第2話
国立毘沙門高等学校。
国が運営している10の高校の一つ。
舞桜華火のように普通の人間ではない人間。通称、特別人間が通う高校で、日夜自身の能力の向上、国の発展のため、国が運営している。
毘沙門のように国が運営している特別な学校には、一つだけ入学に条件がある。
それは言わずとも分かると思うが、念のため。
それは、大なり小なり能力を持っていることだ。
逆に言えば、どんな者であれ能力を持っていれば入れるということ。
金が無くてもある程度は国から支給されるため、金の心配をすることはない。
フェニックスもこの毘沙門の生徒に先月なったばかりだ。
しかし、今日で登校は三回目。
別に、不登校で行かなかったわけではない。
先月初めて登校したのがその年度の最終登校日だったため、次の日からは春休みに入ったために通えなくなったとうことだけだ。
しかし、華火の付き添いで春休み中も何回か高校自体には行っているため厳密に何回登校したのかは定かではない。
確かに言えるのは、通常の登校日に通う回数を数えると、前年度の最終登校日。昨日行われた今年度の始業式。そして今日行われる入学式。の三回だけということ。
登校を終えたフェニックスは、華火と共に生徒会室へと足を向けた。
屋敷からずっと手を繋がれた状態で。
その光景は優しい姉が弟と共に散歩しているようだったとすれ違う生徒は言っていた。
☆
「おはよう」
「「おはようございます会長。総大将」」
華火とフェニックスが生徒会室に入ると、すでに生徒会メンバーは全員揃っていた。
生徒会のメンバーは現時点で総勢4人。
会長の華火3年に、補佐の役割を担う副会長二人と会計一人。
凛とした雰囲気が漂う華火とは対照的に、ゆるく柔らかな印象を持つ、副会長なのはたんぽぽ3年とフェニックスに敵対心を向ける副会長連夜猛2年。
フェニックスに慈愛の眼差しを向ける会計、紅葉2年。
これが現時点での毘沙門の最高戦力の一角を担う生徒会メンバーだ。
「ほら挨拶は返さないとだめでしょ?フー君」
「るせー。俺に命令すんなっての」
「いいから返しなさい。ほら」
「ちっ、わーたよ。おはよ」
「なんか、はーちゃんとフー君って姉弟って言うより親子みたいだよねー」
華美とフェニックスのやり取りを見ていたなのはたんぽぽが、率直な感想を言う。
「ですね!でも私はその親に反抗しているフーちゃんに萌えます!」
「おい。誰がフーちゃんだ。俺はフェニックスだって言ってるだろ?」
「うるさいぞフェニックス。いいから早く席についたらどうだ?」
「あっれー?猛ー。会長がフーちゃんに構ってるからからって妬いてるのー?」
「うるさいぞ。紅葉」
「ははは。怒った怒った」
華美とフェニックスが生徒会室に入った時はピリッとした空気だったが、いつの間にかその空気は柔らかなものに変わり、いつもの雰囲気に包まれていた。
「では、議題に入りましょうか」
華美とフェニックスが席に着くなり、華美がそう口を開いた。
その瞬間、またも柔らかな空気からピリッとした空気に変わり皆背筋を少し伸ばしていた。
「今回の議題は今日行われる入学式についてだよー」
華美の言葉を補足するような形でなのはたんぽぽが続けて言う。
「ではここからは僕が議事を進行させて頂きます。お手元のプリントをご覧下さい」
猛がそう言うと、皆一同にプリントに目をとおす。
「フー君読める?」
「読んで見せる」
「ほんとに?」
「……読めない」
「じゃあほら、来なさい」
そう言うと華美は自身の膝の上を軽くポンポンと叩き、ここに座れと促す。
それを見たフェニックスは一瞬苦悶の表情をした後、しぶしぶと言った形で華美の元へと向かった。
「はうっ!」
「どうしたのー?紅葉ちゃんー?」
「いえ、フーちゃんが可愛すぎて!いいえ、萌えすぎて!」
「何を言ってんだよお前は」
フェニックスは紅葉を呆れながら見たあと、ちょこんと華美の膝の上に座った。
その姿が妙に様になっていて、またも
「はうっ!」
紅葉は悶えていた。