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異世界で幸せを手に入れました。  作者: 諏訪弘
プロローグ
13/40

世継ぎ問題の前にヒール

宜しくお願いします。

「≪ヒール≫」


 ……記憶の空白期間。13日間。女神様の御力で、時系列ではあるが絵の様に記憶を取り戻した。少女の右足の膝から下を再生したグロテスクな奇跡の瞬間。


 私の目の前で前足が再生した豚。生える瞬間を目の当たりにすると、心からグロテスクだと思う。


「おおおぉぉぉ~~~。姉上様の仰られた通り実に見事な治癒。いやこの奇跡は、治癒の域を超えておる。神魔国イポーニィのトシ・ニノマエ侯爵よ。ルシミール王国の国王として侯爵に頼みがある」


 何。国王自ら頭を下げるだと……。


「陛下。お止めください。家臣達の前です」


「煩いぞ。内務卿」


「も、申し訳ございません……」


「それで、国王陛下。私は何をすれば宜しいのでしょう」


 不妊治療に決まってるか。しかし、私は医者では無い。目に見える怪我や状態異常であれば、完治まで簡単に出来る事が分かった。だが、妊娠ともなると、マイクロメートルの世界の話だ。


「我が姉上様から聞き知っていると思うが、世には子がいない。即位してから8年になるが王妃(おうひ)(きさき)達も懐妊する兆しが無い。子が出来ぬまま妃だけが増え続けるのも国政国家の負担となる。若い妃(きさき)達の健康状態だけで良いドゥ―シャーとして診てはくれぬか」


「若い妃ですか。……」


 はて、どう言う意味だ。……国王はまだ36歳だと聞いた。


「国王陛下は36歳だとお聞きしました。大変失礼とは存じますが、王妃様や妃様方の年齢をお聞かせください」


「王妃は世より1つ年下だったはず。妃達は、王妃より年下だな。顔を見た事の無い者もおる故、年上がおるやもしれないがな。ハッハッハッハッハ」


「陛下。家臣たちの前です」


「冗談の1つや2つ良いではないか」


「陛下っ」


「分かった。分かった。内務卿の命令に従うとしよう」


「命令等とその様なつもりでは……」


「冗談だ冗談。ハッハッハッハッハ」


「へ、陛下……」


 可哀想に、中間管理職はどの国もで同じか。同情します。


「国王陛下。私の生まれ育った国では、女性は高齢出産と呼ばれる技術を用いて、35歳以上でも出産する事が可能になっております。私が国を旅立った時の記録では、最高齢は50代だったと記憶しております」


 医療の技術が可能にしただけで、高齢出産という技術は無い。だが、方便だ。


「なんとそれは凄い。では、王妃にも可能性が……」


「私にも、まだ母になれる可能性があるのですか」


 妊娠中毒、死産や流産、難産のリスクを無くす為に可能な限り、私が傍にいてヒールやキュアを施す事が望ましいだろう。それ以前に、問題は男の方だ。国王の身体の状態が先だろう。だが、女性に問題があると決め付けてかかる考えが常識として広まっているこの国で、どうやって国王の身体を診る……考えるんだ私。……う~ん……やはり、こうするしか無いのか。


「国王陛下。高齢出産という技術には、母体となる女性だけでは無く、男性の存在が非常に重要になります。また、夫婦で一緒に行う事で安産に繋がり、丈夫で賢く勇敢な子が産まれます」


 断言してしまった。……まっ、生まれてしまえば誰も文句は言うまい。


「なるほど。ならば、まずは世と王妃を診てはくれぬか」


「畏まりました」


「陛下。それはなりません。陛下の御身体。御健康はパレスヒーラーの長である私の役目です。これは、ルシミール王国建国以来頑なに守られて来た大切なルールにございます」


「ブライアンかっ!」


「マンダリーン王女様に取り入り、ローザ姫様の夫になったからと言って、付け上がるなよ小僧が」


 この騒がしい中年が、この国で一番優秀なヒーラーで、ブライアン・エバンズ男爵かな。権力を振り翳し偉そうにしている人間が私は苦手だ。


「それもそうだな。分かった」


「陛下。お分かりいただけましたかっ。誠にあり」


「ならば、ブライアン。侍医長の任を解く」


「がと……今何と……私の聞き間違いで無ければ、任を解くと……」


「ドゥ―シャー様にヒーラーとしての最高位を務めていただく。当然の事だろう。内務卿そうだろう。皆の意見も聞きたい」


「陛下。ドゥ―シャー様が王国におられるのです。まして陛下の実の姉マンダリーン王女様の姫君ローザ様の夫です。パレスヒーラー(侍医)キャプテン()にこれ程相応しい人物がおりましょうか。ここに居る者は皆同じ意見に御座います」


「ふむ。良く言った。内務卿。皆も良く言った」


『はっ』(大勢)


「陛下。私の今迄の忠義を……」


「ブライアン。侯爵の下で勉強し、良いヒーラーを目指すが良い」


「へ、陛下……」



 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽



 本来、入室する事等許されぬ。王国の聖域の1つ。国王と王妃の寝室に移動した。メイド達は自由に出入りしている訳で聖域とは表向きの話でしかないのだが……


「侯爵よ。何か分かったか」


 ダメだ。顔色を見ただけで分かる訳が無い……。考えるんだ私。……ヒールとキュアを適当に施して身体の異常は取り除いてしまうとして、何かそれっぽい事をやらせ達成感と満足を与えた方が良いだろう。……う~ん。今回は方便祭りで行くしかあるまい。


「原因が分かりました」


「なんと。世と王妃の表情を見ただけで分かったと申すのか」


「はい。正確には瞳を()て分かりました」


「おぉ~。何て素晴らしいのでしょう。祖母から聞いた話の通りドゥ―シャー様とは本当に素晴らしい人物なのですね。陛下」


「世も本や話でしか聞いた事が無かった。侯爵よ。王妃が見事懐妊した暁には何でも願いを叶えようぞ」


「国王陛下も王妃様も気が早いですよ。それに、妊娠が目的ではありません。無事立派な子供を産み。育てる事が目的です。何かいただけるのでしたら、王子様や王女様が立派に成人された時でお願いします」


 その頃には、私は立派に成仏している。だが、結婚し夫婦になってしまったローザ姫様は生き続ける。あの美貌だ良い相手等直ぐに見つかるだろうが、せめて何か残してあげたい。今の私に出来る事は何か……それは、周りに恩を売る事だ。それ位だ。


「そうだな。侯爵の言う通りだ。まるで父上と話をしている様だったぞ」


 年齢的にはその位か。しかし、一国の国王に父親と錯覚していただけるのは、何となく嬉しい。誇れる人生では無かった私が、他人に必要とされ評価されている。成仏する前に、国王陛下と王妃様の間に新しい命が宿って欲しいものだ。神様。女神様。お願いします。


「まずは、日々の生活を改善したいと思います」


「どうすればよい」


「早寝早起きは基本ですが、食べ物や日々の精神的なストレスに対しても最新の注意を払っていきたいと思います。ですが人間生きているだけで、精神や身体にストレスは蓄積します。また毒素も蓄積します。ストレスは軽い運動と温泉或いは風呂で軽減し、毒素は私の魔法とこれも温泉或いは風呂で完全に除去したいと考えます」


「ふむふむ」


「まず。食事に関しては、国王陛下や王妃様に説明するより、料理を担当する者達を私が直接指導し改善を促しておきましょう」


「おぉ~素晴らしい」


「ドゥ―シャー様ぁ~~~」


 王妃様。拝まないでください。拝んでいただけるのでしたら成仏してからでお願いします。今現在やる事が出来たので、まだ成仏出来無いんです……


「トシ様」


「ローザ姫様。どうされました」


「私も向学の為、同席しても宜しいでしょうか」


「高齢出産は夫婦のデリケートな事項が多く関わって来ます。夫婦によって異なるのです」


「そうなのですか」


「ローザ姫様は、お若いのです。高齢出産の技術を身に付けるよりも、母体として女性として未熟な精神を鍛える為に時間をお使いください」


「私も母親に成れるのですね」


「当然です。ローザ姫様なら良い母親に成れると思います」


「はい。頑張ります」


「国王陛下。王妃様。申し訳ございません。脱線しました」


「いやいや。良い物を見せて貰った。姪のローザがあんな顔をするとはな。王妃よ。我々も負けてはいられないな」


「はい。陛下」


 何だか良く分からないが、やる気になってくれたのは助かる。ヒールやキュアを施した所で、妊娠しないだろうと手を抜かれ夫婦の営みが行われ無ければ、宿るものも宿らん。


「それでは、浴室へ移動しましょう」


「浴室へか」


「そうです。私が常に持ち歩いている浴槽があるのですが、それに私の魔力を使いお湯を注ぎます。そのお湯には解毒や回復の効果があります。未熟な身ですので、大きな効果ではありませんが、普通のお湯よりは良いと思います」


「侯爵は、魔法でお湯が出せるのか」


「はい。魔法の実験をしていた所、お湯を出せる様になりました」


「新しい魔法を考案したという事か……」


 新しい魔法。……どういう事だ。


「その魔法。ルシミール王国で管理させてくれぬか」


「構いませんよ」


「おぉ~~~。今日は素晴らしい日だ」


「はい。陛下」


「それでは、浴室へ移動しましょう」


「分かった」


 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽


 浴室へ移動すると、大臣達が控えていた。


 右袖から丸形桧葉浴槽を取り出す。


「今、その服の袖から取り出したのか」


「私が着ています。浴衣という服の両袖には少し多目に物を収納する事が出来るのです」


「多目か……その浴槽は、大き過ぎて、どうやって入っていたのか、気になるのだが」


「ストレスという事ですね。分かりました。王妃様が見事御懐妊なされた時に、開示しましょう」


「義務として長年悩まされて来た世継ぎの話に、好奇心を結び付け世を煽るとはやるではないか」


 そんなつもりはありませんでした。開示するにも私も分かっていません。すみません。すみません。懐妊の祝賀ムードの中で有耶無耶にしてしまおう。


「≪オーショード≫」


 浴槽に、お湯を注ぐ。魔法のレベルが上がったからなのかもしれないが、1回のMP消費が7で1ℓだった。水魔法オーショードは、湯量調整が可能な状態で、最大10ℓ出せる様になっていた。5ℓに調整するとMP消費は4で済む。


「おおおぉぉぉ~~~」


「お湯が……素晴らしい。陛下……魔法でお湯が扱える様になれば、国の勢力図が大きく変わります。そうだな。軍務卿よ」


「さよう。内務卿」


「内務卿閣下。軍務卿閣下。それに他の閣下の皆様。今後は、高齢出産の技術を施している時に、内政や外交。権力、金の話は禁止です。これは、国王陛下と王妃様の為です。王国の未来の為です」


「うむ……そうだな」


「侯爵がいるだけで、世のストレスは軽減しそうだ。ハッハッハッハ」


「私も侯爵が気に入りました。我が一族に年頃の娘がいれば良いのですが……」


「それは良い考えだ」


 盛り上がるのは構いません。国王陛下。王妃様。御二人は、この中で入浴されるおつもりですか……


「入浴の仕方は分かりますね」


「技術があるのではないのか。世や王妃に気を使う必要は無い。指導してくれ頼む」


「私も技術をお聞きたい」


「わ、分かりました……」


 他所様の家族風呂に乱入する時が来てしまうとは……。もうあらゆる意味でオーバーしている。ダメだ。良い方法が思い浮かば無い。


「まずは、国王陛下。王妃様。必要最低限の者だけにしていただけますか」


「うむ。それもそうだな。皆の者控えの間で待つが良い」


『畏まりました』(大勢)


 浴室には、私とメイドが10人か。ローザ姫様達が控えの間へ移動しただけでも良かったと思う事にしよう。


「それでは、まず気を付けていただきたい点から御説明致します。国王陛下にも王妃様にも覚えていただきたいと思います。ですが、今は習慣化していただく事を目的にしますので、メイドの皆さんに覚えていただくだけで結構です」


『はい』(メイド達)


「まず、温度の高過ぎるお湯は避けてください。39℃程が良いと思います。また、湯船に浸かる時間は長くても30分までにしてください。ここで注意です。入浴前に必ず200cc程の水を飲んでください」


「水を飲むのか」


「それは何故ですか」


「高齢出産に必要だからです。入浴中も喉が乾いたと思った時には迷わず水を飲んでください」


「はい」


「うむそうしよう」


「王妃様は体調により入浴出来たない時がどうしてございます。そんな時は、足湯といって、足首から下だけを湯に浸けるだけでも構いません」


「意外に普通なのだな」


「はい。お湯の温度管理と、入浴時間と、水分補給。この3つが重要なのです」


 厳密には肩や腰。確か湯船に入る時には、年齢や病気や体調や個々の状況に応じた入浴方法が存在したはず。だが、そこまでは流石に覚えていない。一先ず健康的な入浴方法を教えるだけで良いだろう。


 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽


 国王と王妃をメイド達に任せ、私も控えの間へ移動していた。


「ニノマエ侯爵様は、共も連れずに、ルシミール王国へ非公式で来られた様ですが、正規の方法で入国しなかったのはどうしてですか」


 この人は外交の長。外務卿だったか。……痛い所を的確に突いて来る。だが、質疑応答のシミュレーションは事前に済ませてある。交通渋滞や交通事故。あらゆるシチュエーションに対応する。それが本物の運転士。乗客の命を預かり定時で動く。一見歯車の様な作業だが、狂ってはいけない歯車なのだ。


「はい。実は魔剣の調査の為にルシミール王国に入国したのです。公にし騒ぎになってしまっては、ルシミール王国にも周辺国にも良い結果になりません。ですから、非公式で動いたのです」


「魔剣ですか」


「それはどの様な魔剣なのですか」


「鞘に納めると魔剣なのですが、神々しい輝きを発します。神聖な光を放つのです。刃を向き出しにし持ち歩くのは危険です。私は何とかこの魔剣を鞘に納め。本来在るべき姿。2つで1つの状態にしてやりたいと考えたのです」


「それで、侯爵様自ら旅に出られたのですか」


「そうです。荷物持ちだった者達が途中まで同行していたのですが、禁断の森を抜ける途中で逸れてしまい。手元に残ったのは僅かばかりの財産と魔剣だけでした」


「ベリョーザに辿り着いたその日に魔王の兵士達を討伐し。サスナーでは子供達の命を救い、足を再生させた。ジャガーウルフを4匹討伐し、神級品の素材を採集。……冒険者ギルドのランクを僅か13日でCに上げた。しかも討伐は御一人で達成されたとか……」


 意識障害を起こしている間に、いったい私はどうしたというのだ。人間離れたした事ばかりしているではないか。


「共同墓地の亡者達が大量に討伐されたことで、夜の墓参りが出来る様になったと、教会から報告が届いています」


「まさか、それもニノマエ侯爵様が絡んでいるのか」


「はい。内務卿閣下。ニノマエ侯爵様が御自身を囮にし亡者や人魂を集めては討伐し、集めては討伐する。夜になったばかりの時刻から明け方まで、それを繰り返していたのを、教会関係者が確認しております」


「見間違いではないのか……」


「ニノマエ侯爵様の……。イポーニィの正装をしておられるのは、侯爵様だけです。それに聖属性魔法で亡者達を一瞬の内に討伐していたそうなので、間違え様が無いかと」


「ニノマエ侯爵様。今の話は全て事実なのですよね」


 何なんだ私。私は私に恨みでもあるのか。……ある。私の人生にもう一度機会がチャンスがあるのなら、もう二度とあの家族の仮面を被っていた鬼畜生母娘とは関わりたく無い。


 強いて言うならば、私は、過去の私自身に恨みがある。


「確か、ギルドカードには履歴機能がありましたね」


 右袖からギルドカードを取り出し、内務卿へ手渡す。


「内務卿閣下。どうぞ」

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