第三話 開戦 ベクター軍VS解放軍!
本日二話目です!
…ヤバい。書き溜めがなくなった!
一日一本が限界となりそうであります…
俺たちはよぉ、「絶対に楽して稼げる」って言うから志願したんだ。
抵抗力のない城とか、あっという間に落ちると思ってたんだよ。
実際、あいつらさえいなければ俺たちの圧勝だっただろうがな。
ビックリしたんだぜ?
いきなり前方の騎馬部隊が消滅したと思ったら、敵の騎馬が襲い掛かってくるんだから。
恐怖と驚愕が混じって、何千もの軍隊に見えたさ。
まさかあれが、100にさえ満たない部隊だったなんてな…
生き残れたことがいまでも信じられんよ。
それだけ、あいつらの強さは鬼神じみてるってこった。
フィリア帝国誕生の秘密を探る 第三話『春春戦争の生き残りに話を聞いてみよう』より
「これで全軍か?」
騒ぎながら行軍する五千の兵を眺め、呟く。
俺たちは見晴らしの良い丘に陣取っていて、ここからだと敵の様子がよくわかる。
ロウリィの言う通り、ベクター軍には緊張感のかけらもないようだ。
自分たちがまける姿など、微塵も予想していないのだろう。
「ユウ君。ほんとにやるの?」
傍らのマナが心配そうな顔でこちらを覗き込む。
「ああ。指揮官が後方でビクビクしているような軍が強いはずがないからな。」
その問答は、ここまで幾度も繰り返されたもの。
マナが本気で心配してくれているのはわかるので、決して邪険に扱ったりはしない。
だが、これまでならここで引き下がっていたマナだが、今回は初めて食い下がってきた。
「でも!
これはゲームじゃないんだよ!?
し、死んだら…死んだらそれで終わりなんだよ!?」
――っ。
わかってるさ。
俺はマナを安心させられるように、なるべく優しい笑み(自称)を浮かべる。
「だからこそ…だよ。
これは現実だ。戦略ゲームとは違う。
部隊の指揮官、将が安全なところから指示しているだけでは、部下はついてこないさ。」
さらに、俺は冗談めかして続ける。
「それに、こないだも言ったが、俺たちはこの時の為に、二年間、死にかけるような修練を何度も何度も積んできたんじゃないか。
そんじょそこらの奴が百人いたって、俺たちにはかなわないさ。」
「それは…」
「それに、」
俺はマナの顔をしっかりと見つめ、心からの笑顔で言う。
「俺にはマナがいるだろ?」
その一言だけで、俺の想いを伝えるには充分だった。
FTO時代、二人そろえば死角なしと言われたユウとマナ。
どんな困難も二人で突破してきたんだ。
それが今更折れるはずがない。
「うん…そうだね。ありがとう。
私、ユウ君が私にしてくれたみたいに、みんなを勇気づけてくるね。」
マナは一応納得したのか、走って行った。
…これは現実。
当然、死んだら終わりだ。
絶対に、仲間を死なせやしない…
「おい、まだ春来には着かないのか?」
「いや、あと一日くらいだったと思うぞ。」
「いやぁ、ここまで長かった。」
「全くだ。だがやっと楽しめる。」
「ひゃっはっはっは!
良いねえ!望みはなんだ?金か?名誉か?女か?」
「フン。全部だ。」
どっと笑いが起こる。
「おいおい!ちゃんと俺の分も残せよ!」
お気づきの方も多いかもしれないが、こいつらこそが今回の敵、ベクター軍だ。
彼らは、その先頭を担う、騎兵隊400。
高い機動力を以って先陣を切ることを求められている。
一番槍とはいえ、抵抗力のない場所へ攻め込むのだから、略奪するだけ。むしろ一番得な役回りだ。
しばらく進むと、前方に人の群れが見えた。
何かの作業をしているらしく、ブロックを積み上げたりしている。
泊まり込みで作業をしているようで、近くにはテントや馬車が並べられている。
――つまり、
「ヒャッハァ!獲物だぜぃ!」
「防壁を作るつもりだったのかは知らんが、一足遅かったようだなぁ!」
喜び勇み、突撃をかけようとする騎馬隊。
しかし、
「待て。罠かもしれんぞ。」
ベクター軍にも、数名は頭がある程度回るやつがいたようで、むやみに突っ込むということはしなかった。
しかし、ほとんどの奴の意識は、街道脇に並べられた馬車に向いている。
「おい! 奴ら弓を構えているぞ!」
いつの間にか、敵が列を作って弓を構え、こちらを向いていた。
いくら機動力突破力に優れているとはいえ、矢の雨を浴びたらひとたまりもない。
「不味い!散開しろ!」
部隊の誰かがあわてて叫ぶが、もう遅い。
彼らは一斉に矢を放った。
放たれた屋は、騎兵隊へと降り注ぐ―
――とはならなかった。
上を狙いすぎたのか、騎兵の頭上を越えていくもの、
左右にぶれ、あらぬ方向へと向かうもの、
そもそも届かずに前方に落ちるもの…
まともに飛んできた矢は、数本のみだった。
これをみた彼らは、当然のごとく大爆笑。
「おいみたか!弓も満足に撃てんようだぞ!」
「もう遠慮などいらぬ!行くぞ!」
一気に馬を加速させ、距離を詰める。
あわてて二本目の矢をつがえるのが見えたが、気にするほどのことではない。
どうせ、当てる力などないのだ…
「ぐえっ!」
「ぎゃぁ!」
不運にも矢に当たってしまい、落馬している間抜けがいるが、構ってなどいられない。
――宝の山は、目の前に迫っているのだ…!
そう。彼らは気づかない。
弓もまともに扱えないはずの敵部隊が、迷いなく弓を撃ってきていることに…
その軌道が、やけに自分たちの急所に一直線であることに…
400騎いたはずの自分たちの数が、既に半分を切ったことに…
――そしてついに、両部隊の距離が零になる――
「ウオオオオオ!」
「宝は目の前だァ!!」
雄たけびをあげ加速する。
しかし、彼らが剣を振り上げた時――
「ウオオオオ――――え?」
突如、浮遊感を感じ、身体に制御が効かなくなる。
「ぎゃぁ!」
宙に浮き、馬から投げ出された状態の彼らに次々と矢が突き立てられる。
即座に矢を浴びて死んだ者もいたが、そうでない者は感じた。
――それは、死の恐怖。
圧倒的優位に立っていたはずの彼らが、この戦いにおいて初めて経験したものだった。
悲鳴を上げる間もなく、現状を認識する間もなく、次々と討たれていく騎馬隊の兵士達。
400騎で以って、無抵抗に等しい状態の敵陣から、散々に略奪するという彼らの目論見は、こうしてあっさりと砕け散ったのだった。
ベクター軍 騎馬部隊400●VS○タクヤ隊50 解放軍
軍事的被害 ベクター軍 騎馬隊の全滅
解放軍 皆無
、
※因みに、戦争に関しましては、基本フィリア王国復興までは苦も無く勝利し続ける予定です。