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ソラ君とウチのプレリュード第21番  レベル3


「うわ~すっごい眺め! 夜が楽しみ~」

 ヒナが大声を上げて叫ぶのも無理はない。

 ゼクストラベルが用意してくれた部屋は最上階でパリの街並みが一望できる素敵な部屋だった。

「ヒナ、約束通り買い物いこうか」

 煮詰まっているアナマリアさんの問題は一端置いて、いつもフォローをしてくれるヒナへの感謝を行動で示ことにした。

「うん? 無理しなくてもいいよ。疲れているでしょ。生活用品とかなら私の貸してあげるし」

「大丈夫、疲れていないよ。部屋でじっとしているよりヒナとパリを観光したいな」

「わ、わかったわよ。ソラがそこまでいうのならしょうがない。今から準備するから少しだけ待っていて」



 荷物を持ち隣の部屋へ移動していくヒナを見送ると、時間をつぶすためにTVをつける。

 つけたはいいのだけれど……。



 ガシャーン、ドタバタと騒々しい。

 「これじゃなーい、どたどた、こっちのがかわいいかな、バサっ、こっちかわいいけど、ちょっと狙いすぎかな」


 これは、まだ必要ないよね。さすがに、うん。

 「ああぁ! 髪が、ぐっしゃ、ぐしゃ。早く直さないと」

 ヒナの声が丸聞こえ。

 女の子はやるべき事が多くて大変だよねぇ、普段女装しているボクには解る。



 ヒナに少しといわれてから一時間後、ようやくヒナが戻ってきた。

 その瞬間、持っていたTVのリモコンを落としてしまう。

 想像以上に美しかったからだ。

「きれい……」

 無意識のうちに感想が口からもれる。

 元々幼さが残る顔立ちをしているが、少し化粧をし、おしゃれな私服に着替えると、大人の雰囲気が漂いだす。

 その普段とは違った姿が魅力的で、この距離からでも目をあわすのが気恥ずかしい。

多分、顔も耳も真っ赤だろう。



「あはは、そういう反応されるとこっちもうれしいかも……」

 照れて男子小学生みたいな反応のボクを見てヒナまで顔と耳を真っ赤にしていた。

「ヒナ、そろそろいこっか……」

「う、うん……」



 エレベーターの中も押し黙ったままのボク達だったが、いざパリ市街に出て、買い物が始まると自然といつも通りになっていた。

 最初はボクの生活雑貨や服の買い物に付き合ってくれていたのだが、一通り揃えると、そこからはヒナの独壇場だった。

 少しでも興味がわいたお店には全て入店し、気に入った服の試着をし、迷った時はボクにアドバイスを求めてきた。

 お店を回れば回るほど増えていく荷物。ボクが両手で持ちきれなくなったころようやく買い物は終わった。



 終始ヒナが楽しそうに買い物をしてくれていたのがボクにはうれしい。両手の荷物は重いけど、普段の感謝と一日中ボクをドキドキさせてくれたお礼だ。



「もう少しだけ時間あるね。荷物持ち続けて疲れたでしょ? ちょっと休憩してから帰ろうよ」

「そうだね」

 近くに雰囲気のいいカフェを見つけ、そこで休憩することにした。



「いやぁ~いっぱい買っちゃった」

 座ったボク達の背丈以上の高さになった無数の戦果を見て、苦笑するボク達。

「だねぇ。夢中になっているヒナを見ているのは楽しかったよ」

「そりゃ夢中にもなるよ。いざ公演が始まっちゃうとなかなか自由な時間は取れないし、買えるときに買っておかないと」

 二人でコーヒーと、木苺のケーキを頼み、談笑しながら食べる。なんだかこうしていると恋人同士みたいだ。女装していなければ回りの客もそう思ってくれるだろう。



『ソラ君。デート中にすまない』

 むぐっ。

 いきなりレインさんに頭の中で声を掛けられ飲んでいたコーヒーを吐き出す。あぶねぇ~。

 咄嗟に横を向いたのでヒナにはかからずにすんだ。

 たった一つのミスで今日一日が台無しになるところだった。



 で、レインさん一体どうしたんですか? まさか、何か不味いことでも?

『うん、そのまさか。いきなりレベル三の『スパイト』が観測された』

 え? このパリにですか?

『そこは別段驚くところじゃない『スパイト』は世界中どこにでもいるからね。でも、今回不味いのはこんな人通りの多い場所で、突如レベル三が現れちゃったことさ』

 突如って、言葉通りいきなり現れちゃったんですか。そんな現象ってありえます?

『あるさ。現に今そうなっているだろ。このまま放っておいたら大惨事になってしまう。フランスの滅却師本部に連絡して、それまではウチ達が被害を最小限に食い止めるよ』

 わかりました。

 でも、フランスの滅却師本部にはどうやって連絡すればいいですか? 連絡先知りませんが。



『もうしている。ウチを舐めてもらっちゃ困るよ。あ~あ~コホン。ボンジュール――』

 突然フランス語でなにやら連絡を取り出すレインさん。

 本当になんでも出来ますね……。

 レインさんがやる事なら今後何がきても驚かない自信があります。



「――ねぇ、ソラ。さっきから上の空だけど、どうしたの?」

「わっ」

 目と鼻の先にヒナの顔があって驚いて席から立ち上がる。

「いや、どうもしてないよ。それより大変だ、ヒナ!」

「ごまかした……」

 周りに聞かれると、不味い話なのでヒナの耳元に手を添えて小声で話す。

「いや、本当に大変なんだ。レベル三の『スパイト』が現れたらしい」

「えっ? 本当? でも、なんでそんなことわかったの」

 う、確かに今の流れでわかるのは不自然すぎる。どう説明したらいいんだろう。



『緊急事態だ、時間が惜しい。ちょっとその子の手を握って』

 レインさんにいわれるままヒナの両手を握る。

「ちょっ! またごまかす気でしょ――」

【あーあー、聞こえますか? ヒナ君にも聞こえるようにただいま多重通信でお送りしています。ウチはレイン、ソラ君のブースターをやっている妖精さ】

 ヒナの反応を見る限り、レインさんの声はしっかり聞こえているみたいだが何か言いたそうな顔をしてこちらを見つめてくる。

 あんまりよさげな感情ではなさそうだ。



「ブースターの妖精? なにこれ? 頭の中に直接声が聞こえてくる。私のブースターにはこんな機能ないよ」

【事態が事態なので、ウチにはそういう力があるんだと割り切って欲しい。話しを続けちゃうけどいいかな?】

「あ、はい」

威勢のいい返事とは裏腹にちらちらとこちらを覗く表情は不満気だ。



【ソラ君が言ったようにレベル三の『スパイト』が突然現れた。ウチの伝でフランスの支部に応援を要請したけど、ここに到着するまで時間がかかるらしい。それまでソラ君と君で時間を稼いで被害を食い止めて欲しいんだ。出来るかい?】

「やってみます」

 そういい切ったヒナの瞳には、さっきまでとは違って強い意志が宿っていた。やっぱりヒナは頼りになる。



「きゃー」

 大通りから女性の悲鳴が聞こえる。その方向へ素早く視線を巡らせると、人間の体積を超越した人型の何かが空を空しく見つめていた。

 あれがスパイトで間違いないだろうけど、幾らなんでもでか過ぎやしませんか?

【長い事ブースターをやってきたけど、ウチでもこんなでっかいのは見たこと無いな】

 大きさには圧倒されたけど、だからと言ってボク達スパイト滅却師のやることはかわらない。

 人々の平穏を守るため、そしてボク達の存在意義――



【この多重通信モードはエネルギーを大量に消費してつらいから一端解除する。ヒナ君気をつけて】

「ヒナいくよ!」

「うん!」


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