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ソラ君とウチのプレリュード第37番  その時


『ソラ君、血! 口元から血が出ているじゃないか』

 あ、レインさん……ボクどうしちゃったんでしょうね? なんか仕事と任務続きで体の疲れがとれず体調もよくないとは思ってはいたんですが、まさか、ここまでとは。

 ここに思っている事を読み取ってくれるレインさんがいてくれて心底よかったと感じた。さっきから声を出そうと思っても出せないのだ。

『調子に乗ってばかりでソラ君の異変に気づかないとは……ウチはパートナー失格だ!』

 無敗だったレインさん伝説もここで初黒星でしょうか? 自分の不安をかき消すためか、つい冗談を思いついてしまう。

『冗談いってないで、早く助けを呼びなきゃ』

 いま、そうします。あんまり心配しないでください。レインさんがどっしり構えていてくれないとボクまで弱気になってしまいそうですから……。

 ボクがスマホに手を伸ばしたと同時くらいのタイミングで入り口の扉が開き「ソラさん昨日はありがとう。あなたのお陰で長年の胸のつかえが取れたわ。ってどうしたのその血」とアナマリアさんが血相を変えてボクの前まで小走りでやってきてくれた。



 ボクの前でアナマリアさんが心底心配した顔をしている。ボクはそれほど酷い顔をしているのだろう。

『丁度いいところに来てくれた、医者を! 医者を呼んでくれ、アナマリア君』

「わかってます。私が責任をもって病院まで連れて行きます。あなたはこれで口元を拭って」

 そう言ったアナマリアさんからシルクのハンカチを受け取るが、とても高価なものにみえて一瞬使用するのをためらってしまう。するとアナマリアさんがボクの手からハンカチを取り上げ、口元の血をやさしく拭ってくれる。

「こんなものいくらでも汚してかまいません。さぁ、私の肩に掴まって」



 その後ミミちゃんが応援で呼ばれ、二人に両肩をささえられホテルの入り口まで移動した。

その間アナマリアさんはスマホでどこかと連絡を取っていたが、意識が朦朧としだした時と重なっていたので何を言っていたのかはわからなかった――



 気づいた時には既に病室のベッドの上で腕には点滴を付けられていた。まだ、体調が悪いみたいだ視界もぼんやりするし、やっぱり声が出せなかった。



 ボクの体はどうなってしまったのだろうか。

 ボクの存在意義である歌声を失ったらどうなってしまうのだろうか。 

 レインさんは心配いらないといってくれたし、あの時はそれで納得できた。けれど、唐突にこういった状況に置かれた今、やっぱり恐かった――



 そのまま療養する事になったボクは二日目の公演は出演することが出来ず、日本公演をベッドの上で仲間の歌を聞きながら終えた。その間レインさんが付き添っていてくれたが、ずっと黙っていたままで逆にこっちが心配になってしまう。いつものように軽いノリで接してくれたほうがボクも元気が出るのに、ボクの気持ちもレインさんには届いているはずなのに今日は本当に静かで、一言も話してはくれなかった。



 『エオル』のメンバーは日本で短期間療養することになったボクを除いて、次の公演場所へと向かっていった。ヒナがなかなかボクの元から離れたがらなかったが、体調に問題の無いヒナまでツアーからいなくなったら他の人にも迷惑が掛かるし、彼女を待ちわびるファンにも悪い。レインさんがいるから『大丈夫』と筆記で伝えたらお見舞いのデザートを投げつけられてしまった。ごめんねヒナ。



 側にいるのに言葉で思いを伝えられないのが今は本当につらいんだ――





 

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