表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

第七話 自覚

一日遅れてすみませんでした(-_-;)


しかも、短めという…


作者がSAN値ピンチなんです!

こういうシーンは苦手です!

「――おい、嬢ちゃん。本当に良いのか?俺なんかがこんなところにいて。」

 

 戦闘が終わって三日。

 俺は、改めて、隣を歩く少女に問う。


「大丈夫だって。

 貴方は私たちの命の恩人でもあるんだから。

 感謝こそすれ、敵意を感じるなんてありえないよ。」


 朗らかに答える少女。


「俺は、お前たちの大将を殺そうとしたんだぞ…?」


 それを聞いた彼女はクスリと笑い、


「う~ん。それはもう良いんじゃないかな?

 戦場で出会っちゃったんだから、そうなるのは寧ろ当然でしょ?

 ましてや、真正面からの正々堂々の一騎討ち…

 そこでの決着に対して恨みを言うのは筋違いじゃないかな。

 例の横槍に関しては、貴方だって怒ってくれてた訳だしね。


 ハイ!この話はこれでおしまい!

 過程はどうあれ、結局私も含めて皆納得してるから良いの!


 …まあ、これでユウ君が目覚めてくれたら言うことないんだけどね…」


 そういって苦笑する彼女の目元には、とても濃いクマが浮かんでいる。

 毎晩ほとんど寝ずに様子を見ているのだろう…


「…ああ。」


 そこからは、二人とも無言で歩く。

 しばらくすると、ひときわ大きなテントが見えてきた。

 [司令部]と書かれた札が立っている。

 と言っても、今は司令部としては使われていない。幹部陣の話し合いは、もっと別の場所で行われている。

 もっと別の使い道。そう、


――ここにユウが寝かされている――


 なぜ司令部に彼が寝かされているのかは知らないが、戦闘終了以降、ずっとこの場所で眠り続けている。


「それじゃあ、ジェイガンさん、またね。」


 そういってテントの中に入って行こうとするマナの背中に、あまり無理するなと告げる。

 マナは小さくうなずいて、テントの入り口を開けて…


――完全に動きを停止した。


「おい、どうした「ユウ君!!!」…」


 目にもとまらぬ速さでテント内に駆け込むマナ。

 一瞬、ユウの身に何か悪いことが起こったのかと思ったが、マナの様子からして違うだろう。

 つまり、答えは――


「ユウ君!良かった、良かったよぉ…!」


――やっと起きたか。

――これでひとまずは安心だな…


 俺はそんなことを考えながら、テントへと向かう。

 

――あれだけ心配してたんだろ?思う存分、想いをぶつけてこい!


 そう心の中でエールを送り、入口の前に立ち塞がり、腕を組む。


 一晩くらいは、誰かが来ても追い払ってやろう…



 





 










「…?」

 目が覚めた。

 ここは…司令部のテントか。

 なんでこんなとこで寝てたんだ?

 なんだが、かなり長い間眠っていたのような気がする…


 眠る前の状況を思い起こしつつ、備え付けのランプを点け、なんとか立ち上がる。


 確か、ジェイガンとの戦闘で腹にデカイの貰って…


 そっか。気絶したんだったな。


 まだ生きているということは――


「――ユウ君!?」


 いきなり聞こえた大声に反射的にそちらを見ると、マナがテントの入口の所に立ってこちらを見つめ…


「ユウ君!」


―ドサッ!


突如身体に重い衝撃を食らい、抵抗できぬまま、床に押し倒される。


「ユウ君、ユウ君…良かった…良かったよぉ…!」


――心配かけたんだな。


 俺にしがみ付いて泣いているマナをみて、そう感じ取った。


 こんな時、どう対応して、どう声をかけたらよいかなんて、俺には全く分からない。

 だが、気づいたら、ちょうど胸元辺りにあるマナの頭に手を乗せ、ぽんぽんと撫でていた。


「悪かった。心配かけて。」


 急に頭を撫でられ、一瞬ピクリとしたマナだったが、直ぐに力を抜き、ユウに身を委ねる。


「ほんとに、本当に心配したんだからね…?」


 マナがこちらを向き、笑顔を浮かべる。


 マナの目の下には、濃いクマが残っている。

 しかし、極度の緊張状態から解放され。安堵したのだろうか。


 俺を上目遣いで見つめるマナの笑顔はとても穏やかで――


――やべえ。可愛い。


 不謹慎かもしれないが、そう感じてしまった。

 少し鼓動が早くなっている気がする。


「…もう。私は子供じゃないんだよ?」


 暫く頭を撫で続けていると、マナが、頬を膨らませて指摘した。

 

 俺はその顔を直視することができず、視線を明後日の方向へと向ける。

 鼓動が早くなっていることが明確に感じられた。


――なんなんだ?

――なぜ俺は動揺している?

――マナが可愛かったからか?

――いや、人を可愛いとおもったことなんて、これまで何度もあったはずだ…


 よくわからないことを考えながらも、俺は撫でるのをやめない。

 寧ろ、ゆっくりゆっくり撫でることによって、内心の葛藤を押し隠していく。


「もう…」


 抗議したところで何も変わらないと察したマナは、諦めたのかユウの胸に顔を埋める。


 更に速くなる鼓動。



「…すぅ……すぅ…」


 ずっと張りつめていたからだろうか。

 すぐに寝息が聞こえてきた。


 それは、信頼と安心を体現したかのような、とても静かで安らかなものだった…


 暫く経ち、ようやく鼓動が落ち着いてきたので、改めてマナをみやる。


 気を付けないとすぐに潰れてしまいそうな華奢な身体。

 本当に剣をふれるのか疑わしくなってしまうほど細い腕。

 肩で切りそろえてある透き通るような黒髪。

 油断しきった安らかな寝顔。


 それらすべてが堪らなく――




――愛おしかった。



 愛おしい。

 今迄考えたこともなかった。

 しかし、その言葉一つで、全てのピースが繋がった気がした。



――そうか…俺は、マナのことを…


 再び薄れゆく意識の中で、俺はそんなことを考えていた…




 




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ