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一日目

 2016年8月23日、17:36発やまびこ215号に乗るため東京駅に向かう。まずは在来線内コンコースにある「駅弁屋 祭」で食料を調達、迷った末に「老舗の味 東京弁当」を購入。ついでにビールと日本酒も求める。

 新幹線の自動改札を抜け、東北新幹線22番線ホームに上がる。しばらく待つとこれから乗車するやまびこ215号が上野方から入線してきた。しかしすぐには車内に入れない、東京着の乗客を降ろした後に車内清掃を行うからだ。夏制服であるアロハシャツを纏った清掃員が手際よく車内を掃除をする光景は東京駅ではすっかり定着した。結局乗車できたのは発車2分前、東京を出たら西へ一直線の大動脈東海道新幹線とは違い、北へ西へと血管のごとく分かれるJR東日本側はいつも慌ただしい。

 自分の席に着き荷物を棚に置いて一息ついたところで発車時刻になり、やまびこ215号は静かに東京駅を離れた。進行方向左側にある窓側の座席からは、神田、秋葉原の繁華街が見えたと思うや否や地下に潜り上野に停車。通路側の座席に誰も座らないことを確認し、列車が再び地上に飛び出したところで缶ビールを開け、「東京弁当」を広げる。この弁当は浅草今半の牛肉たけのこ、人形町魚久のキングサーモン粕漬け、築地青木の玉子焼など、文字通り東京の老舗の味を詰め込んだ弁当であり、これ以外にもおかずが豊富でビールが進む。ごはんも秋田県産あきたこまち使用でおいしい。ちなみに値段は1650円、この先しばらくは買えないだろうなあ、と思ってしまう値段だ。 

 車窓から左手にロッテ浦和球場を見えると大宮に到着。ここでも隣の座席に座る乗客はいない。大宮まで来ても乗ってこないので、この先も通路側の指定席に乗り込む利用者はいないと踏む。ちなみにこのやまびこ215号は新幹線なのでもちろん「特急」なのだが、終点の仙台まで各駅に停車する。途中駅では速達タイプの「はやぶさ」「はやて」はおろか、同じ名前で途中駅を通過する「やまびこ」にまで抜かれてしまう。なので大宮から先はこれ以上は混雑することなく、終点の仙台まで乗り通す客も少ないと予想した。時間のかかる各駅停車の「特急」であるが、急ぐ理由もなく、ネット予約では一番安い35%引きだったのでこの列車を選択した。

 弁当を食べ終わった頃には上越新幹線と別れ、東北本線と東武日光線との交点である栗橋を過ぎていた。ここから外の雲行きが怪しくなり、日没と重なり一気に暗くなる。たちまち大粒の雨が窓を叩きつけ、分厚い雲に覆われたゲリラ豪雨の中を列車は突き進んで行く。

 ビールも飲み終え、日本酒に手を出している間に小山、宇都宮と停車。日はとっぷりと暮れ、雨も小降りになってきた。次の那須塩原に到着する頃には車内は空席が目立つようになった。酒のつまみが切れたので車内販売を物色、興味本位でホヤの燻製を購入し、何気なく製造元を見るとこの旅の目的地でもある宮城県石巻市と書いてある。石巻がホヤの産地であることをここで知る。ホヤの燻製をつまみながら富山の満寿泉、そして新潟の吉乃川を流し込む。新白河、郡山と過ぎ、ほろ酔い気分の中すでに漆黒となった車窓をただぼんやりと見つめる。列車は黙々と闇の中をばく進する。

 福島到着時の記憶がなくなり、その先の白石蔵王ではっと目が覚める。雨は降っていないようだ。終点の仙台まであと一駅、はやぶさなら一時間半で行くところをやまびこ215号は2時間半もかけて終着駅を目指す。これだけ時間がかかるのは鈍足というわけではなく、途中駅での通過待ちの時間が多いのが理由である。しばらくして市街地に入り、ライトアップされたテレビ塔を見て仙台駅に滑り込む。降りてきたのは1両あたり数人といったところ。途中那須塩原での通過待ちの際にホームに降りて列車の外観を見て回ったが、グランクラスには誰一人乗っていなかった。

 この日の宿泊先である仙台に到着したが、すぐには宿に向かわない。ここから未乗である仙台市営地下鉄東西線に乗るため新幹線の高架ホームから一気に地下に移動する。自動券売機で一日乗車券を購入し、入場。東西線ホームは先にできた南北線のさらに深い地下4階にある。2015年12月に開業したのでまだ新しい。程なくして東側に向かう荒井行きの電車がやってきた。一日乗車券を持っているので先にきたこの電車に乗り込む。東西線は都営地下鉄大江戸線と同じリニアモーター方式をとっており、やってきた車両は小ぶりの4両編成、車内には最近の車両では当たり前となった液晶案内表示機を装備している。乗り込んだ電車はすぐに発車し、空いているロングシートに着席する。立ち客は見かけないが座席はわりと埋まっており、夜8時とラッシュのピークを過ぎた時間を考えれば結構乗っている方だと思う。途中「六丁の目」という珍しい駅名を過ぎれば東側の終着駅荒井に到着する。

 ホームに降りると反対側に折り返しの八木山動物公園行きの電車が停車していた。ただひたすら乗り潰しが目的な為改札を出ずにそのまま乗り込む。これも一日乗車券を購入しているからこそできる技だ。すぐさま発車し、来た道を地下の反響音を立てて戻っていく。東西線は地下鉄なので当然地下を走るのだが、仙台駅から西側は起伏が激しいため、広瀬川と竜の口渓谷は橋梁で通過する。乗務員室の後ろから確認してみたが、夜間と言うこともありほんの一瞬しか見ることができなかった。そして西側の終点八木山動物公園に到着、この駅は標高136.4mと地下鉄の駅では日本一高いそうだ。下車客は皆改札を出ると地上のバスターミナルに向かっていった。

 これで仙台市営東西線は完乗となり、この日の乗り鉄活動は終了する。仙台駅に戻り駅ビル内の「牛たん通り」にある「たんや善治郎」に入り、善治郎定食を注文する。牛たんの塩焼きのほかにつくね、ソーセージ、ゆでたんが揃いまさに牛たんを堪能できる。当然地酒も進み、すっかり酔った脚でこの日泊まるホテルに向かった。


2日目につづく

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