第八章 鋼鉄の都(七)
プラムス祭六日目。
その日、鋼玉宮の『藍玉の間』にはシュタール帝国を代表する四人の貴族が姿を見せていた。
帝国宰相ダヤン侯ギルベルト。
シュタール北部に巨領を有する『琥珀公』ベルンシュタイン公ゼリアルト。
東部諸州を領導するレヴィン伯マテウス。
西方の雄、『赤髭』グナイゼナウ侯オイゲン。
現宮廷において五本の指に入る有力貴族のうち四人までが一堂に会している光景は、プラムス祭ならではのものといえるだろう。平時において彼らが一箇所に集まるとすれば、それはシュタール帝国が存亡の危機に立たされたときくらいであろうから。
この四人に南部の大貴族であるドルレアク公メルヒオールをくわえた五人が、事実上のシュタール貴族の頂点といってよい。たとえばラーラベルク公爵家のように、家格の上でこの五家と並ぶ、あるいは上まわる家は存在するが、実際の勢力で五家に並ぶ家は皆無である。この場に集ったのは、それほどに他家からぬきんでた者たちであった。
他者から仰ぎ見られる立場の五人であるが、さらに分析を深めると、この五人の中でも覆しがたい差というものが存在する。
もともと、シュタール帝国には建国期から皇家を支えた有力貴族――『四公』と呼ばれる四つの公爵家があった。これは初代皇帝と共にシュタール建国に尽力した者たちで、北のベルンシュタイン公、東のサロニア公、南のドルレアク公、西のグナイゼナウ公の四家を指す言葉である。
この四公は現在の有力者たちとほぼ重なるのだが、ただ一つ、東のサロニア公の名前だけが欠けていた。
その理由は単純なもので、サロニア家は滅亡したのである。遠い昔に、ではない。それは今をさかのぼること五年前の出来事であった。
代々、四公のうち最大の勢力を有していたサロニア公の権勢は絶大であり、東部諸州における影響力は皇家をもしのいでいた。帝国東部は実質的にサロニア公の領土同然で、当時のダヤン侯でさえサロニア領には指一本触れられなかったほどである。
ところが統一暦六二五年、サロニア家の栄華は突如終焉を迎える。
この年、サロニア家の本拠地である湖上都市サランをおそるべき大火が見舞った。炎は都市全域に及び、湖上ゆえに逃げ場のなかった住民の多くが火に飲み込まれた。
当主マクシミリアンは死亡、一族のほとんどもこの災厄で命を落とし、名門サロニア公爵家はわずか一夜で壊滅の憂き目を見ることになった。
このとき、大混乱に陥った東部諸州をまとめあげたのがレヴィン伯マテウスである。
レヴィン伯は貴族というより学者といった方がふさわしい容貌の持ち主で、両の目には常に思慮深い光が湛えられている。
年齢は三十代の半ばで、帝国貴族としては若い部類に入るが、穏やかで公正な為人は貴族社会でも評判が高く、皇帝や宰相の命令で対立する貴族の調停を務めたことが幾度もある。
ダヤン侯はレヴィン伯の誠実さを高く買っており、レヴィン伯の側も宰相の命令に忠実であるため、この両名は昵懇の間柄であると考える者は多かった。
サロニア家のように滅亡こそしなかったが、西部のグナイゼナウ家もあわや衰亡の道をたどりかけた歴史を持っている。
前述したように、建国時のグナイゼナウ家は公爵であり、現在は侯爵に格下げされている。この貶降の理由は遠い過去にあった。
当時、シュタール帝国は内乱が勃発する寸前の状態であった。次期皇帝の座をめぐって兄と弟が対立し、どちらを次の皇帝に据えるかで国が割れたのだ。
時のグナイゼナウ公は弟の側につき、自らが支持する者を帝座に据えるべく様々に策動する。長子相続の慣例にもとづけば有利なのは兄の側であるから、情勢を覆すために陰謀まがいの手段も辞さなかった。
弟が後継者争いに勝利すれば、グナイゼナウ家の権勢はサロニア家をしのぐものとなるだろう。シュタール帝国の政権を握る欲望に駆られたのか、あるいは当主として自家をより雄飛させるつもりであったのか、いずれにせよ、グナイゼナウ公は積極的に後継者争いに関与し続けた。
結果として帝位は弟の手に渡る。内乱勃発が避けられぬと考えた兄皇子が、みずから臣籍に下ることで弟に帝位を譲渡したためだ。
グナイゼナウ家にとっては満足すべき結果となったわけだが、新帝がこの大貴族に与えたのは栄達ではなく貶降であった。
兄の行動を見て、それまでの内乱の図式に疑念を覚えた新帝は、帝位についた後で兄側の支持者も含めた複数の有力者から情報を集め、グナイゼナウ公が故意に兄弟の対立を煽り立てていた事実を知ったのである。
激怒した新帝はグナイゼナウ家を侯爵に格下げし、領内にあった銀鉱山と塩田、さらに八つの荘園を没収する。これによってグナイゼナウ家は資産の二割近くを失い、さらに貴族社会における声望、中央における影響力をも失って、以後、サロニア家が滅亡するまで四公中最弱とみなされるようになった。
なお、このとき臣籍に下って弟に帝位を譲った兄皇子はラーラベルク公爵家の初代当主にあたる。
現在、グナイゼナウ家は往時の勢力をほぼ回復しており、西方の雄たる立場が揺らぐことはない。が、過去の失態はいまだに尾を引いており、グナイゼナウの力はベルンシュタイン、ドルレアクの両家に比べれば一歩も二歩も劣っている。
腹まで届く自慢の髭から『赤髭』と称されるグナイゼナウ侯オイゲンは、こういった自家を取り巻く状況を面白く思っていなかった。
昨年四十歳になったこの侯爵は、痩身で学者風のレヴィン伯とは対照的に、いかにも豪傑といった風体で、当人の性向も攻撃的かつ武断的である。
一代で成り上がったダヤン侯の専横を苦々しく思っており、ベルンシュタイン、ドルレアク両公爵とは犬猿の仲。温和なレヴィン伯に対しても「宰相におもねる軟弱者」として見下している節があった。
このように外に対しては傲骨な面を強く見せるグナイゼナウ侯であるが、他方、配下や領民、また自らが実力を認めた者に対しては寛容にして篤実、身分を気にせず磊落に接する面を持っている。
帝国西部でグナイゼナウ侯を慕う者は多く、侯爵家が往時の勢力を取り戻しつつあるのはひとえにオイゲンの功績といってよかった。
レヴィン伯やグナイゼナウ侯と比べると、琥珀公ゼリアルトには能力的にも、人格的にも特徴がない。廷臣の多くがそのように考えている。
金髪碧眼の容姿はいかにも貴族然とした優美さを保っていたが、さりとて人目を引きつけるほどの華があるわけではなく、ゼリアルト自身も他者に面白みを感じさせる人柄ではない。
軍事も、政治も、外交も、劣ったところはないが秀でた面もない、灰色の貴族像。
爵位を継いだのがベルンシュタイン家でなければ、ゼリアルトの存在は他の貴族に埋没していたに違いない――そう影で囁く者は後をたたない。
実際、前公爵の急死によって公爵位を継いでから四年、ゼリアルトは特筆すべき功績をたてていなかった。
ただ、これはいまだ二十歳に達していないゼリアルトの年齢を考えれば当然だ、という見方もある。むしろ、ベルンシュタインほどの名門を、今日まで大過なく治めてきたことが非凡の証である、とも。
もっとも、これはこれで「前代の重臣たちに頼っているだけだ」という反論があって、ゼリアルトの人物評価は一向に芳しいものにならず、ゼリアルト自身、そういった己の評価に異を唱えようとはしなかった。
◆◆
「急な呼び出しゆえ急ぎ参内したが、いったいどのような用件なのだ、ダヤン侯」
四人の中で最後に藍玉の間にあらわれたグナイゼナウ侯は、他者への挨拶ぬきで宰相に問いかける。侯爵が自身の席にどっかと腰を下ろすと、巨体を支えかねたクルミ材の椅子が小さなきしみをあげた。
このグナイゼナウ侯の横柄な態度は今に始まったことではないため、他の三人も今さらめくじらを立てたりはしない。ダヤン侯は冷然と、レヴィン伯は穏やかに、ベルンシュタイン公は淡々と、それぞれの性格にそってグナイゼナウ侯のふるまいを受け流す。
そんな諸侯を見渡したグナイゼナウ侯は、自慢のヒゲをしごきながら続ける。
「お姿が見えぬということは陛下のお召しというわけでもなさそうだな」
言外に、宰相ごときが上位者面して四公を呼び立てるな、と強い不満を示すグナイゼナウ侯に対し、ダヤン侯はあっさりと本題を口にした。
「昨日のこと、ドルレアク公より急使が参った。アルシャート要塞が陥落した、との報告を携えてな」
それを聞いた瞬間、グナイゼナウ侯は目を剥いて驚きをあらわにする。
「なんだと、それはまことか!?」
「ドルレアク公が今この時期にあえて虚報を送る理由はない。しかも、内容は公爵家の声望に関わる失態だ。報告は真実とみるべきであろうよ」
「ぬう……」
黙りこんだグナイゼナウ侯にかわって口を開いたのはレヴィン伯である。
グナイゼナウ侯と同様、驚きに目を見張っていたレヴィン伯であったが、落ち着きを取り戻すのは侯爵よりも早かった。
「宰相閣下、かの要塞を陥落せしめた敵は何者でありましょうか? アルセイス王国が大軍を動かしたとは聞いておりませぬ」
「書状によれば、アルセイスの意を受けたドレイクの仕業とある」
「ドレイク、でございますか?」
レヴィン伯が当惑したように目を瞬かせる。
現在、シュタール帝国において南部地方の騒乱といえば、ラーラベルク公爵家の叛乱を指し、自由都市ドレイクで起きた騒動と、その顛末を知る者は少ない。
これはドルレアク公が自身の失態に関わる情報をせきとめているためであるが、大多数の廷臣にとってアルシャート以南の混乱はあくまで国外のそれであり、さしたる関心を抱いていないという点も大きい。
政敵(ドルレアク公)の勢力をけずるべく画策したダヤン侯は、当然のようにドレイクで起きた詳細を把握しているが、銀髪の宰相は完璧に表情を統御してその事実を胸中に秘めており、他者が外からうかがい知ることは不可能であった。
ダヤン侯はここではじめてドルレアク公主導によるドレイク支配の計画をおおやけにする。むろん、自身の関与は伏せた上で、である。
グナイゼナウ侯がいまいましげに鼻から息を吐きだした。
「ふん、ようするにドルレアク公は二兎を得ようとして一兎をも得られず、それどころかアルシャートという重要拠点を奪われるにいたった、ということか。失態の一言で片付けられる不始末ではないな。公も老いたということか」
そう断じたグナイゼナウ侯は、ここまで一言も発していないベルンシュタイン公をじろりと睨んだ。
「琥珀街道がアルセイスにふさがれたとなれば、ベルンシュタイン家も南への販路をふさがれたことになる。座視していられる事態ではなかろうと思うが、このまま貝のごとく黙っているつもりか?」
「南の道をふさがれたことで迷惑をこうむるのは、我が公爵家に限った話ではないと思うが――」
ベルンシュタイン公はそういってグナイゼナウ侯に視線を向けた。グナイゼナウ侯を見据える青い双眸には動揺のかけらも浮かんでいない。
「これまで我らが帝国はドレイクという自由都市を介して北の産物を南で売り払っていた。敵対するシュタール、アルセイス両国を交易面で結びつけること、あの自由都市の存在価値はそこにあった。その価値はアルセイス王国にとっても有用と考えられる。この先、あの国が自国の産物を北で売り払おうとおもえば、両国の間にドレイクと価値を同じくする緩衝勢力が必要となる」
熱くもなく、冷たくもない、ぬるま湯にも似た声音でベルンシュタイン公は続ける。
「こたびの件でいえば、リンドブルムとやらいう者たちがその緩衝勢力にあたるのだろう。ドルレアク公の言うがごとく、リンドブルムがアルセイスの傀儡なのだとすれば、今後はリンドブルムがドレイクに代わるだけのこと。多少の混乱は避けられないだろうが、最終的にはこれまでどおり琥珀街道は南北交易の要路として機能しつづける。アルシャートの奪回に関しては宰相閣下とドルレアク公の領分であり、私が口出しする必要はない。そう考えたゆえに黙っていたのだ」
ベルンシュタイン公が口を閉ざすと、グナイゼナウ侯は舌打ちでもしそうな顔で視線をそらした。
ベルンシュタイン公の主張に反論できなかったというより、グナイゼナウ侯も同じことを考えていたのだろう。見当違いのことを口にしたら手厳しく叩いてやろうと手ぐすね引いていたところ、自分と同じ見解が帰ってきたのでしぶしぶ矛をおさめたのだと思われた。
いつもどおりのやりとりを見て、レヴィン伯は他者に気づかれないようにそっと溜息を吐く。ベルンシュタイン公が、まるで忘れ物を思い出したようにぽつりと言葉を付け加えたのはそのときだった。
「問題は、リンドブルムがアルセイスの傀儡ではなかった場合だ」
「……それはリンドブルムが確固とした独立勢力であった場合、ということですか、ゼリアルト卿」
レヴィン伯が問うと、ベルンシュタイン公はゆっくりとうなずいた。
「その場合、琥珀街道はリンドブルムによって封鎖され、南北交易は長期にわたってとどこおる。ヒルス山脈を迂回して物資をやりとりするとなれば、手間も人手もこれまでとは比較になら――」
「ふん! そのようなこと、あるはずなかろうが」
グナイゼナウ侯が苛立たしげに机を叩き、ベルンシュタイン公の言葉を遮った。
「ドレイクの兵など一万にも満たぬ。その寡兵でシュタールとアルセイスの両国を同時に敵にまわす阿呆がいると思うのか」
「いないと思うのは卿の自由だ、グナイゼナウ侯。私は私の懸念を述べたまで。それを容れる義務は卿にはない。ドルレアク公が自身の失態となる報告に、いかなる欺瞞も瞞着もはさまなかったと信ずるもまた卿の自由である」
中途で言葉を遮られたことに寸毫も怒りを見せず、ベルンシュタイン公はそう言って再び口を閉ざした。
それを見たグナイゼナウ侯の眉間に深いしわができる。
自身の半分も生きていない若すぎる公爵が、グナイゼナウ侯は心底から嫌いだった。はきつかない声も、態度もである。
ここで声を荒げるなり何なりして多少の怒りでも見せればまだ可愛げがあるものを、と思うが、実際にベルンシュタイン公がそういう態度をとれば、それはそれで怒りをかき立てられたであろう。
グナイゼナウ侯のこの態度は、自家を上回るベルンシュタイン家に対する敵意からきているが、ゼリアルト個人に対する不快感も明確に存在する。
――カールハインツが生きておれば、このような苛立ちとは無縁でいられたろうに。
今は亡きゼリアルトの兄の名を胸中で呟き、グナイゼナウ侯は旧友の死を悼む。かつて英明の名をほしいままにしたベルンシュタイン公爵家の嫡子カールハインツ。グナイゼナウ侯はこの公子と年齢差を超えた友人関係にあった。
カールハインツが公爵位を継いでいれば、ベルンシュタイン家は今以上に栄えていたであろうから、グナイゼナウ侯にとって面白くない事態も生じていただろう。その意味で冴えない弟の方が公爵位を継いだことは幸運といえる。
いえるのだが、グナイゼナウ侯がそれをありがたいと思ったことは、この四年間、一度としてなかった。
◆◆◆
「……つ、疲れました」
一日の政務――笑みを浮かべて群集に手を振りながら帝都各処をまわること――を終えて鋼玉宮に戻ったジークリンデは、女官たちが別室に下がるや、倒れこむように寝台に横になった。
現在のシュタール宮廷において、ジークリンデが果たす役割はごく少ない。国事の大半は宰相の手によって処理され、廷臣や市井の者と言葉を交わす機会はわずかしかない。一日の予定が空白であることもめずらしくなかった。
宰相はこれを『皇帝陛下の御身を護り参らせるための措置である』と説明していたが、さすがにプラムス祭、それも在位一周年ともなれば、皇帝を鋼玉宮に押し込めておくわけにもいかず、ジークリンデは連日のように鋼玉宮を出ては人々に笑顔を振りまくという務めをこなしていた。
政務自体は嫌ではない。何もせず、誰にも会わず、ぼんやりと鋼玉宮で過ごす一日に比べたら、全身にのしかかる今の疲労は心地よいくらいのものである。
ただ、武術を修めていた姉のアーデルハイトと異なり、ジークリンデはお世辞にも体力があるとは言えず、寝台に寝転がった自分の身体がまるで鉛のように重く感じられた。
ぴくぴくと頬が勝手に痙攣するのを感じたジークリンデは、両手の指先を頬にあててやや強めにもみほぐす。
今ではもう慣れたとはいえ、意識的に、かつ不自然でない笑みをつくるというのは案外難しい。そして、その笑みを一日中、ほぼ休みなく続けなくてはならないというのはけっこうな重労働なのである。
しばらく我流のマッサージを続けていたジークリンデだったが、やがて思い立ったように上体を起こすと、寝台の傍に置いてある鏡に自分の顔を映し、両の手のひらを強く頬に押し当てた。
鏡には決して他人に見せてはならない皇帝の面白い顔が映っている。
政務の最中にこれをやったら、見ている人たちはびっくり仰天するだろう。そんなことを思ってジークリンデがくすくすと笑いをこぼしていると、不意にコン、コン、というかたいノックの音が室内に響いた。びくり、と反射的に背筋が伸びる。
「ふぁい!?」
驚きのあまり頬をおさえたまま返事をしてしまったジークリンデは、慌てて両手を膝に戻すと、顔を赤くしながら入室の許可を出した。
応じて、訪問者がゆっくりと扉を開けて室内に足を踏み入れてくる。
老いて白く染まった髪をひっつめた姿は、鋼玉宮の女官たちを束ねる女官長のものであった。針のように鋭い視線がぴたりとジークリンデの面上に据えられる。
「陛下、お疲れのところ申し訳ございません。バルトロメウス様がお見えになりました」
いかめしい顔にいかめしい声。老いを否定するように真っ直ぐ伸びた背筋。
糸杉のように細い手に教鞭を持たせたなら、女官長は立派に貴族子弟の教育係が務まるに違いない。
「わ、わかりましたッ」
ジークリンデはこくりとうなずくと、すぐに起き上がって身支度をととのえはじめる、
女官長は、バルトロメウスを通していいか、とは訊ねなかった。場所は少女帝の私室、約束なしの、日が沈んだ時刻の訪問であるにもかかわらず。
そして、ジークリンデはそのことを疑問に思わず、バルトロメウスがやってくるのを当然のこととして受けいれている。
ダヤン一族がやってきた上は、いかなる理由があろうとも、それを追い返すという選択肢はない。女官長も、そしてジークリンデも、そのことを承知しているゆえの行動であった。




