つがいの魔物と手拭
宜しくお願いします。
王都の冒険者ギルドは、想像していたよりも大きく地上3階地下3階の立派な建造物だった。
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「良くぞおいでくださいました。ローザ王女様、ドゥ―シャー様。私はギルドマスターのロディオン・ボボーイと申します」
おや……苗字がある。貴族階級の人なのか。
『トントン』
「ギルドマスター。先日の討伐失敗の違約金の請求が商人ギルドと軍から届きました。入室しても宜しいでしょうか」
「今、来客中だ。請求書何か後で良いだろう」
「回収担当だと名乗る者が直接請求書を持参して来ております」
「私は不在だ」
「無理だと思います」
「どうしてだね」
「この会話を聞かれているからです」
あぁ~そうい事か……。実に厭らしい。
『ガチャ』
「入りますよ。ギルドマスターぁ~男爵様ともあろうお方が居留守を使おうとするとは感心しませんなぁ~……おやおや本当に先客がいたとは」
「これはこれは、取立ギルドのチャールズさんとフィリップさん。商人ギルドや王国軍に移籍されたのですかな。ハッハッハッハ」
「笑ってる暇があったら違約金払って貰いましょうか……」
『ドン』
商人ギルドから派遣されて来たチャールズと呼ばれた男はジャケットのチケットポケットから請求書を取り出しギルドマスターの前に叩き付けた。
「大金貨10枚でも、白金貨2枚でも、金貨100枚でも何でも構いません」
「王国軍からの請求書です……白金貨4枚。大白金貨1枚でも構いません。今日中に違約金の支払いが行われ無い場合は、違約金の支払いが行われるまで王都の冒険者ギルドを軍の命令により封鎖します」
何っ。軍、お前達何のつもりだ。邪魔する気ですか……
「ちょっと待ってください。閉鎖されては困ります」
情報が集まるはずの場所が……冒険者達が王都からいなくなってしまう。
「冒険者ギルドより支払いが無い場合困るのは当方も同じ。依頼されたクエストを失敗した冒険者ギルド側の落ち度です」
「その通りだ。討伐用にと立替えた道具や装備の代金。失敗しようが成功しようが支払って貰います」
合算すると結構な額になる。冒険者ギルド本部は何の討伐に失敗したんだ……。
「ボボーイさん。王都の冒険者ギルドは何の討伐に失敗したのでしょうか。差支え無い様でしたら話していただけませんか」
「お嬢さん達に話しても、失敗したクエストは失敗。今更何が変わる訳でも無い。ほらぁ~男爵様ぁ~さっさと支払ってくださいよぉ~」
「先程から失敗したと何の事でしょうかな……。軍からの依頼内容に虚偽あり討伐依頼はキャンセル処理したと報告したはずです。討伐の為の準備費用は軍に全額請求すると連絡したはずです」
「軍は虚偽の依頼はしておりません」
「商人ギルドは支払いさえしてくれるならどちらでも構いませんよぉ~」
「軍が虚偽の討伐依頼をしたのは明白です。冒険者ギルドに所属する冒険者達300人が異なる魔物を見ている」
「冒険者ギルド側が、失敗した事を虚偽の依頼だと言い張り責任を放棄するのであれば、軍としても考えがあります」
「それが、封鎖かっ……」
つまり、依頼内容の虚偽の有無がこの事態。そういう事かな……。
「虚偽か虚偽では無いか、確認しに行けば良いだけの事ではありませんか」
ローザ姫様。それが可能ならですが、たぶんこんな事態には……
「軍にその様な時間はありません」
「冒険者ギルドに所属する冒険者達をあんな危険な場所にもう1度送る事は出来ません」
そんなに危険な魔物が王都の近くに……。冒険者ギルドでも軍でもどちらでも良いから討伐した方が良いのではないだろうか。
「ギルドマスター。いったい何を討伐する予定で、何が居たのですか」
「それ、私も気になります」
「オレンジポヨポヨの討伐を軍から依頼されたのです」
「オレンジポヨポヨが王都の近くにいるのですか」
オレンジポヨポヨってあれか……手拭で簡単に倒せた印象しか残って無いぞ。
「ですが、事態はもっと深刻でした。到着した討伐隊が魔物を確認したところ、ファイアーポヨポヨとアイスポヨポヨのつがいだったのです」
「それこそ、冒険者ギルド側の嘘。軍の偵察隊が魔物を見間違える訳がありません。違約金を支払ってください。男爵様……ギルドマスター殿」
確か、危険度☆8の火属性のポヨポヨと、危険度☆7の水属性のポヨポヨだったかな。つがいって夫婦って事でいいのか……火と水だと子供は……いや、今は繁殖とかどうでも良い関係無い事だ。
「ポヨポヨの番は何処にいたのですか」
「王都の10時の門から出て直ぐのルシミールの森の中にあるルシミール湖の近くです」
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「トシ様。もう夕方になりますよ。夜は魔物が強くなりますよ。危険ですよ」
「今日中に魔物の状況を確認して、どっちであれ討伐してしまえば、冒険者ギルドは閉鎖されないのですよね」
「ですが、今からルシミール湖に向かっても今日中に討伐して戻って来るのは無理だと思いますよ」
「10時の門から出て直ぐの森にあり池ですよね」
「王都の北西に広がるルシミールの森にあるルシミール湖です。10時の門から約170Km程の場所にある湖です。緊急用の早馬で向かっても6~7時間はかかります」
私には、記憶障害に陥っていた時の記憶の中に時速305Kmで走れた記憶が残っている。女神様から腕時計の他にいただいた物なのだろう。つまり、33分程走る事で目的地に到着する計算だ。
「ローザ姫様。私なら33分程でルシミール湖に行けます」
「はっ……えっ……トシ様がドゥ―シャー様でも流石にそれは無理だと思いますが……」
「外壁門が閉門するのは何時ですか」
「王都の門は緊急時以外は常に開門されています。それに、私達は王族です。閉門していようが開門します」
なるほど。行って、討伐して、戻って、報告する。余裕があるな。
「ローザ姫様。今から私は確認と討伐に行こうと思います。一緒に行きますか」
「討伐隊を組織して、一泊二日~二泊三日でコンプリート出来るか……オレンジポヨポヨが討伐対象の場合ですよ……」
「オレンジポヨポヨなら1撃で倒せます。この国で最初に遭遇したオレンジポヨポヨは1撃で倒せたので間違いありません」
「もう無茶苦茶ですよね…………分かりました同行致しますわ。私の愛馬はどんなに頑張っても1日に走れる距離は250Kmが限界ですがどうしましょうか」
誘ったは良いが完全にミスだ。邪魔でしかない。考えるだ私。……う~ん。……おんぶか抱っこ……それしかないか。
「確認します。私に背負われるのと、御姫様抱っこされるのと、どちらが良いですか」
「えっ……いったいどの様に向かわれるのでしょうか」
「内緒にして貰えますか」
「はい」
「全力で走ります」
「は、はいっ……トシ様が走るのでしょうか…………」
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ルシミール湖に到着したが、ポヨポヨの番は何処だ。
「ローザ姫様。ポヨポヨの番は湖よりも街道寄りで目撃されたのでしょうか」
「…………えええぇぇぇ~~~………ルシミール湖ですよね……ここはぁっ」
「そうですよ。10時の門から出て最初の森の中にある最初の湖はここでしたから」
御姫様抱っこで人を1人運んでいたからだろう。私の計算は4分ずれ37分かかり湖に到着した。
「トシ様は空を飛べるのですか」
「飛べたらこんなに苦労しませんよ。下駄で時速300Km近く出し続けるのは大変なんです」
「スキルや魔法で強化した者でも時速15Kmも出ません。いったいどうなってるのですか……」
『ピィヨォ~ン ピィヨォ~ン』
「おっ……ラッキーです。ファイアーポヨポヨとアイスポヨポヨを発見しました」
「トシ様。それは、逆ではないかと……危険度☆8と☆7の魔物に、私達が捕捉されたのではないかと……」
確かに、魔物方から態々私に向かって来てくれている。捕捉されたと考えるべきか。だが、それは好都合この上ない。
「倒して来ます。ここで待っててください」
「倒すって、あの2匹をですか……武器は魔剣はお持ちなのですかぁっ」
魔剣かぁっ……どうする私。
1.魔剣を取り出し魔剣で戦う。
2.頭に乗せた手拭で戦う。
3.ローザ姫様に戦って貰う。
4.オレンジポヨポヨではない確認をしたので帰還する。
5.腕時計。
まず、5はパスだ。時間は大切だが、今は時間を知る事よりよも大切な事がある。では、4はどうだ。そんなに危険だとは思えないが危険度☆8と☆7の魔物を放置したままにするのは気分が良く無い。却下だ。却下。……3は、誰にも気付かれずに……
…………な、私は何を考えている。ローザ姫様は私から何もかも奪ったあの家族の皮を被った鬼達では無い。何だか分からないままに私の嫁になったまだ幼い女の子だ。私が護らないでどうする。却下だ。却下。パス。100%パスだ。
やはり1か2か。
『ボヨヨヨォォォォン』
『シュッ』(オートパーリ―)
『メラメラメラメラ ボォバ―――ン』
『シュゥ―――』(オートキャンセル)
「きゃぁ~トシ様ぁ~…………………えっ……」
どうするか考えているうちにもう移動して来たというのか。オレンジポヨポヨより移動速度が速いな。
「何とも無いのですか」
「あぁ~……この程度の攻撃でHPが減る事は無いです」
「そ、そうなのですか……」
まさか、魔法を撃って来るとは。驚きだ。
「あのぉ~何を悩んでおられるのですか」
「魔剣で戦うかどうしようか考えていました」
『ボヨヨヨォォォォン』
『シュッ』(オートパーリ―)
『ボヨヨヨォォォォン』
『シュッ』(オートパーリ―)
この青いアイスポヨポヨさっきから体当が鬱陶しいなぁ~……
『バチコ―――ン』
私は手拭を右手に持つと、手首のスナップをきかせ手拭でアイスポヨポヨを叩いた。
アイスポヨポヨは、青い綺麗な石を20個落とし消滅した。
「えええぇぇぇ―――。い、今ので倒せちゃったのですかっ」
「だから聞いたじゃないですか。オレンジポヨポヨって本当に強いんですか。1撃で倒せましたけどって……言いましたよね」
「オレンジポヨポヨも間違い無く危険な魔物です。それに、アイスポヨポヨはオレンジポヨポヨの倍は強いはずです」
『メラメラメラメラ ボォバ―――ン』
『シュゥ―――』(オートキャンセル)
『ボボボボボボボボボボボボボ』
うん……番を討伐されて激怒したのか。真っ赤になって攻撃かぁ~……
「トシ様。離れてください。自爆します」
あぁ~これ自爆の前段階な訳か。それなら、このまま手拭で、
『バチコォ―――ン』
ファイアーポヨポヨは、赤い綺麗な石を28個落として消滅した。
私は、青い綺麗な石と赤い綺麗な石を右袖に放り込んだ。
「オレンジポヨポヨもノーマルポヨポヨもファイアーポヨポヨもアイスポヨポヨも余り差を感じないのですが、皆で私を担いでませんよね……」
「剣の腕が一流なのは知っていましたが……素手での戦闘もまた一流なのですね……伝説上の存在ユーシャ様の如き戦闘能力にドゥ―シャー様としての治癒の御力……私は……」
「念の為に湖の周りを一周してから戻りましょう」
「は、はい……」
ありがとうございました。




