ソラ君とウチのプレリュード第18番 ウチ、フランスへ舞いおりるっ!
『いやっほーい。ソウルカントリーにウチは帰ってきたぞー』
ハイテンションな叫びが脳内を駆け巡る。
相当気分がいいみたいだ。
ソウルカントリーって、フランスがレインさんの生まれ故郷なんですか?
『いや? 違うよ』
誰もいないところでずっこけてしまい、それを見たエオルのメンバーに不振がられるが愛想笑いで乗り切る。
もしかしてレインさんが目覚めたのってフランスが好きなだけだったりします?
『そうだよ? 何か悪いかい? ヘイヘーイ』
なるほど、無駄にハイテンションなのも納得がいく。
『フランスはねぇ、ユキが歌手のころ何度も一緒にきたけど最高の場所だよ。料理はおいしいし、おしゃれで素敵な女性もいっぱい。それとウチの知識欲を満たす美術品や建造物も多くて、すっかり嵌ってしまったのさ。時間が空いたらフランスグランドマスターのウチがお勧めスポットを案内するよ』
そんな事言って自分がいきたいところに連れて行くためなんでしょ?
『ぎくっ』
まぁ、いいです。
レインさんには普段から世話になりっぱなしですからね、一緒にいきましょう。それだけ自信があるなら連れていかれる場所に外れもなさそうですし。
『おお~話が早いねソラ君。そうしたらいまのうちに観光プランでも練っておくよ。震えて待つがいい、ふふふ』
あはは、楽しみにしておきます。
『う~ん、やっぱり最初はあそこのレストランは外せないよなぁ――』
既に聞いてない……本当に楽しみにしていたんだな。
「――ラ、ソラったら!」
「うわ」
気づくとヒナが怪訝な顔をして目の前に立っていた。
足元にはキャリーケース、その上にモノグラムのボストンバッグを乗せている。ジェット機を貸切っていただけあって荷物を受け取るのが早い。
「なんかボケーっとしていると思ったらいきなりずっこけたり、何も無いところで突っ込みいれていたり……大丈夫?」
レインさんと話しているときって傍から見たらそんな怪しい人になっていたのか。
注意しておこう。エオルのファンの目がどこにあるかわからないし。
こんな事でみんなに迷惑がかかったら申し訳ない。
「大丈夫だよ。ところでどうしたの? もう移動するのかな」
「まぁそうなんだけど。えっとね、ホテルに着いたら少し自由時間があるらしいんだ」
何か言いにくそうに体をくねらせモジモジしている。
「ソラ、荷物まったく持って来てないでしょ。一緒に行って必要な物を買い揃えちゃわない?」
飛行機での出来事を思い出す。
街でなにかを企んでいるのかも?
「それは『エオル』式ルーキーヘイジングではない?」
「だからぁあれは悪かったってば、そんな警戒しないでよ。私はソラと一緒に買い物に行きたいだけなのに……」
うう、そんな顔をされたらこっちが一方的に悪いみたいじゃないか。
あんな恥ずかしい目にあったら誰でも警戒するよ。
『子供じゃないんだから意地悪なんかしてないで行ってあげなよ、ソラ君。こんな可愛い女の子を悲しませちゃダメだ』
レインさんまで……男はつらい。
でも、ヒナの悲しんでいる顔は見るのはやっぱりつらい。
それにここは意地をはるところではないか。
「ごめんヒナ、少しいい過ぎた。一緒に買い物いこう。フランスの土地勘なんてまったくないから全部ヒナのお任せになっちゃうけどいい?」
「うん! 任せて」
はじける笑顔を見せてくれるヒナはやっぱり最高だった。
荷物をゼクス社が用意してくれたバスに詰め込み、乗り込む。
シャルル・ド・ゴール空港を抜けてパリ市内をパスが行く。車窓から覗く建物はどれもこれも、調和が取れており見ているだけで惚れ惚れする。大都市の大通りにありがちな、目立つことに心血を阻止だ様な華美な電飾や看板が見当たらないのも個人的に好印象。ボクもフランスが一気に好きになった。
いつまでも見飽きない街並みを眺めていると、目的のホテルに到着していた。
夢中になっていると時間がすぐ過ぎる。
バスをおり、ホテルの入り口へ向かうと、なにやら人波がすごいことになっていた。いつもの取材陣やカメラマンみたいに厚かましさを感じないので、きっと地元のファンの方々であろう。
係員にギリギリのバランスで制止させられていたその人波が、こちらへ押し寄せてきた。
世界の歌姫である『エオル』のファンだった。
「キャーーーアナマリア様」
「こっち向いてー」
ファンの移動速度は凄まじく、あっという間にもみくちゃにされる。
さっきまでのお行儀のよさはどこへいったのだろうか……。
そんな騒動の中、一際ファンを集めていたのはやはりアナマリアさんだった。
もみくちゃにされながらも快くサインをしたり、持ちきれなさそうな大量の花束を受け取ったり、きさくに一緒に写真に写ったり。
ボクに対してはありえない。 あふれんばかりの笑顔でファンに応対していた。
ボクのお尻をつねったり小言をいったりするだけあって、ファンに対してのサービス精神は本物みたいだ。
その際、意図はわからないけどアナマリアさんが一瞬だけこっちを見ていることに気づく。
真顔でのその視線は、すぐにファンへの笑顔に戻ったけど。




