プロローグ~正規の主人公登場~
月日は流れ、王妃様は立派な男の子を無事出産した。国王陛下、王妃様、ルシミール王国にとって待望の世継ぎ、ルシミール王国王太子が誕生した。
私は、ドゥ―シャーとして既に大陸全土に知れた存在になっていた。あれだけ派手な事をやらかして、噂に成ら無い方が不思議だ。各国の王達と立場を同じくする者それはドゥ―シャー。勇者では無い。
治癒治療の能力を買われてではない。妊活面において私は引っ張り凧だ。冒険者ギルドから指名により舞い込んで来る依頼は、99.999%我が子を欲する者達からだ。
①神魔国イポーニィの侯爵家の当主
②ルシミール王国王族家の一員
③冒険者ギルドランク『My』級冒険者
④近代魔法の祖
⑤聖属性の魔法【ヒール】を扱う事が出来る神聖なる魂を持った風の教会と称されるドゥ―シャー
これが、私の肩書だ。
私は、この十月十日弱を、日々の仕事の中で大切に過ごして来た。成仏のタイミングをコントロール可能なのは心の余裕へと繋がる。自らを磨き。ローザとの時間を大切にし。入浴の時間をこよなく愛した。新しい魔法を考案し。新しい魔導具の開発にも協力した。遺跡の情報や魔剣については何も進展していない。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽
「式典は疲れるよ」
国王陛下は、王太子殿下を、聖教会関係者達、家臣達、王国民達へお披露目し疲れ切っていた。
「≪ヒール≫」
「ありがとう。気力が漲って来たよ」
「王妃様にも≪ヒール≫……産後のひだちは、無理をせず穏やかな時間が必要なのです」
「ありがとう。トシ」
「未来の国王陛下には祝福を≪ベネディクシヨン≫」
王太子殿下は、優しく清らかで柔らかく温かな黄金色の光に包まれる。
「トシ。これは……」
「最近覚えた聖魔法の1つで、神様が私達に与える祝福に近い物を魔法で意図的に施す事が出来るらしいのです。自分に試したのですが、私の場合は既に本物の祝福を受けているようで、重複の禁止を諭されました」
「おぉ~聖教会の洗礼よりも素晴らしい物を、王太子は受けたのだな」
「洗礼に何の効果があるのかは知りませんが、この祝福は1度受けると第三者からの悪意ある攻撃を24時間以内でしたら100%回避するみたいです」
「なんと。その力……戦いの場で……いや何でも無い」
「敵味方関係無く聖魔法【ベネディクシヨン】を施しても宜しければ盛大に祝福を与える事にします」
「誰も死なぬが、戦いも終わらぬな」
「奪い争い合う無意味さを悟る良い機会になると考えてみてはどうですか」
「人類の歴史は争いの歴史だ。意味は違うが終わらぬ戦いの歴史。王太子の時代が今よりも平和だという保証は何処にも無い。せめて、私達の手で平和な未来への可能性を残してやりたいものだよ」
「そうねあなた」
可能性を残す。なるほど、平和な未来、豊かな未来を残した所で努力して得た物では無い。幾ら素晴らしい教育を施した所で当たり前として受け止められてしまっては何処かで破綻する。物事には必ず終わりが存在するものだ。悪夢や苦痛の現況であったあれから私が解放された様に物事には終わりが存在する。良くも悪くもだ。
「所で、トシの所は来月の予定であったな」
「はい」
「出産や式典でバタバタしていてローザに会っていませんでしたがお元気ですか」
「はい。頗る元気。有り余っている程です」
「我が愛する姪の子供と、我が子が同じ年に生まれる。感慨深いものだ」
「そうねあなた」
そう。私も父親になる。勿論、ローザとの愛の結晶だ。
「トシ、子供達の為、共に、より良き未来を切り開こうぞ」
「はい、子供達が死の影に怯え暮らす。そんな世界に放り込む気はありません。より良き未来の為に出来る限りの事をするつもりです」
前の失敗から学ぶ。公共交通機構の運転手だった前の経験が何処まで活かせるかは不明だが、やれるだけの事はやってやろうじゃないか。
「子供達が仲良く遊ぶ姿が目に浮かぶようです。フフフ」
王妃様は、王太子殿下を優しく見つめながら微笑んでいた。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽
そして、更に半年が経過した。
五ヶ月も前の話になってしまうが、ローザは、立派な男の子を産んでくれた。息子の名前はドルだ。名前は国王陛下よりいただいた。
ドルには秘密がある。産まれて直ぐに言葉を発したのだ。その内容は、ローザと私を驚かせた。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽
「私は地球という異次元の世界から、ここリュボーフィと呼ばれる世界に、神様の力で転生した転生人です。この世界のお父さん。一 十四さんに勇者として協力する事が神より与えられた使命です」
「トシ……貴方は、イポーニィの……」
「こちらの世界のお母さんですね。何と可憐な……母に使う言葉でありませんでしたね。失礼致しました」
「トシ。子供って生まれて直ぐに話せる子もいるものかしら……」
「ローザ。これには複雑な事情がありそうです」
より良い未来とかそんな次元では無い話になりそうだ。まさか、成仏の為に女神様が導いてくださったこの世界で子供の父親に成ったら、子供は同郷の転生人。しかも勇者とは……
▽▲▽▲▽▲▽▲▽ドル視点
創造神様が仰っていた。両親とはこの2人の事の様だ。勇者として転生する世界での父は、日本から転生した方らしい。そそっかしい女神様のミスで本来は英雄として転生するはずが、転生人だと認識する事も無く、神様に匹敵する神聖なる力を宿しこの世界に来てしまったらしい。私はこの世界の父ニノマエトシさんに勇者として協力する事に合意し転生した。彼の日本での暮らしぶりを聞き協力を心に誓った。ただし、長年の陰険なる嫌がらせによって性根が腐り切ってしまっていると判断に至った時には、協力する前に叩き直す事も念頭に入れての合意だ。だがそれは、徒労だった。理解力に長け温厚。几帳面で繊細で真面目。些か風変わりな身なりをしている様だが個性なのだろう。そんな人だった。そして、この世界の父にローザと呼ばれていた可憐な女性。彼女が母親とは……実に悩ましい。
おっと、伝え忘れてしまっては、無事に大人へと成長し勇者に成れるか分から無い。
「創造神様から、両親となる2人に、御言葉を御預りしております」
「我が子を通して啓示を授かるなんて……トシ。私夢を見ているみたいです」
「生まれたての子供が喋ってる時点で、もう何も言う事はありません」
「創造神様からの御言葉です」
▽▲▽▲▽▲▽▲▽
そして、16年の歳月が流れた……
▽▲▽▲▽▲▽▲▽
「さぁ~父上。母上。行きますよ」
「本当に行かなきゃダメなのか」
「旅するのよね」
「俺が16歳の誕生日を迎える日。英雄としてこの世界に来るはずだったドゥ―シャーの父上と、突剣技に優れた母上と、理の謎を解く旅に出る様に仰られたのは創造神様です。神様より与えられた使命なんです」
「で、ドル。お前本当に勇者に成ったのか」
「16歳の誕生日の日に、勇者の力が覚醒するとしか聞いてません」
「ちょっと手貸してみろ」
「はい。父上」
「【☆接続☆】......
【レベル】1
【HP】 5000
【MP】 5000
攻撃力 A ☆★★★★★★★★★
魔力 A ☆★★★★★★★★★
防御力 A ☆★★★★★★★★★
魔耐性 A ☆★★★★★★★★★
速度 A ☆★★★★★★★★★
幸運 A ☆★★★★★★★★★
習得&再習得 フリー
......お前、勇者かどうかは分からないが、結構インチキレベルで強いぞ」
「インチキって、父上や母上の方がインチキレベルで強いですよね……それに、勇者って称号とか職業とか何じゃ」
「私がか……そうかぁ~……ローザ。手を」
「はい、トシ」
「【☆接続☆】......
【レベル】99+11680
(トシとお風呂に入った回数分加算)
【HP】1666+58400
※レベル+1でHP+5※
【MP】1499+46720
※レベル+1でMP+4※
攻撃力 S ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
魔力 S ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
防御力 S ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
魔耐性 S ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
速度 S ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幸運 S ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
習得&再習得 フリー
※勇者の母として恩恵を受ける※
......だろう......私は......
【レベル】99+11680
(異性とお風呂に入った回数分加算)
(ローザ一筋)
【HP】5000+1168000
※レベル+1でHP+100※
【MP】5400+2336000
※レベル+1でMP+200※
攻撃力 SSS ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
①【 SSS + 魔剣戦技 + 魔剣エクス 】
②【 SSS + 手拭戦技 + 高級手拭 】
魔力 SSS ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【 SSS 】
防御力 SSS ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【 SSS + 浴衣装備 + 高級浴衣 +
下駄装備 + 下駄 + 高級手拭 】
魔耐性 SSS ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【 SSS + 浴衣装備 + 高級浴衣 +
下駄装備 + 下駄 + 高級手拭 】
速度 SSS ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【 SSS + 俊足歩行 +
下駄装備 +下駄 】
幸運 sLe ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【 sLe + 腕時計 】
習得&再習得 フリー
※勇者の父として恩恵を受ける※
......余り変わらないと思うけど」
「レベル1の俺と、レベル11779の父上と母上ですよ」
「仕方ないだろう。入浴は毎日必ず1~2回。我家のルール通りに生活していたら勝手に強くなっていただけで自覚は無いのだから。ローザも私も以前と何も変わっていないよ」
「変わらな過ぎですよ。どうして、始めて会ったあの瞬間から、父上も母上も見た目が何も変わっていないのですか」
「あらぁ~ドル。何度も教えたでしょう。お湯の成分と高級シャンプー&リンス―でしょう。高級ボディーソープでしょう。高級洗顔フォームでしょう。ボディータオルのおかげよ」
「ですが……世間的には2人は俺の両親です。16歳の息子がいる。20歳前後の夫婦っておかし過ぎませんか」
「でも……現実だし仕方無いわよ」
「その為に、外では、ドルにお母さんの事をローザちゃんって呼び捨てしても良いわよって」
「そ、そうですが……」
俺は、地球のフランスのランスの旧貴族家。フランス革命を乗り越え細々と生き抜いた家の3男だった。貧しいながらも幸せに暮らしていた。だが、最後は何者かの手によって呆気無い最後だったらしい。世界創造神様から聞いた話なので客観的なのは許して欲しい。
父上の名前は、地球の日本の東京で暮らしていた時は一 十四。ここルシミール王国でもトシ・ニノマエ。実は俺、転生人で勇者だという事や父上に関する記憶はあるのだが、転生以前の記憶は一切残っていない。フランスのランスで呆気無い最後を遂げたという話は創造神様にせめてもの情けだと教えていただいた情報に過ぎない。記憶が無いのだから客観的。
母上の名前は、ローザ・ル・ルシミール。この国のお姫様。正式には王女様らしい。俺は、王位継承の資格は無いが立場上は王子だ。大叔父である国王陛下が正式に認めてくれている。
そして、ドゥ―シャーの息子であり、今日からは世界最強の冒険者のパーティーメンバーの一員と成る。冒険者ギルドランク『My』の父上と冒険者ギルドランク『SSS』の母上。2人のパーティーにだ。
「さぁ~王都に行きましょうか」
「まずは冒険者ギルドに登録して、薬草採集だ」
「父上。薬草採集が最初のクエストなのですか」
「薬草採集は儲かるんだ」
「お金の為ですか」
「いやいや違う。我家は国とか抜きで世界1の金持ちだ。今更金の為にクエストを熟してどうする」
「ではどうして……」
「人の心や地域の仕組みを知る為だ」
ドゥ―シャー様に協力して旅をする。転生の際の約束。創造神様と約束した旅が始まる……
「ドル。行くぞぉ~。ローザもドルも私に掴まりなさい」
「はい」
「お願いします」
「何を他人行儀な」
ありがとうございました。




