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異世界で幸せを手に入れました。  作者: 諏訪弘
プロローグ
16/40

成仏までの道則とお金

宜しくお願いします。

 (つがい)のファイアーポヨポヨ☆8とアイスポヨポヨ☆7を討伐した後、ルシミール湖の周囲を一周し、ノーマルポヨポヨ☆1を12匹、グリーンポヨポヨ☆3を3匹、オレンジポヨポヨ☆5を2匹、変異種のグレープポヨポヨまだ子供を7匹討伐した。


 グレープポヨポヨは、大人になると1匹で危険度がS☆3で天災級の魔物なんだそうだ。子供の内は☆10。それでもオレンジポヨポヨ☆5より2倍危険なアイスポヨポヨ☆7より2倍危険なファイアーポヨポヨ☆8より更に3倍危険なんだそうだ。つまり、オレンジポヨポヨより12倍危険らしい。


  ▽▲▽▲▽▲▽▲▽


【単独討伐履歴】


◇冒険者ギルド登録前◇

 2×××年06月06日 14:00

 戦闘1 危険度☆5:オレンジポヨポヨ:1匹

 2×××年06月06日 19:37  

 戦闘2 危険度☆6:狂骨影戦士:53体


◇ギルドランクN(ノービス)

 2×××年06月18日 22:20

 戦闘3 危険度☆8:ジャガーウルフ:4匹

 戦闘4 危険度☆6:狂骨影戦士:14体

     危険度☆4:狂骨見習い兵:444体

     危険度☆2:人魂:166体


◇ギルドランクC◇

 2××××年06月20日 09:47

 戦闘5 危険度☆1:ノーマルポヨポヨ:2匹


◇ギルドランクS+◇

 2××××年07月01日 17:19

 戦闘6 危険度☆7:アイスポヨポヨ:1匹

     危険度☆8:ファイアーポヨポヨ:1匹

 2××××年07月01日 17:34

 戦闘7 危険度☆3:グリーンポヨポヨ:3匹

     危険度☆1:ノーマルポヨポヨ:12匹

     危険度☆5:オレンジポヨポヨ:2匹

 2××××年07月01日 17:41

 戦闘8 危険度☆5:オレンジポヨポヨ:1匹

 2××××年07月01日 17:44

 戦闘9 危険度☆10:当然変異上位進化個体

          グレープポヨポヨ幼体:7匹


【パーティー討伐履歴】


 なし


 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽



「こ、これは……先程までギルドマスターの部屋で話をしていたはず……いったいどうやって……」


「冒険者に討伐の方法を聞くのは野暮というものですわ」


「し、失礼致しました。ローザ王女殿下っ……で、ですが軍の担当者にどう説明すれば良いのか、取立を依頼されただけの(わたくし)には手に負えません……でし……であります……はい」


「どうやら商人ギルドからの請求書は軍に持って行った方が良さそうですねぇ~。……どうやったのかわ分かりませんが、歴史書に記された通り超越した御力を本当に御持ちの様ですね……ドゥ―シャー様は……今日は、これで失礼しますよぉ~。男爵殿これも仕事。悪意有っての事ではありませんのでぇ~今後も宜しくお願いしますよぉ~……では、また」


『バタン』


 取立ギルドのチャールズだったか。言いたい事だけ言って帰って行ったが、あの位自由に生きてみたい。正直あの適当且つ無責任な感じ。他人に責任を押し付け自分は蚊帳の外。憧れる。だが、実際自分があれをやられたらと思うと虫唾が走る。……この考えに落ち着く時点で私には、あの様に生きる事は無理なのだろうな。悲しむべきか。誇るべきか……


「ローザ姫様。軍の事なら、軍務卿にでも話をしたらどうでしょうか」


「王都の魔物の討伐依頼の成功失敗程度の件に軍務卿をですか」


「はい。何かあったら力になると、皆さん言ってくれましたし、ここは冒険者ギルドと王国軍が虚偽や成功や失敗と言った責任転嫁で拗れる前に、折り合いを付け手打ちを無理矢理させてしまった方が、遺恨が残らず良いのでは無いかと……」


「事が起こる前に折り合いを付けるのですか……変わった手法ですね」


 日本式というか日本的というか・・・問題に発展する前に摘んでしまう。大きな問題に直面した時にマニュアルが無いと騒ぎ立て対処出来無い残念な結果になるケースが多いのだが……ここは日本では無い。お役所仕事ではあるが、根本的に違うと信じよう。


 だが、私が勝手に決めて良い話では無い。ルシミール王国の冒険者ギルド本部のギルドマスターと軍の依頼を受け取立に来た取立ギルドの取立人に確認するのが筋か。


「ボボーイさんと、フィリップさんはどうしたいですか」


「ギルドマスターとしては、軍務卿閣下をこの様な醜態の現場にお呼び立てする事は非常に心苦しくてでありまして……何と言いますか……宜しく無いと言いますか。避けるべきだと思うと言いますか……はい……出来れば穏便にと言った感じが望ましいと言いますか……」


「わ、わ、私は依頼を受け取立に参っただけで……軍と冒険者ギルドのか、か、勘違いが勘違いの内に片付きおんおん穏便に……ドゥ―シャー様。ローザ姫様いえローザ王女殿下様。も、も、申し訳ありませんっ……わ、わた、わ、くし……たい、体調がた、た、たた……」


「≪ヒール≫≪キュア≫」


「トシ様の聖属性のヒールとキュアです。もう平気ですね」


「あ、あ、あ、あは、はい……ぐ、軍の担当の者にせ、せ、事態をせ、説明しに行って、ま、参ります」


『バタバタバタバァーン』


 何だ。この国の人間は、立場のある者の部屋からの退室時は小走りが基本なのか。落ち着きが無い人達ばかりだ。


「ドゥ―シャー様。ギルドカードの情報ですが、見れば見る程何が何やら理解を超え……どう申して良いのか……討伐に対しての国際懸賞金と国家報奨金と冒険者ギルド討伐基金からの事後討伐達成報酬。それと、国王陛下に報告する義務を伴う☆10以上の討伐が含まれています」


「討伐には国王陛下に報告する義務を伴う物もあるのですか」


「通常は討伐隊を組織し軍主導でコンプリートします。報告は軍務卿閣下によって国王陛下に上申されるのですが、単独討伐ですので……しかも7匹ですので……」



 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 翌朝。朝食時の事だ。


「今日は申し訳無いが天災級の討伐7件を達成したドゥ―シャーとして、王国の貴族達や諸外国の大使達を招いての式典に出席してくれ。サプライズを用意した。損はさせないよ」


「報告すれば良いのですよね」


「結果を軍務卿が読み上げ。私がトシに声を掛ける。トシは頷くなり短く返事をするだけで良い。諸外国の大使達は国元ではそれなりの身分にある者達だ。情報を集めるにせよ、今後の為にも知り合いに成っておくと良いと思うぞ」


「トシ様。昨日の今日でもう機会に恵まれた様ですね」


「そうみたいです……」


 うまく生き過ぎて怖い。こういう時は必ず問題が起きる。


「トシさんは、どうやって移動したのですか」


「お母様。それはっ」


「ローザ姫様。家族にならこの位の事なら話しても構いません」


「そ、そうですか。……分かりました。トシ様は走っただけです」


「走った……どういう意味ですか」


「ですから、自分の足で走って移動しました」


「王都からルシミール湖までですか」


「はい」


「トシ。それは、魔法か何かなのかね」


「国王陛下。スキルでも魔法でもありません。ただ走っただけです」


「そうか。……早馬でも6~7時間程。休憩を入れ10時間はかかる距離を己の足で走ったかぁっ。流石はドゥ―シャー殿だな。この調子でドンドン伝説をルシミール王国で作ってくれ。ハッハッハッハッハ」


 詮索され無いのは実に助かる。この軽さで良いのか心配にはなるが……



 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽



「王国軍、冒険者ギルド共に、虚偽は無かった事が、ドゥ―シャー殿の討伐の履歴より証明されました。オレンジポヨポヨを発見した兵士は1分でも早く軍に報告をと急ぎ、冒険者ギルドは王国、国民、他国の商人、旅人達の安全を第一に考え討伐隊を組織し、ファイアーポヨポヨとアイスポヨポヨと遭遇。撤退を余儀なく。軍はオレンジポヨポヨの討伐に当たり生じた冒険者ギルド側の負担金を全て保障します。ただし、討伐の成功報酬に関しては支払いを拒否します」


「ふむ。冒険者ギルド。ルシミール王国本部ギルドマスター。ロディオン・ボボーイ男爵。発言を許す」


 政務卿が進行役みたいだ。式典ではそうなのか……。軍と冒険者ギルドの意見を聞く。まるで裁判の様だが……


「国王陛下。御列席の皆様。ルシミール王国冒険者ギルド王都本部ギルドマスターのロディオン・ボボーイです。冒険者ギルドルシミール王国本部と致しましては、王国軍王都防衛隊司令官クジマ・シュイスキー子爵の提案に同意します」


「ふむ」


「ですが、同意するに当たり1つだけ発言の機会をいただきたい」


「発言を認めます」


「情報は最新の物を細密な状態で嘘偽り無く共有されるべきです。使命感から報告を急ぐ気持ちは理解出来ます。ですが、急いて不足した情報を持ち帰り王国軍や冒険者ギルドを混乱させたのも事実。罰を与える事は望みません。再発防止に努めていただきたい」


「ルシミール王国軍王都防衛隊司令官クジマ・シュイスキー子爵。発言を許す」


「王国軍王都防衛隊偵察諜報局の改善を約束する」


「ふむ。クジマ・シュイスキー子爵。ロディオン・ボボーイ男爵。下がってよいぞ」


「「 はっ 」」


「陛下。神魔国イポーニィ侯爵トシ・ニノマエ殿。ルシミール王国名トシ・ル・ルシミール。ドゥ―シャー様へのルシミール王国からの論功行賞を始めたいと思います」


「政務卿。世はドゥ―シャー殿の戦歴を知り驚愕している。危険度☆4以上の魔物亡者の討伐。全ての討伐に対し国王として正しく評価したいと考えている」


「畏まりました」


 国王陛下と政務卿の三文芝居が終わった様だ。


「軍務卿閣下」


「はっ……僭越ながら、ルキヤン・ソヤポーレが論功を読み上げさせていただきます」



 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 かなりの大金が手に入った。


 私はローザ姫様と2人で、王宮内に用意された居住用の部屋で休憩していた。


「物凄い金額を貰ってしまいましたが、本当に貰ってしまって良かったのでしょうか」


「トシ様が御一人で討伐し世界や国や土地や人を救った結果です」


「そうなんでしょうが……」


 救った感じがしない。魔物も亡者もハッキリ言って弱過ぎて、こんなにお金を貰って良いものなのか悩んでしまう。


 私は腕時計の右側のボタンを押し、視界に浮かび上がった【☆所持品☆】をクリックする。


 大白金貨281枚(280枚UP)。白金貨4枚(3枚UP)。大金貨6枚(4枚UP)。金貨8枚(8枚UP)。大銀貨263枚(4枚UP)。中銀貨10枚(4枚UP)。銀貨2枚(1枚UP)。大青銅貨8枚(変化無し)。中青銅貨21枚(7枚UP)。青銅貨13枚(5枚UP)。


 日本の円で考えると、約56億4945万2023円……


「難しい顔をしてどうしたのですか」


「考え事です」


 ローザ姫様は、相変わらず屈託の無い笑顔だ。……成仏の為に率先してドゥ―シャーに関係する遺跡を巡る必要はあるのだろうか。今の私は20歳位の若い身体だ。


 沢山の人をヒーラーとして治癒治療し救う力を持っている。


 沢山の人を戦いによって魔物や亡者から救う力も持っている。


 凡そ生きている間に使い切る事の出来ないだけの富を手に入れた。


 そして、ローザ姫様や家族。知性と教養に溢れたとても優しく和やかな家族。


 成仏する事は非常に重要な事だと思う。だが、努力し自ら進んで成仏する。おかしな気がする。努力しないと成仏出来無い。それは未練と呼ぶに相応しい何かだ。…………………。


 …………そうだな。……決めたぞ。私は決めた。


 人間の皮を被った鬼達が居ないこの国で、幸せを心に沢山……そうだ、あれ(・・)達より幸せになってみせる。死んで良かったと胸を張って言える生き方をしてやる。…………そうだ。そうだな。そうあるべきだ……


「トシ様ぁ~」


「……え、あ、はい」


 いかん、危なく恨みと憎しみ。負のスパイラルに陥るところだった。ローザ姫様ありがとう。私があと40歳以上若かければ……


「遺跡を巡る旅をするにしても、拠点は必要だと思うのです。拠点は王都にしますか。それともベリョーザにしますか」


 ……成仏の為の努力はしないと決めたばかりだ。流石に旅をし無いとは言える雰囲気では無いな。……う~む。どうした物か……考えるだ私。


「そうですねぇ~」


 国王陛下と王妃様の世継ぎ問題が解決するまでは、王都に滞在するべきだ。そうだ。滞在していなくてはいけない。何かあったら大変だ。


「国王陛下と王妃様。王国の未来が紡がれるまでは、王都を離れたとしても可能な限り3~5日で帰還出来る場所に居る様にしたいと考えています」


「そ、そうですよね。王太子。世継ぎ問題はドゥ―シャー様の遺跡と同じ位大切ですよね」


 何だ。……当然、全く意味が分からん。まぁ~元気で何よりだとは思う。……


「私達も頑張りましょう」


 成仏する為に努力はしない。だが、手抜きだと神様女神様から叱責されるのも問題だ。地獄への招待券を率先して入手するつもりは更々無い。私の為に親身になって……何て良い娘だ。ありがとう。ローザ姫様。


「そうですね」

ありがとうございました。

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