プロローグ
プロローグです!
長めですが、二回に分ける事なくさくっと進めたかったもので。。。
光が晴れると、どことも知れない空間に出た。
そこには、二人の人が並んでいる。
一人は女性。
妖艶な容姿をもち、神聖な雰囲気も兼ね備えている。
もう一人は男性。
こちらも神がかった雰囲気が…って、さっき浮いてた人じゃん!
横を見ると、マナ、タクヤ、ヤグモと、全員そろっている。
三人とも、困惑している様子だ。
俺が再び前を見ると、二人そろってすごい勢いで頭を下げた。
は?
『突然、このような場所へと連れてきてしまい、本当に申し訳ありません!』
なんだなんだ?
余計困惑するんだが…
「と、とにかく、どういうわけか教えてくれない?」
『それでは、この球に触れてください。』
女性が手を振りかざすと、虚空から光の玉が生み出された。それは、俺たち四人の前に一つずつ並べられる。
触れてみる。
――ッ!?
突如、頭の中に何かがものすごい勢いで流れ込んでくる。
『いまお渡しした情報の中には、この世界のことや、私たちについてのことが含まれております。
私たちは待機しておりますので、整理出来次第お声かけください。』
ははは。
これは、確かに時間がいるな。
初っ端の情報からとんでもないぞ。
――俺たちは、これから異世界に飛ばされるらしい…
さて。わかったことから纏めようか。
まず、俺たち四人はこれから異世界に行く。
魔法などはない。
そこでは、二百年前に大陸全土を統治していたガイア帝国が滅亡。五つの国に分裂。
おもな国家は、
武装国家 バルカディオス
大陸の北を有する。
勇猛な将が多く、兵の練度も高い。
東ガイア帝国
二百年前の後継者争いで分裂して以降、衰退の一路を辿っていたが、20年前、ディアボスが即位。
そこからはいっきに持ち直し、規模こそ以前の三分の一程なものの、国力はかつての帝国クラスにまで上昇している。
キルリア王国
大陸の南を占める。
東ガイアと同規模の国土を有する超大国。
物資が豊かなのもあり、比較的温和な国で、自分たちから侵略したりということをしない。
帝国ディラガイア
当時、大陸中央の都、洛陽を治めていた将軍、アグリアスが独立して建国。
都市一つのみと、断トツで小さい国土だったが、あちこちからの侵略をことごとく退け、寧ろ領土を拡大した。
今は十四代国王 アグリアス14世が統治しており、国力増強の真っ最中。
フィリア王国
帝国動乱時に、難を逃れたフィリア女王が建国。
大陸でもっとも西にあるうえ、東側の一部を除いて巨大な山に覆われているため、閉鎖的。
代々温厚な王が統治し、少しずつ豊かになっていった。
しかし、714年、健康だったはずの国王が急死。
二十四歳の第一皇子ベクターが王の跡を継いだ。
それ以来、暴政が続き、民心はどんどん離れていっている。
その後、王妃と第一王女が謎の急死。第二皇女も行方不明。
国はベクターの独裁状態に。
民の為と、王に意見したものは皆左遷されるか殺された。
フィリア王国には、国の一番西に春来という都市があり、714年以降、ベクターに左遷されたものが次々とここへ流れ着いた。
王国が独裁国家となり、民を虐げる政治を続けている中、春来とその一帯だけは、有能な人材が終結したのをいいことに民のことを考えた独立した政治を行っている。
しかし、中央独裁政府に逆らうような地域を、見逃してくれるはずもなく、直ちに討伐軍が派遣された。
しかし、元軍務卿ダリウスを初め、元宰相ヒカル、元財務卿マリウスほか、優秀な人物たちの奮闘によって、なんとか持ちこたえる。
しかし、圧倒的な物量差により次々と町は陥落。とうとう春来と、更にその西の春風だけとなった。
しかも、春風はいわば子供の避難場所となっており、実質戦えるのは春来のみだ。
春来に迫るベクター軍5000に対し、対する春風側は1000.
絶体絶命である。
最後に、俺たちについてだ。
最後だけ説明が詳しかったことからも察せられるように、俺たちはフィリア王国、それも春風に転移する。
そこから、ひそかに特訓した春風の全勢力で以って春来の救援に向かう。
その出発前日に転生だ。
「まて、俺たちは現実に帰れるのか?」
『はい。あなたたちが世界を統一に成功した暁には。』
「ちょっと待ってくれ。それは、戦争に参加しろということか?
一般人の俺たちに?」
『それについては、こちらから祝福を授けることができます。』
「祝福? そんなことができるのか?」
『できます。そのために、FTOの世界から直接呼んだのです。』
「FTOから?いったいどういうことだってばよ?」
あ、ちょ、やめて!そんな目でみないでよみんな!
折角場を和ませようと…ハイ。すみませんでした!
『貴方たちが最後に戦った竜王を覚えていますね?
あれは、私たちが送り込んだものです。
あれに打ち勝ったことで、あなたたちは神の試練を乗り越えたことになります。
神の試練を転生前に乗り越えたものには、その試練の難易度に応じた祝福を授けることができるのです。
あなたたちが乗り越えたのは、最高難易度の竜王。
したがって、かなり強力な祝福を付与できます。』
「成程。だからFTOの最後を狙ったわけか。
世界初のVRMMOのラスト。確かに、現実なんかよりはるかに強力な人間がそろうな。」
『察しが早くて助かります。早速ですが、候補の中からお選びください。』
また脳内に流れ込んでくる。
めぼしいものは…
『肉体強化 真』
『天賦の才』
『神算鬼謀』
『統率極』
・
・
・
結局、いろいろあったが、俺たちが選んだものは共通していた。
☆☆
『天賦の才・極』
さまざまなことにおいて、すさまじいまでの上達速度を得る上、成長の限界を感じられない。
ただし、努力をしないものが成長することはない
☆☆
努力が必須ってのが気に入った。
無条件チート最強ってのはどうも好きになれないんだよなぁ。
いくら命がかかってるとはいえ、その手のずるは許容できない。
『それでは、準備はよろしいですか?
転移先は、718年6月8日の春風です。
あなた方は、700年に春風で生まれ、716年にダリウスに出会い、密かに師事。
二年間ですさまじく強くなった自分を試すためにも、恩師ダリウスを助けるためにも、義勇軍150を率いて春来へ駆けつける…
という設定となります。
大丈夫ですね?』
三人が硬い表情でうなずくが、俺だけは首を振る。
「ちょっと待ってくれ。もっと早い時代に転移できないか?」
俺がそういうと、女神は目を細める。
『その意図は?
残念ですが、718年6月8日まで、歴史を変えることはできませんよ?
それが飲めるのなら、ダリウスにあった直後からなら可能です。』
そんなことは、転移日時が細かく設定され、そこまでの情勢が語られた時点でなんとなく察している。
おそらく、なんらかの超自然的な力が働くのだろう。
「ふん。わかってる。歴史を変えようなんて思ってないさ。
自主鍛錬期間が欲しい。」
そう。俺が求めたのは、訓練期間だ。
新しい世界、新しい身体に慣れ、少しでも戦闘技術を向上させる。
それだけで、俺たちの生存確率は大いに上昇するだろう。
周りのみんなも、なるほど。という顔をして頷いている。
…余裕ないのはわかるけどさ、皆も気づこうぜ…
結局、ユウの提案は受け入れられ、彼らは716年6月8日に転移することになった。
『あんな子供たちを巻き込んでしまうなんて…』
四人が去った後、残された二人は憂鬱そうに話していた。
『仕方のないことだったんだよ。
彼らが全地球人の中で最も優れていたのだから。』
『でも!』
『しょうがないじゃないか。
これは地球の神からのお願いなんだよ?
我らの意思以前に、FTOをクリアしたものの転移は決定事項だったじゃないか。
まあ、全員未成年だったことには驚いたけど…。』
『そうだったわね。
でも、いくら人材育成が急務だからって、あんな死地に送り込まなくても…』
『そこまでする必要があるからそうしてるんだろ?
実際、もしこれを乗り越えたら、終焉戦争を迎えるうえでものすごく大きな切り札になる。
これを乗り越えたうえで、なおかつ終焉戦争ををも乗り越えられるように、君はここまでの難易度にしたわけだろう?
所属国に攻められ、滅びかけの一都市から始まって、大国五つを従えて大陸を統一しないといけない。
いくら有能な人物が味方にいるとはいっても、「じんせいはーどもーど」なんてレベルじゃないぜ?』
『それは…だって、そのくらい『そう、そのくらい乗り越えられないのなら、終焉戦争を打ち勝つことはできない。』…。』
『我らは、終焉戦争によって滅ぼされてきた星をいくつもみてきた…違うか?』
『ええ。そう。そうだったわね。
私たちにできることは、無事乗り越えてくれることを祈るのみ。』
『ああ。全力で祈ろうじゃないか。
この過去最高難易度の試練を乗り越え、終焉戦争にも打ち勝つという、創世歴史上初の快挙を成し遂げてくれることを。』
強制的に人を召喚する神にも、やむにやまない事情があるのです。。
(終焉戦争云々は当作品には今後出ませんのであしからず)
指摘により誤字を修正しました。 20150710