しワクワクした物です」


 エレーナさんって、浴衣を想像してワクワク出来るタイプなんだ……。


「あれは素晴らしい作品です。独自な視点、独特な着目点。政治や社会体制に対し独白を続けたかと思えば、そこから到底誰も考え付かないであろう新しい体制や制度の提唱。身分や種族や社会や政治や国の利点や問題点や改善点を分かり易くまとめ説明しています」


 そんな内容だったっけ……あれ。おかしいなぁ~。


「庶民には贅沢なお風呂や浴室の世界を独白し、独白したかと思えば、その必要性を説き、間違った価値観を正す直向(ひたむ)きな姿勢。あれは、本当に素晴らしい作品です」


 その本の著者はちとせ(千歳)。父上のペンネームです。一 十四(ニノマエトシ)を数字にすると1104。


 無理矢理な感じがしなくもないが父上は満足気してるみたいだ。


 あれ、俺()読まされたけど、父上の風呂や温泉に対する愛と、かわちあずまと呼ばれる世界最高の浴室技師が作り上げた浴室芸術の世界を、父上が独白しているだけの文章だったはずだが……。


「それで、その浴衣。風の法衣の袖がどうかしましたか」


「あの袖はいったいどうなっているんでしょうね。ロッジに浴槽にその剣ですよ。ダンジョン産の【アイテム袋】でも1000Kgも入らないはずです。何より、口より大きな物は入りません。能力に【アイテムボックス】と呼ばれるアイテム袋に似たスキルがあるそうですがそれなのでしょうか」


 ……。何て説明したら良いんだろう。ドゥ―シャー様ってホント凄いですよねって誤魔化すか。


「おや、この袖が気に成りますか。これ便利でしょう。気付いたら着てたのですが、右手で取り出し易い左袖には生活用品に武具に素材とか色々一式で、左手で取り出し易い右袖には魔物とか汚れた物を入れてあるんですよ」


 父上。それでは、エレーナさんの疑問を解決する事は出来ないと思います。


「凄いです」


 えっ。出来たのか……。


 ▽▲▽


「遠慮せずに言ってください。この森の木位ならたぶん全部入るだろうから。引っ越し位簡単に出来ますよぉ~」


「はい」


「ん。エレーナさん引っ越しするんですか」


「言ってませんでしたっけ」


「昨日、伺った時には、家賃がどうこうとか、ここは立地が良いのでって言ってませんでしたか」


「先程、ギルドでパーティー手続きをしている時に、トシ様とローザ様に住み込みでドル様の家庭教師をやりませんかと誘われまして、トシ様の実験室や研究室や工房を自由に使って良いととても好条件でしたので二つ返事お受けしました。住み込みですので、このクエストが終わったらトシ様とローザ様の御自宅にお引越しです」


「そ、そうなんですね」


 聞いて無いと言うか。エレーナさんが家に住むって事は、俺はどうすれば良いんだよ。


「トシ。あれっ」


 母上は、父上の正面、南東の方角を指差している。


「私のラダールには反応がありませんが……。もしかして…………。やっぱりです。停止状態の魔物、たぶん死骸です。ドル確認をお願い出来ますか」


「はい」


 今、ふと思ったけど、俺って何か妙に視力が良くないか。……、母上もだし、遺伝って奴なのかもな。


 俺は、南東の方角を凝視する。1000m、1200m、1400m、1600m。いたっ。というかあったっ。豚の様な猿の様な猪かっ。嫌、人型の様な……。


「豚みたいな猿みたいな猪みたいな感じの人の形をした何かだけど、骨とか剥き出しになってるし、何かに喰われた後だと思う」


「魔物の死骸で間違いないか」


「質問しても良いですか」


「俺にですか」


「ドル様にもですが、トシ様にもローザ様にもです


「私にですか」


「良いわよ」


「俺は構いませんが」


「その死骸ですが、正面にあるんですか」


「そうですね。トシさんの正面1600m位です」


「その位ね」


「私はラダールという風属性と雷属性の魔法を組み合わせた探知魔法で認識しているので、認識対象の設定次第で発見が遅れてしまうのです。その点、ローザやドルは優れた視力を持っているので羨ましい限りです」


「視力って……それだけで、この薄暗い森の1600m先が見えるんですよね……」


「羨ましいって良く言うわよ。半径7000m以上を探知探索索敵警戒何でも出来るトシの魔法の方が便利よ」


「直径14Kmも分かるんですかっ」


「もう少し訓練して範囲を拡大したいと思っているのですが、どうも修練度がS☆10から成長しなくてねぇ~」


 ▽▲▽


「エレーナさん。薬草採集しちゃいましょう」


「そ、そうですね……」


「ねぇドル」


「何ですか。()、ローザさん」


「レベルが上がって視力が良く成ったんじゃないの」


「視力がですか。そういえば、昨日は1000m先は薄っすらとしか見えなかった様な」


 レベルが上がると視力って良くなるのか。成人するって良い事ばかりじゃないか。早く16歳になりたいって思ってたけど間違いじゃなかったな。


「きっとそうですね」


「良かったわね。ドル」


「はい」


「あのぉ~。ドル様。ローザ様に憧れる気持ちも分かりますけど、ドゥ―シャー様の奥様ですよ。しかも、私達の王国の王女様ですからね」


 エレーナさんが、小声で話掛けて来た。


「違いますから」


 母上の事は好きですが、意味が違いますから。



 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽トシ視点


 レベルが30上がっただけで、600mも視認距離が伸びたのか。


「ドル。昨日の戦闘で、レベルが31に成った訳だが、上がった時に身体や精神に何か無かったか」


「何かって例えばどんな事だよ、ですか」


「そうだなぁ~。例えば、五感や六感が急に良く成った気がするとか、身体が軽くなった気がするとか、そんな感じかな」


「そうだなぁ~……。身体は軽くなったと思う。後、前よりも疲れ難く成った気がする」


「ふむふむなるほど」


 入浴前に、エレーナさんとドルのレベル上げの実験をしてみるか。


「ドル様。昨日の討伐で、レベル31になったんですか」


「はい。1から31になりました」


「危険度☆2の魔物を70匹討伐すると1から31に成るんですね。実際は、群れの規模が大きかったので危険度は☆3~4。☆2でも1人で討伐する何て本当なら無理な話な訳で……」


「でも、トシさんは、一瞬で200匹近くを討伐したじゃないですか」


「トシ様はドゥ―シャー様ですよ」


「あれっ。ドゥ―シャーってヒーラーの最上位職。神聖職であって、戦いが専門じゃないはず」


「あぁ~。私は普通のドゥ―シャーじゃ無いからその辺りは適当で頼むよ」


「トシ。そろそろランチにしない。私、お腹が空いたわ」


「そうですね」


 もう昼か。


「エレーナさん。ドル。採集した薬草を回収します」


「「はい」」


「このポイントは記憶したから、一度、拠点に戻ってランチ休憩にするけど、何か質問はありますか」


「戻るのは良いけど、またここに来るんだよな、来るんですよね。だったら、ここでランチにした方が良いと思うけど」


「なるほど。ドルの意見に賛成の人は挙手してください」


「私はドル様の意見に賛成です」


「2票2票なので、リーダー権限により、一度戻りたいと思います」


「ローザ様はトシ様の意見に賛成なのですか」


「私はどっちでも良いわ。そんなに変わらないし」


「拠点から3時間は歩いたと思いますよ」


「薬草採集しながらで、約11Km弱進んだみたいね」


 拠点に到着したのが御前9時で今12時30分。午後は薬草採集を中断して調査に集中した方が良さそうだ。拠点に戻ってランチを済ませ休憩したら気合いを入れて調査だな。そうと決まれば。


「ドル」


「はい」


「エレーナさんとローザは私が運ぶ。拠点に戻るぞ」


「2人も抱えて大丈夫なのか」


「両脇に抱えて走ればバランスに問題は無いだろうな」


「レベルが上がって全体的に向上した俺の足を見せてやるよ」


「頼もしいな」


「いつまでも負けてられないからな」


「エレーナさん。ローザ。両脇に抱えて走るので近くに来て貰えますか」


「トシ。私、脇に抱えられるのはちょっと」


「あ、あのぉ~……。森に来た時みたいに、私はドル様に抱き抱えられてでも……」


「エレーナさん。森の中で両手が塞がってしまうのは、ドルにはまだ危険なのよ」


「そっか。俺だと全力疾走でやっと大抵の魔物より速く走れる程度だから、半分も速度を出せない森の中だと魔物に普通に襲われるのか。両手が塞がってるのは致命傷って事か……」


「トシ様は大丈夫なのですか」


「私は平気ですね」


「トシは私の全力の攻撃を受けて、ダメージ1つ傷1つ付かない変人だから大丈夫よ。それに、本気で走ったら1300Km/h。走ってる音が後ろから聞こえて来る位早いから魔物に襲われる心配は無いわ」


「変人って何ですか」


「ランクS3のローザ様の全力の攻撃で傷を負わない……。1300Km/hで走れる……。えっと、……何と言って良いのか。えっと、あ……。凄いですね…………」

ありがとうございました。

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