第七話 自覚
一日遅れてすみませんでした(-_-;)
しかも、短めという…
作者がSAN値ピンチなんです!
こういうシーンは苦手です!
「――おい、嬢ちゃん。本当に良いのか?俺なんかがこんなところにいて。」
戦闘が終わって三日。
俺は、改めて、隣を歩く少女に問う。
「大丈夫だって。
貴方は私たちの命の恩人でもあるんだから。
感謝こそすれ、敵意を感じるなんてありえないよ。」
朗らかに答える少女。
「俺は、お前たちの大将を殺そうとしたんだぞ…?」
それを聞いた彼女はクスリと笑い、
「う~ん。それはもう良いんじゃないかな?
戦場で出会っちゃったんだから、そうなるのは寧ろ当然でしょ?
ましてや、真正面からの正々堂々の一騎討ち…
そこでの決着に対して恨みを言うのは筋違いじゃないかな。
例の横槍に関しては、貴方だって怒ってくれてた訳だしね。
ハイ!この話はこれでおしまい!
過程はどうあれ、結局私も含めて皆納得してるから良いの!
…まあ、これでユウ君が目覚めてくれたら言うことないんだけどね…」
そういって苦笑する彼女の目元には、とても濃いクマが浮かんでいる。
毎晩ほとんど寝ずに様子を見ているのだろう…
「…ああ。」
そこからは、二人とも無言で歩く。
しばらくすると、ひときわ大きなテントが見えてきた。
[司令部]と書かれた札が立っている。
と言っても、今は司令部としては使われていない。幹部陣の話し合いは、もっと別の場所で行われている。
もっと別の使い道。そう、
――ここにユウが寝かされている――
なぜ司令部に彼が寝かされているのかは知らないが、戦闘終了以降、ずっとこの場所で眠り続けている。
「それじゃあ、ジェイガンさん、またね。」
そういってテントの中に入って行こうとするマナの背中に、あまり無理するなと告げる。
マナは小さくうなずいて、テントの入り口を開けて…
――完全に動きを停止した。
「おい、どうした「ユウ君!!!」…」
目にもとまらぬ速さでテント内に駆け込むマナ。
一瞬、ユウの身に何か悪いことが起こったのかと思ったが、マナの様子からして違うだろう。
つまり、答えは――
「ユウ君!良かった、良かったよぉ…!」
――やっと起きたか。
――これでひとまずは安心だな…
俺はそんなことを考えながら、テントへと向かう。
――あれだけ心配してたんだろ?思う存分、想いをぶつけてこい!
そう心の中でエールを送り、入口の前に立ち塞がり、腕を組む。
一晩くらいは、誰かが来ても追い払ってやろう…
「…?」
目が覚めた。
ここは…司令部のテントか。
なんでこんなとこで寝てたんだ?
なんだが、かなり長い間眠っていたのような気がする…
眠る前の状況を思い起こしつつ、備え付けのランプを点け、なんとか立ち上がる。
確か、ジェイガンとの戦闘で腹にデカイの貰って…
そっか。気絶したんだったな。
まだ生きているということは――
「――ユウ君!?」
いきなり聞こえた大声に反射的にそちらを見ると、マナがテントの入口の所に立ってこちらを見つめ…
「ユウ君!」
―ドサッ!
突如身体に重い衝撃を食らい、抵抗できぬまま、床に押し倒される。
「ユウ君、ユウ君…良かった…良かったよぉ…!」
――心配かけたんだな。
俺にしがみ付いて泣いているマナをみて、そう感じ取った。
こんな時、どう対応して、どう声をかけたらよいかなんて、俺には全く分からない。
だが、気づいたら、ちょうど胸元辺りにあるマナの頭に手を乗せ、ぽんぽんと撫でていた。
「悪かった。心配かけて。」
急に頭を撫でられ、一瞬ピクリとしたマナだったが、直ぐに力を抜き、ユウに身を委ねる。
「ほんとに、本当に心配したんだからね…?」
マナがこちらを向き、笑顔を浮かべる。
マナの目の下には、濃いクマが残っている。
しかし、極度の緊張状態から解放され。安堵したのだろうか。
俺を上目遣いで見つめるマナの笑顔はとても穏やかで――
――やべえ。可愛い。
不謹慎かもしれないが、そう感じてしまった。
少し鼓動が早くなっている気がする。
「…もう。私は子供じゃないんだよ?」
暫く頭を撫で続けていると、マナが、頬を膨らませて指摘した。
俺はその顔を直視することができず、視線を明後日の方向へと向ける。
鼓動が早くなっていることが明確に感じられた。
――なんなんだ?
――なぜ俺は動揺している?
――マナが可愛かったからか?
――いや、人を可愛いとおもったことなんて、これまで何度もあったはずだ…
よくわからないことを考えながらも、俺は撫でるのをやめない。
寧ろ、ゆっくりゆっくり撫でることによって、内心の葛藤を押し隠していく。
「もう…」
抗議したところで何も変わらないと察したマナは、諦めたのかユウの胸に顔を埋める。
更に速くなる鼓動。
「…すぅ……すぅ…」
ずっと張りつめていたからだろうか。
すぐに寝息が聞こえてきた。
それは、信頼と安心を体現したかのような、とても静かで安らかなものだった…
暫く経ち、ようやく鼓動が落ち着いてきたので、改めてマナをみやる。
気を付けないとすぐに潰れてしまいそうな華奢な身体。
本当に剣をふれるのか疑わしくなってしまうほど細い腕。
肩で切りそろえてある透き通るような黒髪。
油断しきった安らかな寝顔。
それらすべてが堪らなく――
――愛おしかった。
愛おしい。
今迄考えたこともなかった。
しかし、その言葉一つで、全てのピースが繋がった気がした。
――そうか…俺は、マナのことを…
再び薄れゆく意識の中で、俺はそんなことを考えていた…