第五章 リンドブルム(四)
カイは順をおって自らの作戦を説明していく。
「先刻、噂をまくついでに西門を偵察してきてもらったのですが、それによればアルセイス軍はすべて騎兵、数は千から二千の間とのこと。そのときは指揮官が誰かをつかむことができませんでしたが、パルジャフ卿のおかげで第三将軍テオドールだとわかりました。上級将軍が率いるには、二千という数は少なすぎます。おそらく当初のアルセイスの作戦では、騎兵のみで長駆してドレイクを奇襲し、西門から評議会館までを一気に落とすつもりだったのでしょう。しかる後、南から北上してくる主力部隊と合流し、ドレイクを完全に制圧する。これが作戦の骨子だったと思われます」
インの行動や紅金騎士団の攻撃もあって、その目論見はうまくいかなかった。
だが、それでアルセイス軍の脅威が消え去ったわけではない。テオドールという驍将に率いられた二千の騎兵だけでも十分に厄介だが、南から迫っているであろう敵主力が入城すれば、今のインたちでは太刀打ちできない。
彼らが到着する前にドレイク内部を制しておく必要があった。
今のリンドブルムの兵力は、セーデの兵とパルジャフの私兵、奴撲をあわせて三十と少ししかない。パルジャフ邸の戦いで、パルジャフの兵もほぼ半減している状態だった。
あらためて考えるまでもなく、これでは都市を掌握する人数としては少なすぎる。
「仮にですが、パルジャフ卿が目星をつけている方々がすべて呼びかけに応じてくださったとして、どの程度の兵が集まりますか?」
カイが問うと、パルジャフは黒髯をしごきながら応じる。
「ふむ……全員が応諾してくれれば、五百にかろうじて届くだろう。ただ、これは全員が応諾し、かつ惜しみなく全力を投入してくれたらの話だ」
「ありがとうございます。つまり、今の僕たちはどれだけ幸運が重なったところで、実際に動かせる兵力は五百程度ということになりますね。しかも、これらの動きをアルセイス軍やシュタール軍が見逃すはずがありませんから、この五百をセーデに集めるのは一苦労でしょう」
この条件でテオドール・フルーリー率いる二千の部隊を城外にたたき出さねばならない。紅金騎士団やカロッサ伯の残存部隊、さらにはこちらに従わないドレイク守備隊も同様である。
カイの説明を聞いていたセッシュウが、思わずというように苦笑した。
「詮ずるところ、夜討ち朝駆け虚騒動、となりそうですな」
「奇襲暗殺地下潜も入れておくか」
いかにも楽しげに笑いながら、インがセッシュウに同意する。
彼我の兵力差は隔絶しており、正面きって戦っても勝ち目はない。であれば、これまでどおり神出鬼没の賊となって奇襲、陽動を繰り返し、敵の指揮官を狙うしかなさそうであった。
インたちが他勢力より有利な点の一つは、地下水路の構造を把握していることである。特に貧民窟付近の水路は評議会も未知の領域であり、必然的に評議会に所属していたブリスも知らない。これを利用してアルセイス軍の急所を突くことができれば、勝利をたぐり寄せることができるかもしれない。
しかし、カイはこの案に懐疑的であった。少なくとも、何の策もなく奇襲をしかけたところで効果はないだろうと考えている。
「名にしおうアルセイスの驍将がこの状況で警戒を怠るとは考えにくいです。ブリスは撲たちとセーデの関わりを知っていますから、セーデに対する監視も行っているでしょう。地下水路からの襲撃にも備えているはずです。水路の詳しい構造はわからなくても、出入り口に兵を配しておけば奇襲を防ぐことはできますからね」
「それはそのとおりだろうが、ではどうする? カロッサ伯の首を持っていって、テオドール将軍に目通り願うと一芝居うってみるか?」
冗談なのか、本気なのか、インがそんな計画を口にする。
カイは首をかしげて問いかけた。
「芝居とはいえ、テオドール将軍に平伏できますか、イン?」
「無理だな」
「カイ師。わしが赴くというのはどうであろうか」
「セッシュウ殿はブリスに顔を見られているではありませんか。気づかれたらおしまいです」
「キルは?」
「キル君の場合、まずアルセイス兵が信用してくれないだろうね」
ふむう、と三人そろって残念そうに首をひねる姿を見て、傍らのパルジャフは目を瞬かせる。
カイはこほんと咳払いして先を続けた。
「結局のところ、問題となるのは数の差です。相手と互角か、それ以上の数を味方につけて、はじめてテオドール将軍の身に迫ることができるでしょう。これまでであれば『言うは易し』でしたが、今の僕たちにはこれを可能ならしめる手札があります」
カイの視線がパルジャフに向けられる。それに気づいたパルジャフの眉間のしわがわずかに深くなった。
「先にも申したが、わしが集められる人数は最大で五百に届くかどうかといったところだ。二千を超える数を集めるのはまず無理であろう」
あるいは、議長として行動しろ、と求めてくるつもりであろうか。
そう考えたパルジャフは内心で身構えたが、カイが口にしたのはパルジャフの予測とはまったく異なることであった。
「パルジャフ卿には檄文を書いていただきたいのです」
「檄文……?」
相手の意図がつかめず、パルジャフは眉をひそめる。
カイはうなずくと、穏やかな声音で説明をはじめた。
「アルセイス軍の侵略行為、そして議長に協力を求めると見せかけて謀殺に及んだ手口。いずれも非道を訴えるには十分な要素になります。かの国の支配に屈するべからず、侵略者を駆逐するため、誇りある者はただちに武器をとって立ちあがれ、と記した書状をできるだけ多くの有力者に送りつけます。すべての評議員、百人隊長以上の守備隊の指揮官、教会や商家、ギルドも含めて、できるかぎり大勢に」
それこそ、ドレイクの全住民の耳に届くように盛大にアルセイス王国を非難する。
それは同時に、いまだ乱の詳細を知らずに右往左往している住民に真実を伝えることでもある、とカイは言う。
「ほとんどの市民はいまだに何が起きているかわからず、不安に思っているはずです。パルジャフ卿の檄文は、彼らが欲してやまなかったものを与えることになります。情報は乾いた砂が水を吸うようにドレイク中に染みわたっていくことでしょう。それは檄文の内容が速やかに都市の隅々にまで行き渡ることを意味します。陋劣な手段を用いて議長を殺し、ドレイクを奪おうと画策したアルセイス軍に対する強い敵意がわきあがるのは時間の問題です」
つまるところ、カイの狙いは十万をこえるドレイク市民を扇動することにあった。
アルセイス軍の主力部隊さえおよばぬ圧倒的な数、これにアルセイス王国への敵意を植えつけることができれば、テオドールといえども安穏としてはいられない。
――そこまで言ってから、カイはやや苦笑まじりに言い添える。
「といっても、市民とアルセイス兵を戦わせるようなことはしませんよ」
カイの視線の先には目を三角にしたパルジャフがいる。
市民思いの議長は、カイが市民とアルセイス兵を戦わせようとしているのか、と考えて憤慨していたのである。
むろん、カイにそのつもりはない。情報を操って民を踊らせ、これを敵兵にぶつけて漁夫の利をかすめとるような策は、カイの採らざるところである。
リンドブルムの軍師がつくりあげようとしているのは「議長を卑劣な手で謀殺しようとしたアルセイス軍が、十万市民の敵意に囲まれて孤立する」という状況であった。
もっといえば、その認識を敵将テオドール・フルーリーの胸に植え付けることにある。
それまで黙って話に聞き入っていたインは、ここでようやくカイの思考に追いついた。
「……なるほど。テオドールの手に檄文が渡れば迷いが生じるな。市民が議長の檄に応じたら、二千程度の兵ではどうにもならない。檄文が偽りであれば言い解く術もあるが、パルジャフとブリスが顔をあわせているのだから誤魔化しようがない。そうなれば西門を捨てて本隊に合流しようとする――いや、そう上手くは運ばないかな。それでも、選択肢の一つとして退却を考慮するくらいのことはありえるだろう」
そうなれば、アルセイス兵の警戒は住民たちに向けられ、必然的にインたちへの警戒は緩む。
そんな状況でインたちがアルセイス軍に攻撃を仕掛ければ、さて、テオドールはどう考えるだろうか?
ぽん、と手をうったのはセッシュウである。
「ふむ! いよいよ檄に応じた市民が攻めてきた。こいつはいかん、となるかもしれませんな。侵略者はでていけ、とでも叫べば効果は覿面というもの」
「でていけー」
キルがぽやっとした顔で右手を掲げる。先ほどから小難しい話ばかりで退屈だったのかもしれない。
ともあれ、ひとたび市民の間で「アルセイスは敵」という認識が確立すれば、そのアルセイスと刃を交える者は「ドレイクの味方」という図式が成立する。
今後、リンドブルムが民心を収攬する上で重要な一手となることは疑いない。
そういった諸々を考慮した上での「檄文」であった。
◆◆
「……しかし」
ややあって、パルジャフが重い口を開いた。先ほどの憤慨はすでに表情から消えていたが、かわって別種の危惧が浮かび上がっている。
「実際に檄を飛ばせば、血の気が多い輩が先走ってアルセイス兵と揉め事を起こすかもしれぬ。そうなれば、こちらの思惑の外で血が流れる事態も起こりえよう。ひとたび衝突が生じれば、騒ぎは瞬く間に広がる。これを静めるのは容易なことではない。今の策を聞くに、檄文はテオドールの手元に渡るものだけで足りるのではないか?」
これを聞いたカイはかぶりを振る。
「書状の内容の確認もとらずに進退を決するような人物が、アルセイスの第三将軍にまで上り詰めたとは考えにくいです。卿の懸念は理解できますが、テオドール将軍を欺くためには、すべてにおいて本気でかからねばなりません」
その結果、市民に被害が出る恐れは確かにある。最悪の場合、アルセイス兵による虐殺さえ起こりかねない。
しかし、それを恐れて策の細部をおろそかにすれば、瞬く間にこちらの狙いを看破されてしまうだろう。
それほどの相手である、とカイは考えていた。
くわえてもうひとつ、カイには実際に檄文をばら撒かねばならない理由があった。
他でもない、インがカロッサ伯を討ち取った事実をうまく処理する必要があるのだ。
ドレイクにとってアルセイス王国はまごうことなき侵略者であるが、シュタール帝国は統治者であり、これを討ち取って評議会館を炎上させたインの行いに正当性は一切存在しない。
襲撃の際、インとキルは顔をさらしていたので、頬かむりを決め込むこともできぬ。
民心に配慮などせず、力ずくで統治する手もある。
だが、それでは要らない時間がかかる上にパルジャフの離反を招きかねない、とカイは考えていた。
どうせなら、アルセイスに対してそうしたように、シュタール軍を敵にまわした行為がドレイクのためである、という理屈をつくりあげてしまいたい。
そして、カイはすでにこれを考え付いていた。
「侵略者討つべし。この理屈はアルセイスだけでなく、カロッサ伯をはじめとしたシュタール軍にも通用します。カロッサ伯は明白な証拠なくしてドレイクの自治権を奪い、強権によってこれを統治した。ためにドレイクはおおいなる混乱に晒されました。伯爵は評議会の権限を奪って我が物とし、商いの統制を強化して交易の基盤を打ちこわし、パルジャフ議長を幽閉状態に置き、さらに王国派評議員ならびにその家族を無残に殺戮しました。その振舞いはまさしく悪辣な侵略者そのものです」
ドレイクをシュタール帝国の一都市としてみた場合、この理屈は通用しない。
しかし、ドレイクを『自由都市』としてみたならば。自治権を持つ一個の都市としてみたならば、この二国はいずれも侵略者として位置づけることができる。
むろん『自由都市』の宗主国がシュタール帝国である事実は動かないが、その宗主国から遣わされてきたカロッサ伯の行いが、ことごとに市民生活をかき乱し、不満を醸成していたのも否定できない事実である。
カロッサ伯がドレイクに来てからまだ一月も経っていないというのに、市街、市場の様相は一変してしまった。この先どうなるのか、という不安を抱えていない市民はひとりもいない。
そこにきてのアルセイス軍襲撃である。剣戟は絶えず、悲鳴はやまず、それでいて何が起こっているのかは一向に分からない。人々の不安、不満は頂点に達しつつある、とカイはみていた。
これは千載一遇の好機である。
嘘偽りではなく、事実をもってドレイク市民の感情を沸騰させ、アルセイス軍もシュタール軍も侵略者であるという認識を確立させる。
そうすれば、この両軍を相手どったリンドブルムの戦いは、すべて自由都市のためであるという図式が成り立つ。
カロッサ伯を討ち取ったことも、議長であるパルジャフを救ったことも、そして、アルセイス軍を討つことも、等しくドレイクを守るための行動である。
疑う者はパルジャフを見るがいい。リンドブルムにくみした議長の決断こそ、自由都市を真に守護するものが誰であるかをはっきり示しているではないか!
最後に、カイは次のように付け加えた。
「熱した感情はいずれ冷めるものです。冷静になれば、カロッサ伯を討ったインを戴く意味に気づく者も出てくるでしょう。けれど――」
「そのときにはもう、事態は後戻りできないところまで進んでいる。いや、後戻りできないところまで進めてしまうわけだな」
インの言葉にカイはこくりとうなずいた。
二人の会話を聞いていたパルジャフは、何といってよいやらわからずにやたらとヒゲをしごいていたが、やがて観念したように重い重いため息を吐いた。
「……つまり、檄文の半分でアルセイスを、もう半分でシュタールを非難するわけか。今のドレイクの混乱は二大国の非道と横暴が招いたものである、と。そして、それらを打ち払わねば、今後、このような状況がいつまでも続くことになる、と市民に訴えるのだな」
「はい」
「それをもって自勢力の正当性を確立する、か……すべて事実であるだけに、否定もできぬし拒否もできぬ。事実に勝るものなし、とはよくいったものよ」
パルジャフがそう言うと、カイは申し訳なさそうに頭を下げた。市民に被害が及びかねない策をパルジャフが嫌うことはわかっていた。カイとしても、他に策があるならそちらを選んだであろうが、今の状況ではこれ以上の案は浮かんでこない。
できることがあるとすれば、不測の事態が生じぬよう、アルセイス軍へ仕掛ける時期を早期に定めるくらいであろう。これは戦いを望むインの意向に沿うことにもつながる。
そう考えるカイの顔を、パルジャフは奇妙な目つきで眺めやっていた。
眼前にいる一見柔和なこの青年、実はインと同じくらい厄介で危険な人物なのではあるまいか。かつてのドレイク議長の胸に、そんな疑いが兆したのである。
インあたりがこれを聞けば、何をいまさら、と呆れまじりに肩をすくめたに違いなかった。
◆◆◆
現在、ドレイクに駐留しているシュタール軍の部隊の中で、ドムス・エンデ率いる紅金騎士団はおそらく唯一まともな秩序を維持している部隊であった。
西門でアルセイス軍に一撃を加えた後、ドムスは奇襲の利に固執することなく戦場を離脱した。時間をかければ数にまさるアルセイス軍に取り囲まれることが目に見えていたからであり、実際に離脱の際にしたたかな反撃をくらっている。被害は五十あまりだが、あと少しあの場にとどまっていたら、この数は倍にも三倍にもなっていただろう。
「テオドール、か。リシャールめを討ったと聞いたときには愚か者よとあざ笑ったものだが、なかなかどうしてやりおるわ」
アルセイス軍では人材が育っている。それを実感したドムスは、大貴族同士が小ざかしい駆け引きを繰り返している自国の状況を情けなく思った。
アルセイスもアルセイスで、中に入ってみれば帝国と似たような問題を抱えているのかもしれないが、帝国軍に属している分、ドムスの目には自国の欠点がよく見えてしまうのだ――自分がその大貴族の走狗に過ぎない、という現実も含めて。
苛立たしげにかぶりを振ったドムスは、あらためて部下に確認した。
「カロッサ伯とはまだ連絡がつかぬか?」
「は、いまだに杳として行方がつかめませぬ。どうやら評議会館が落ちたのは間違いないようですが……伯爵の配下も戸惑っており、我らの指揮に従うことに異存はないとのこと」
紅金騎士団は南門から離れて西門のアルセイス軍と戦った後、時計回りで北門へとやってきた。そうして半ば無理やり北門を開けさせると、守備をしていたカロッサ伯の手勢を押しのけるように、ここに腰を据えたのである。
カロッサ伯の部下たちがこれに従ったのは、情勢が定かならぬ今、正面きって紅金騎士団と反目するのは得策でないと考えたからだろう。上官の安否が明らかになれば再び態度を翻すであろうが、ドムスとしては今おとなしくしていてくれれば、それ以上望むことはなかった。
「ふむ、それは重畳といいたいところであるが、事ここにいたってはのんびりもしておれぬ。北門の守備隊長に書状を書かせ、市街の帝国軍各部隊は北門に集結せよという触れをまわせ。ドレイクの守備隊にもだ」
「かしこまりました――しかし、千騎長。それではカロッサ伯が見つかった折、問題になりはしますまいか?」
「かまわん。賊の撹乱程度ならいざ知らず、アルセイス軍に城門を落とされたのだ。後のことを考えている暇はない。急げ」
「は、承知いたしました! ただちに!」
駆け去っていく部下を見やったドムスは、誰の耳にも届かない低い声でつぶやく。
「カロッサ伯はこの戦況で自らの所在の通達を怠るほど迂闊ではあるまい。となると、すでに討たれたか、捕虜になったか」
いずれにせよ、指揮をとれる状況ではないと判断せざるをえない。ドムスとしてはそれを念頭にいれて行動しなければならぬ。
まず第一に確保しておくべきは北門であった。ここさえ押さえておけば、兵と民をアルシャート要塞に逃すことができる。アルシャートからの援軍を城内に迎え入れることも可能だった。
ただ、現在アルシャートに待機しているのは大半がドルレア公の軍勢であり、彼らはカロッサ伯の要請には応じても、千騎長に過ぎないドムスの命令はきかないだろう。詳しい状況を説明しようにも、ドルレアク公と紅金騎士団長ルドラは、国内の叛乱を鎮定するために別方面に出兵しており、使者の往復だけで数日はかかる。とてものこと、この戦況には対応できない。
カロッサ伯を襲撃した相手がそこまで計算していたとは思わないが、計算していようといまいと、帝国軍が指揮系統および作戦展開に関して浅からぬ打撃をこうむった事実は動かせない。
今、ドムスがやっていることは被害を最小限におさえる努力であって、戦況を挽回するための行動ではなかった。
「なにはともあれ、情報を集めねばなるまい」
敵の姿が霧の中に隠れているままでは剣の振るいようがない。まずは敵の姿を見極めることだ、とドムスは考えを定めた。アルセイス軍と、おそらく他にもう一ついる。
「評議会が策動しておるのか、それともまさか、ラーカルトを討って増長した緋賊が出張っておるのか?」
そのドムスの疑問は、ほどなくしてパルジャフの檄文という形で明らかになるのだが、この時点では予測しようもない。
紅金騎士団の千騎長は、何度目のことか、苛立たしげに肩をゆすった。




