表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

その電車の行き先は?②


ま、いっか。

次で降りてまた待とう。……にしても、今日も疲れたなぁ。ふぁ〜、あー眠い。

ダメダメ、すぐ降りなきゃいけないんだから、起きて、、な、きゃ……zZZ



「あらあらあらぁ〜!どうしましょっ‼︎」


プラチナブロンドのウェービーヘアに、グラマラスでしなやかな身体。エメラルドグリーンの瞳を持つ女性――女神フリディッシュ――は驚いていた。


「どういう事かしら。何故ココに徒人(ただびと)が居るの?

変ねぇ。普通ならこの乗り物自体、認識されないはずなのに。」


フリディッシュは文字通り頭を抱えた。

魔素も何もない異世界の人間(むすめ)が、徒人には認識さえ出来ないはずの転移装置(のりもの)に乗り、居眠りまでしているのだ。

非常に由々しき事態である。

元来あまり考える事が得意ではないフリディッシュが、思考を巡らせる。


「どうしたらいいの、、まずはこの子を起こしてみる?

――いえいえダメよ。急に女神(わたし)が現れたらびっくりするわ。


うーん、うーーーゔん。っそうだわ!そう、神託よ!

何で紛れ込んだかは知らないけど、これも何かの縁よ。そうに違いないわ!でなきゃ()()の人間が()()の世界に来る理由(わけ)がないもの!」



女神は気付かない。自分の世界に存在しない異世界の娘が、自分が女神であると知り得るわけがない事に。

従って、娘を起こしても、多少は驚いても「ああ、親切な乗客が起こしてくれたのか」程度にしかならず、パニックなど成り得ない。

もっと言うならば、異世界(こちら)に到着する前に、彼女を眠らせたまま、こっそり引き返せば良かったのだ。

むしろ、目が覚めたら異世界でした。え?何、神託?女神様?何それ、ココどこ。の方が確実にパニックである。

しかし女神は気付かない。

何故なら思考する程の頭脳を持たないからだ。

他の神ならば、直ぐに引き返した事だろう。

だが、不運にも彼女が乗り合わせてしまったのは、アホの子フリディッシュだった。


女神は神託の内容を考える。

わざわざ異世界から連れて来なければならない理由を。

そして仕方ないかと、諦めてくれる理由を。

なかなか思い付かないまま時間は過ぎ、もう間もなく、電車は異世界へと到着する。


「あ゛、やば。」



車窓から柔らかい陽が射し込む。

光は女神と彼女を包み込んだ。



「ぅん…あ。寝ちゃってた。降りなきゃ。

――あれ?ココどこ、、」


彼女の目の前には、駅のホームも駅名が書かれた看板もない。

あるのは、拓けた土地に生い茂る草と、小さな花々。

空には燦々と輝く太陽に。並んで空を舞う色鮮やかな小鳥。

そして彼女の周りを囲うように、ふわふわと浮かぶ淡い光の粒。



「え゛ぇ〜っと、夢、覚めてない?

何だ夢か。でもそろそろ起きないと電車が車庫に入っちゃうよね。よし。」


ぐっと眉間に皺を寄せ、気合いを入れて起きようとする。

―が、なかなか起きられない。

もちろん、彼女の目は覚めている。気合いなど入れても、何も変わりはしない。

すでに起きているのに、起きようとしても意味がない。当たり前である。起きているのだから。


「……。」

うそ。私こんな短時間で深い眠りに入っちゃったの?

でも着いたら普通、駅員さんが起こしてくれるよね。

じゃあ、私が長く感じてるだけで、実際は2・3分しか経ってないのかな。

よっぽど疲れてるのね。こんな草原が夢に出てくるくらいだし。

癒しが足りないんだ、きっと。

うん。あ゛〜、緑っていいわぁー。癒される〜。


彼女は柔らかい草の上に寝転んだ。

雲ひとつない空は澄んでいて、時おり涼しい風が頬を撫でる。

先程から空を舞う2羽の小鳥は可愛らしく、優雅で。ふわふわ浮かぶ光の粒も、心地良い。

彼女の心はいつになく穏やかだった。


はぁ〜、出来ればまだ起きたくないな。

こんなに心が休まるのはいつぶりだろう。


「もうちょっとだけ、こうしてたいなぁ、、、」


「あらあら、ココが気に入ったの?嬉しいわぁっ!」


「――っ⁉︎」


ガバリと起きて、声の主を探す。


誰っ?周りには誰も居ないのにっ!


キョロキョロと周囲を探す彼女に、女神はふふっと笑んだ。


「私はココよ。可愛い異世界の住人さん?」


ニコニコ顔でフリディッシュは話しかけた。


――さっきまで姿が見えなかったのに!

それに凄い綺麗な女性(ひと)。ヨーロッパの人かな。


というか見た事もない人がこんなに鮮明に夢に出てくるなんて。

ほんとに私、どうしたのかしら。今日。


「フリディッシュさま、この人間、なんか呆けてるよ。」


光の粒が女神に話しかけた。


「まあ、困ったわ。大丈夫?えっと――

そういえば名前を知らないわ。

ねーぇ?貴方のお名前は何て言うのかしら。、、聞こえてる?」


「おーい、人間。フリディッシュさまに聞かれてるぞ?」



兎にも角にも、東雲 春(しののめ はる)(22)は異世界に降り立った―――…

チュートリアルがなかなか終わらない主人公ですね、、、。

次回更新ではファンタジーに入る予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ