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ソラ君とウチのプレリュード第15番  学園長の憂鬱

 学園長室にいるユキは大量の仕事に追われ、頭を抱えていた。

 レインに頼り切ることを止め、ようやく一人での仕事が板について来たころ、世界ツアーの打ち合わせや銀行への融資の交渉など一人では抱えきれない量の仕事を抱えて込んでしまっていたのだ。



 パニくったユキは何もかも捨てて旅に出てしまいそうになる一歩手前まで追い込まれていた。以前ならこういったときはレインのお陰でどうにか平常心を保つのだが、そのレインがいない。物に当たったり酒を飲んだりすることが増えた。

 学園の経営不振は、元はといえば自分で蒔いたタネなのだから誰にも頼ってはいけないと思い込む。こういう時こそレインや他の第三者に頼ればいいのだが、それができないのがユキ最大の欠点であった。学園を任された時に最初からレインに頼っていれば学園の経営が傾くこともなかったのだ。経営に向いてないのかも? いまさらそんな事を考えた所で問題は解決しない。

 


 そんなユキがプライドを捨ててレインに助けを求めた時には、学園の経営は首の皮一枚といった惨状だった。自主再建は無理と判断したレインはすぐに他社に再建の手助けを求めた。その際、イの一番に手を差し伸べてくれたのがドイツに本社を置き、たった一代で航空業界世界一位にまで上り詰めた『ゼクス航空』と子会社の旅行会社『ゼクストラベル』であった。



 そして現在、ゼクス航空は学園と世界ツアー興行の独占契約をし、各都市とのマネージメントやプロモーションも一手に引き受けることになった。ゼクス社の助けが無ければとっくに学園はなくなっていたであろう。そのゼクス社との打ち合わせが今日もある。ユキは眉間に寄った皺をほぐし、ゼクス社の営業を待った。



「それでは学園長、こちらが今年の世界ツアーの日程の詳細になります。ご確認下さい」

 ぺらぺらと用紙を捲り、中身を確認するユキの顔がコロコロと変わる。

「スペイン、イタリア、日本、ドイツ、フランス、アメリカにオーストラリア、それにブラジル。ひゃ~、今年はスケジュールも移動距離もきっつきつですね。こりゃあの子達も大変だ」

 


 自身も十数年前にエオルのメンバーとして世界ツアーを経験してきただけに、このスケジュールの過酷さが手に取るようにわかってしまう。 

「それだけ国立ローズブルク音楽学園の皆さんの人気が凄まじいということです。実力もさることながら皆さんとてもお美しい。一人ひとりに熱狂的なファンがいますからね。プロモートする私たちも仕事が楽で助かります」

 さわやかな笑顔で説明するゼクス社員に、一抹の不安を感じてしまう。

 なんでだろう? ゼクスとこのままいい関係を気づいていければ、経営も安定し負債を無くす日もそう遠くないだろう。



 今は学園を再建しなければならない、ならないがこのまま生徒達に頼りっきりでいいのだろうか? ゼクス側はビジネスだからこちらを酷使する事をいとわない、それでいいのか?

 もっと自分に出来ることはないだろうか。


 

 何でもいい、この状況を変えられる何か、何かを――



 一人で苦境に立たされると、とたんに弱気になり視野が狭くなってしまうのがユキの弱点だった。

 ダメだ……やっぱりレインがいないと何も決断出来ない。

 こうやって彼女は袋小路にはまってしまう。


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