記憶の書き換え再び
宜しくお願いします。
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ルシミール王国・マンダリーン王女領・南アルブス州・州都ベリョーザにある。マンダリーン王女の居城サテリット宮殿に、ローズ姫様とその親衛隊と共に帰還した。
湯船への招待状跡地から州都ベリョーザへ移動している時に知った。州都ベリョーザとサスナーは約160Km離れている。徒歩2時間で移動可能な距離では無い。サテリット宮殿から逃げ出した時は道なりに全力では無かったがそれなりに走った。記憶の部分的喪失と共に移動尺度距離感がおかしく成っていた様だ。
因みに、全力疾走し1時間で移動出来る距離を試したところ、1時間=約305Kmだった。
守衛達は、僕がエミリーを背負い2時間13分歩いてベリョーザに来たと解釈した。ベリョーザの4時の門から禁断の森へと延びる道を10Km程南東へ進み。10Km地点を中心に荷物を探していた。この国の道の事情では1時間に徒歩で移動出来る距離は約3~5Kmらしい。
因みに、散策のつもりで気を抜いて歩くと、1時間=約25Km。この国の人の5~8倍も歩くだけでも速い。皆の動きが遅いと感じていたのはこのせいだと勝手に結論付けた。
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サテリット宮殿内に準備された部屋で生活する様になってから1週間が過ぎた。その日、王都ラーヴルからマンダリーン王女の夫オルゲルト・パーリィ伯爵と、長男アーロン・パーリィが帰還した。
*****マンダリーン王女の家族構成*****
【名前】マンダリーン・ル・ルシミール(41)
【身分】ルシミール王国の第2王女
【役職】南アルブス州の領主
【名前】オルゲルト・ル・パーリィ(43)
【身分】ルシミール王国の伯爵
【役職】南アルブス州・州都ベリョーザの執政官
【名前】アーロン・ル・パーリィ(20)
【身分】ルシミール王国・南アルブス州次期領主
【役職】州都ベリョーザの執政官補佐代理代行
【名前】ローザ・ル・ルシミール(18)
【身分】第2王女の長女or伯爵令嬢
【役職】なし
【虹彩】琥珀 【髪色】銀 【髪型】長い
【体型】細身 【身長】160cm
【肌色】新雪の如く透き通った白
【特徴】良く通る澄みきった綺麗な声
【B】89(G) 【W】57 【H】83
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家族で苗字が違うのは、パーリィ伯爵家を存続させる為なんだそうだ。
「ニノマエ侯爵。俺の剣の何処がダメなのだ」
何処がダメ……う~ん。……それ以前の問題だ。どう説明すれば良いのだろうか。……どうする僕。
1.動きが悪い。動きが遅い。と、素直に伝える。
2.今の10倍速く動ける様に成れ。と、浴衣の補正分を考慮した数字を伝える。
3.強くしてやる。着いて来い。と、伝える。
4.剣のセンスが無い様だ。諦めろ。と、伝える。
5.腕時計。
何故、ここで5なんだ。論外だ。それに2は馬鹿にしていると思われてしまう。却下だ。却下。4は言ってはいけないと思う。パスだ。パス。この場にいる騎士団の団員よりはいい動きをしていると思う。思うだけで……気のせいかもしれないが……。
そうなると、1か3のどちらかだ。1を素直に伝えたとしよう。つまり何が悪い問題なのか改めて問われるだけだろう。つまり、言うだけ無駄だ。では、3か。否。アーロン次期伯爵様を強くする自信は僕には無い。駄目だ。全く良い言葉が思い付かない。どうする僕。
1.腕時計。
困った時は、腕時計の右側のボタンを押すと良い。何故かそれだけは記憶に残っている。
『ピツ』
視界に、【☆所持品☆】【☆能力☆】【☆称号☆】【☆状態☆】【☆再構築☆】と、文字が浮かぶ。
これで何をしろと言うんだ。……お金を渡して許して貰うか。イヤ、流石に無理だろう。何せ相手はこの国の殿下では無いが王位継承権を持った王族の1人。買収出来るとは思えない。……能力。称号。状態。……再構築。再構築。……再構築で良い言葉を構築出来ないだろうか。試してみる価値はありそうだ。
【☆再構築☆】をクリックする。視界に、【☆再構築・所持品☆】【☆再構築・能力☆】【☆再構築・称号☆】【☆再構築・再構築☆】【☆再構築・記憶☆】と文字が浮かぶ。
記憶を再構築か。この状況を改善する良い方法が記憶の中に眠っている可能性を否定出来ない。これだな。
【☆再構築・記憶☆】をクリックする。視界に、【★リセット―YES―★】【☆リセット―NO―☆】と文字が浮かぶ。
再構築ではないのか……。どういう事だ。記憶をリセット何かしたら大変な事になるだろう。
「ニノマエ侯爵。俺の話を聞いているのか」
いかん。思案し次期伯爵様の事を忘れていた。
「聞いています。今......
右手を上げ大丈夫大丈夫と合図を送る。右手は、【★リセット―YES―★】を払う。
≪ピィッ
▽▲▽世界停止中▽▲▽
「またこの世界かね。第2段階まで更新してるのに何だね」
≪パチン
「一 十四」
「えっ。あれ・・・あぁ~遂に、成仏の時が来たのですね」
「何を言ってるね。ベリョーザを魔王の手から無事に守り、桧葉の浴槽を入手したね」
「桧葉の浴槽をですか」
「そうだね。丸形桧葉浴槽。桧葉湯桶、桧葉湯椅子、湯葉の簀の子。ダイヤモンドも大量に手に入れたね。お金もそれなりに手に入れたね」
「では何故私はまたここに居るのですか」
「あたしが聞きたいね。更新は自動だがね。初期化は手動だったね」
「更新。手動。申し訳ありません。何の事やらサッパリ分かりません」
『そうだったね。取扱説明書を間違えたのはあたしだったね。更新したと嘘ついてこのまま戻すね』
「機能を使う時は気を付けて欲しいね。分かったかね」
「何がどうなっているのやら。取扱説明書を使用した所迄は覚えているのですが、それ以降の記憶がありません」
『・・・創造神にバレたら怒られるね。適当に誤魔化すしか無いね』
「一 十四。戻す前に、覚えるね」
「何をでしょうか」
「安心するね。覚えるといってもだね。記憶に記録するだけだね」
≪パチン
≪キュィィ―――――カタカタカタカタ カタカタカタカタカタ カタカタカタカタ
≪・・・更新完了
「うんうんだね」
「あのぉ~女神様。それで私はどうしたら良いのでしょうか」
「思うにだね。前の記憶を残したまま更新した事でだね。トラブったね。良くある話だね」
「思うに……良くある話なのですか」
「第2段階の更新が入った時に、人格の更新の辻褄が合わ無く成っただけだね。今の状態に人格だけを更新するね」
「人格の更新ですか。1つ質問しても宜しいでしょうか」
「なんだね」
「禁断の森の魔王アフグリエーフ子爵の亡者で、確か狂骨影戦士だったと記憶しているのですが、私はそれを討伐し、丸形桧葉浴槽、桧葉湯桶、桧葉湯椅子、湯葉の簀の子、ダイヤモンドを大量に手に入れ。お金も持っている。そこは理解しました。でも、どの様に討伐したのですか」
「取扱説明書を使用した後だね。聖属性魔法ヒールを亡者に使い亡者を殲滅したね」
「ヒールでですか」
「そうだね。ヒールでだね。ヒールは全属性の中で最上位の回復魔法だね。不死者には良く効くね」
『この男。本当に何も覚えて無いみたいだね。どういう事だね』
「あの場に居た若者達を私は守る事が出来たのですね」
「そうなるね。ただ何と言うかだねぇ~・・・あの場・・・規模の話で言うとだね。ベリョーザを守ったね。胸を張るね。そろそろ時間だね。あたしは神だね。忙しいね」
「お忙しい中、お呼び立てし誠に申し訳ありませんでした。覚えがありませんので、些か反省するに足りているのか微妙ではありますが謝罪致します」
「気にする必要は無いね。抜けた13日分の記憶は時系列で更新しておくね」
「ありがとうございます」
≪パチン
≪キュィィ―――――カタカタカタカタ カタカタカタカタカタ カタカタカタカタ
≪・・・更新完了
▽▲▽世界起動中▽▲▽
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▽▲▽世界作動中▽▲▽
......今・・・」
えっと、この右手に持ってる物って俗に言う剣って奴だよな。
「ニノマエ侯爵」
えっと、目の前の青年は確か……あぁ~思い出した。ローザ姫様の御兄さんアーロン様だ。私はここで何をやっていたのだ。思い出すんだ私。……はて、私が何故アーロン様に剣術を指南しているのだ。
「ニノマエ侯爵。黙っていては分からん。俺の剣の何がいけない」
思い出した。
「アーロン様は御幾つでしたかな」
「剣に歳が関係するのか」
「剣の道に年齢は関係ありません。ですが、何事も直ぐに結果を求めてはいけません」
成仏を待つだけの身の私が、何か極めた訳でも無い私が、偉そうに語って良い物なのだろうか。
「俺は幼少の頃より剣を学び、20歳にして王都の王立士官大学校の王国軍上級士官科剣戦技クラスを首席で卒業。ルシミール王国大剣騎士の称号を持っています。つまり、20歳にして騎士という事だ」
俗に言うエリートって奴だな。この手の机上の空論を語る者を私は沢山見て来た。誰とはあえて言及するつもりは無い。税金によって養われる有難くも尊いお仕事。この若者は今まさにその類に陥ろうとしている。……仕方が無い、ここは自分自身を棚に上げ、上から行くとしよう。若者の為に一肌脱ごうではないか。
「ですが、アーロン様。貴方は弱い。それが今の状況です。己より弱い者達の中で1番に成ったに過ぎなかったのでしょう。冒険者の中にはアーロン様より剣戦技に長けた者はごまんとおります」
冒険者をやっていた時の記憶は時系列で結果しか覚えていない。だが、この位の嘘は愛嬌だろう。
「騎士が冒険者の剣士に劣ると言いたいのか」
「はい。冒険者ギルドランクCの私を相手にこの状況なのですよ」
「グググ……」
「悔しいですか。悔しいですよね。若者が100人以上で何も出来なかったのです。アーロン様もそうですが、騎士団の皆さんも走り込みや素振りからやり直した方が良いと思います。1ヶ月後に成果を見て差し上げましょう」
「ニノマエ殿。アーロン様に失礼ですぞ」
「副団長の……えっと何でしたっけ」
「ダスカ―です」
「ダスカ―君。君は確かにこの中では一番だ。だが、残念な事にこの中ではの話だ。アーロン様は、騎士団の団員ではないのでしたね」
「アーロン様は、南アルブス州の州軍の副司令官。騎士団はその下の組織です」
「その下の組織の副団長よりも劣った者が、王都では騎士を名乗れる」
「アーロン様を侮辱する気ですか」
「これは侮辱ではありません。事実を申し上げただけです。……1ヶ月後に成果を見ると言いましたが、1つ訂正します。1ヶ月後に、ダスカ―副団長にアーロン様が勝つ事が出来たなら、アーロン様の剣戦技に足りない所を指摘しましょう」
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アーロン様と騎士団の団員達の睨む様な視線を背に訓練場を後にし、部屋へ戻ると、何故かローザ姫様が居た。
「ローザ姫様。私の部屋で何をされているのですか」
「ニノマエ侯爵様は、サスナーでも偉業を成し遂げられました」
「偉業ですか」
私の部屋で何をしているのかと聞いたつもりなのだが。
「ジィラーフ男爵家の愛玩動物が子供達を襲い多数の重軽症者を出したそうですね」
えっと、確か……サスナー聖人教会で……あぁ~なるほど。確かにそんな事をした覚えがある。
「治療する者が不足しているという話を聞き手伝える事が無いか尋ねた日の事です」
「そして、子供達の命を救い。失った足を再生させた」
足を再生させただと、……そんな事をどうやって、……あぁ~ヒールを施した瞬間。女の子の足が生え始め復元したのを思い出した。あれは確かに再生。
「その様です。ですが、ローザ姫様がこの部屋におられる事と、足が再生した事は別の話です」
「その通りです。私はニノマエ侯爵様が神聖なる人ドゥ―シャーだから一緒になるのではありません」
ドゥ―シャー。はて、ドゥ―シャーとは何ぞや。
「ローザ姫様。ずっと気になっていた事なのですが、ドゥ―シャーとはいったい何ですか」
「えっ……。御存じ無いのですか」
「記憶がおかしい事になっている様なのです。ルシミール王国へはどの経路で来たのか。サスナーにどうやって行ったのか。ローザ姫様とお風呂で再会した記憶も曖昧です。そのせいでド忘れしたのかもしれません」
実際65歳の脳だ。ド忘れしてもおかしくは無いだろう。……序でだ。イポーニィ、侯爵、成仏。聞かれて面倒な事は、記憶がおかしな状況にあるとして有耶無耶にしてしまおう。
「それで、あんな森の中で入浴されていたのですね。突然失踪したのも……きっと、ベリョーザや私を護る為に使用した。強力な聖属性魔法の魔力の反動なのですね。自身を犠牲にして私を護ってくださったのですね」
何だか良く分から無い。だが、良い方に勘違いしてくれているのでそのままにしておく事にしよう。
「ドゥ―シャーでしたね。ドゥ―シャーは、神聖なる魂を持つ者、聖属性の魔法の中でも【ヒール】【キュア】【リカバリー】を扱える者の総称です。別名『風の教会』と呼ばれています」
「風の教会ですか」
「はい。ドゥ―シャー様御1人で、聖人教会の恩恵を人々に与える事が可能です。それ故、風の教会。動く教会と呼ばれています」
「なるほど。ありがとうございました。それと、もう1つ質問があります。どうしてここにおられるのですか」
「ダメでしょうか」
ダメな訳は無い。だが、18歳の娘さんが、65歳おっさんとはいえ男の部屋に1人で居るのは良く無い。考えるだ。傷付けず柔らかく伝える方法を……
ありがとうございました。




