ソラ君とウチのプレリュード第22番 悪意と群集
『あの巨体だ、パワーはあるだろう。まったく情報がない中であんなのと闇雲に戦うのはまずい、フランスの滅却師から情報が来るまで耐えるんだ』
わかりました!
スパイトと対峙する。
ボクやヒナの二倍以上の背丈がある。いくらなんでも大きすぎる。これは本当に人間に寄生したスパイトの姿なのだろうか?
『そのはずだよ。大きさに惑わされちゃダメだ。あれには必ずからくりがあるはずさ』
わかりました。探ってみます。
レインさんが言った事なら信用できる。いつだって頼りになる百戦錬磨のスーパー妖精だから。
「ヒナ! こっちで注意を引き付ける。その隙に一般人を安全な所へ避難させてくれないか?」
「わかった、やってみる」
観光地とはいえ、いくらなんでも一般人が多すぎる。
戦う術を持たないものを守りながらの戦いは困難を極める。
被害が及ぶ前に安全な場所へ退避してもらうのが得策だ。
ヒナと別れたボクは「こっちだ! かかってこい」と大声を上げて挑発する。
すると思惑通りに『スパイト』はこちらに進行方向を変え向かって来た。
図体が馬鹿でかいため、動きは鈍い。こういうところはセオリーどおりで安心した。
あとはヒナがうまいことやってくれていれば――
「ここは危険です。非難してください」
私は必死になって安全そうな場所を探し、そこへ避難しくれるように皆を誘導していく。
「ねぇ~あのこ。すっごいかわいくない? っていうか誰かに似ているような」
「わ、本当だ。顔ちっちゃ~い。かわいい~」
「ねぇ、これってもしかして映画の撮影かなにかじゃない?」
「ああ、そうかも。人通りの多いところでやったら宣伝効果大きいし」
「そうじゃないかと思っていたんですよ。あんなの実在するわけないし、いやぁハリウッドの特殊メイク並みの出来栄え」
「写メとってネットにあげようぜ。おれ自撮り棒持って来てるし」
非日常的な出来事を目の当たりにして皆、現実逃避をしてしまっている。
このままじゃまずい。
「皆さんこれは映画の撮影ではありません。早くこちらへ避難を!」
これだけの群衆の中でも私の声はよく通った。日頃学園で訓練をつんでいる成果が出ている。
真剣な表情で必死に叫び、経路を指し示すことで渋々だが言うことを聞いてくれる人が出だす。
それを見て少しホッとし一息つく。
しかし、そんな私の言うことも聞かず、一人の女性が前に進み出てスマホを構える。
「記念に撮っちゃおっと。えいっ!」
パシャっ
そのスマホから発せられたフラッシュを契機に、堰を切ったように好奇と無遠慮なフラッシュが私と『スパイト』に集中する。
もう! そんな事してる場合じゃないでしょ。フラッシュとシャッター音で『スパイト』が興奮したらどうすんのよ。
スパイトの危険性を知っているからこそ、流石に怒りがこみ上げてくる。
だけどそれじゃダメだ。
ここは落ち着くため息を長く吐き、落ち着くことに専念する。
私がしっかりしないと被害者が出てしまう。それだけは絶対に避けなきゃ。
今私に出来ることは――
正攻法しかない!
「話を聞いてくださーーい!!!」
学園で鍛えた自慢の肺活量。
その成果か、今年一番の声が広場に響き渡る。
ただの大声ではなく、周りの人間に危害が加わって欲しくないという気持ちをブースターに込めて発声したため皆撮影をやめ避難を再開してくれる。
私の仕事はここまで。あとはソラがなんとかしてくれるはず。
「う、うわーーー」
突然前方にいた観光客風の男性が悲鳴を上げる。
体は私のほうを向いているが、『視線』はもっと上のほうを見ていて――




