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僭王記  作者: 玉兎
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第四章 ドレイク擾乱(二)


 セーデから火の手があがる二日前のこと。

 自室に一人の少女を迎え入れたインは、相手の言葉を聞いてわずかに目をみはった。

 目の前で座っている相手に対し、確認するように問いかける。

「セーデに残りたい、というのか?」

「はい」

 硬い表情に硬い声。見るからに緊張している様子だったが、それでも視線だけはしっかりとインに向けられている。どうやら本気で言っているらしい、とインは見てとった。



 その少女――リッカの申し出はフェルゼンへの移住を拒み、セーデに残りたいというものだった。

 それ自体は何の問題もない。いや、むしろありがたいくらいのものである。

 フェルゼン移住が終わればセーデに残るのは兵士ばかりとなる。食事の用意から掃除、洗濯にいたるまで兵士だけで済まさねばならなくなるのだ。当然、戦いが激しくなれば、それらに手をつけている暇はなくなる。リッカのような働き者が残ってくれれば助かるのである。

 とはいえ、カロッサ伯による王国派の掃討が進められている現在のドレイクは、平穏とは対極の方向へ疾走している状態であり、そのドレイクに残ることの危険は言をまたない。



 争乱を心から忌避し、インに対して不満と不安を抱えていたはずのリッカが、どうしてこのようなことを言い出したのか。インならずとも驚きを禁じえないだろう。

 祖父セッシュウスズハからセーデに残るよう言われた、とは考えにくい。他に思い当たることといえば、先日ツキノと話をしたことだが、あのときの会話に今の状況につながるような要素はなかったと断言できる。

 さて、どうしたものか。

 インは内心でそんな呟きを発した。




「残りたいというなら構わない。むしろありがたいくらいだが、念のために言っておく。これからセーデは戦いの真っ只中に置かれることになるぞ」

「わ、わかっています……でも、だからこそ、あたしみたいな子供でもお役に立てると考えましたっ」

 懸命な面持ちで言い募るリッカは、彼女なりに現状を正確に把握しているようだった。

 その上で恐れを押し殺し、こうしてインの前にやってきたのだとすれば、大した忠義だと称えるべきだろう。

 だが、リッカの性格やこれまでの態度からいって、この解釈が間違っていることはさすがにインでもわかる。そして、まったく同じ理由で、リッカがインの機嫌をうかがっている――おもねっている――こともありえない。

 つまるところ、リッカの申し出の心底にあるものが、インにはさっぱり分からなかった。




 どういう風の吹きまわしかと訝しく思ったが、前述したように申し出自体はありがたいものだ。であれば、あえて内心を詮索する必要もあるまい、とインはあっさり割りきった。

「では、よろしく頼む」

「は、はいッ!」

 思わず、という風に背筋を伸ばして大声で返事をした後、リッカは戸惑ったようにインを上目遣いでうかがった。

「……あの、それだけ、でしょうか?」

「ん?」

 怪訝そうに視線をかえすと、リッカはあわてたように顔をうつむかせた。

「ど、どういう風の吹きまわしか、と訊かれるものと思っていました」




 今回のことはリッカにとって一大決心だった。

 戦いへの忌避も、インの行動に対する不安も胸に残っている。祖父の口からフェルゼンという土地への移住を聞かされたとき、喜んだのはまぎれもない事実だった。

 しかし、その準備を進めていく最中、ひとつの疑問がリッカの中に兆した。

 なんというか、偶然にしては都合が良すぎる気がしたのだ。



 慕っているアトに対して、いつまでも戦いをやめようとしないインへの不安を吐露したのはつい先日のこと。それについては祖父や母とも話をした。

 ツキノの身体の状態、さらに行方不明であるサクヤのことを考えれば、カクラ一族は今の段階で緋賊を離れるわけにはいかない。これはリッカにも理解できたし、いかに現状がつらいとはいえ、家族を残して自分ひとりセーデを離れるつもりはなかったから、緋賊に残ること自体に異論はなかった。

 それに、他にも残る理由がないわけではない。

 アトにいったように、リッカの中にはインに対する不安がある。不信もある。同時に、奴隷の身から助けてもらった恩も、家族と再会させてもらった感謝も、しっかりと根付いているのである。



 そんなところに、突然ふってわいたようにフェルゼンという名前が持ち出されてきた。

 ドレイクの外にある新しい土地。当然、そこにはそこで様々な苦労があるに違いないが、セーデにいるよりは戦いから遠ざかることができるだろう。

 実際、インはフェルゼンを襲撃の拠点とするつもりはなく、緋賊との関わりを匂わせるものはできるかぎり排除し、あくまで新興の開拓村として非戦闘員を養う場所にする計画だった。

 そこでならば、戦いとは関わりを持たない形で恩返しをすることができる。

 リッカとしてはまさしく願ったりかなったりといったところで、喜びを禁じえなかったのだが――




 リッカはちらとインの顔をうかがった。

 もしかしたら祖父やアトがこの人に対して何か働きかけてくれたのか、とも思ったが、まさかそのためだけに新しい拠点を設けたりするはずがない。土地の取引に多大な金銭と労力が必要なのはリッカでもわかる。

 だから、フェルゼンに関してはただの偶然だろう、とリッカは結論づけていた。

 一方で、偶然の一語で片付けられない箇所もある。

 今回の移住に関しては、リッカとツキノ、祖父と母、つまりはカクラ一族は全員が移住組に含まれていた。当人たちの意思を問うことさえせず、はじめから決定という形で。



 セーデに残るのはインやキルをはじめとした戦闘員ばかりであり、女子供は残らずフェルゼン行きと決められていたので、これもまたリッカたちのことを慮っての決定というわけではないのかもしれない。

 だが。

 先日、妹から聞いた話がリッカの脳裏によみがえる。

 スズハの料理は舌に合う、とインは笑いながら言っていたという。

 移住後の本拠に人手が必要なのは今しがたのインの言葉からも明らかである。ならば初めから母はセーデに残るように、と命じればよさそうなものだ。そうすれば食事についても無駄に煩わされずに済むだろう。



 言葉をかえて言えば、あえて母をフェルゼンに送る理由がインにはない。

 だというのに、インはさも当然のごとく、カクラ一族をフェルゼンに送ると決めた。他の人たちと同じように――つまりは何ら恩を着せる言動なしに、カクラ一族にとって最良の決断を下してくれたのである。




 ……もしかしたら全部自分の考えすぎかも、とリッカは思わないでもない。

 しかし、仮にそうだとしても、ただでさえ返しきれない恩がある相手に、これ以上一方的にお世話になるのは心苦しかった。

 幼いリッカはどうしたところで祖父や母ほど緋賊に――インに貢献することはできないが、人手不足の今であればそれができる。ならば行動するべきだろう。自分だってカクラの一族なのだ。恩に報いるのが祖父や母でなくてはならない道理はない。

 その決心はリッカの中にあるわだかまりをたやすく凌駕し、そうして、カクラ家の長女はインのもとへとやってきたのである。





 リッカとしては、これまでの態度も含め、インから色々と問いただされるだろうと身構えていたのだが、予想に反してインは何もたずねようとせず、それどころか「よろしく頼む」とまで口にした。

 リッカの行動を子供の気まぐれだと思っているのなら、そんなことをいう人ではない。

 ということは、多少なりとも自分の行動や決意はインの役に立っているのだろうか。リッカはそんなことを考え――そこで唐突に部屋に満ちる沈黙を意識した。



 思いのほかあっさりと残る許しを得たことで張り詰めていたものが抜けていく。

 かわりに浮かびあがってきたのは、これまでと同じ苦手意識であった。

 冷静に考えてみれば、とリッカは内心でわたわたしながら思う。

 余人を介さずにインと向かい合い、言葉を交わすなどほとんど初めてのこと。話の接ぎ穂を失ったリッカは気まずそうに押し黙るしかなく、そんなリッカの姿を、インはどこか機嫌よさげに見つめていた。




◆◆◆




 そうして二日後。

 この時のことを思い出していたインは、カイから不思議そうな顔で問いかけられた。

「どうしたんだい、イン。なんだかとても機嫌が良さそうだけど?」

「いやなに、カクラの一族はそろいもそろって傑物ばかりだと思ってな」

 質問と答えがやや乖離しているように思えたが、インの言わんとすることを察したカイは、こちらも楽しげにうなずいた。

「リッカ君の決断を受けて開かれた家族会議で、全会一致でセーデに残ることが決まったんだってね。ヘルミーネ殿も帝国に庇護を求めることはやめてフェルゼンに向かわれたし、これは頭目の人徳の為せる業だといわざるをえないんじゃないかな」

「ふん。人徳の意味を調べてこいといわざるをえないな。それに、ヘルミーネに関しては俺というよりアトを頼ってのことだろう」 



 アトが実はシュタール帝国の第一皇女アーデルハイトその人であった――という話は、すでにアト自身の口から緋賊の主だった者たちに伝えられていた。

 その際にヘルミーネもこの事実を知ったらしいのだが、どうやらラーカルトの妻はうすうすこのことを察していたようで、あまり驚いてはいなかったそうだ。子爵家の娘であったヘルミーネは、どこかで第一皇女の顔を間近で見る機会があったのかもしれない。



 そのアトは二十名あまりの兵と、五十名近い非戦闘員を率いてフェルゼンへ向かっていた。案内をつとめるのは、先行してフェルゼンの状況を確認してきたゴズである。道中で何事もなければ、一行は今日明日にもフェルゼンに到着するだろう。

 他方、セーデに残った者の構成はどうなっているかといえば、戦える者はインにキル、カイとセッシュウを含めて十名あまり。リッカやスズハら非戦闘員を含めても、総人数は二十名に届かない。

 戦力不足、人手不足は隠しようがなく、当面の間は都市の情勢を静観し、時節を待つのが得策である――普通ならばそう考えそうなものであったが、あいにくと緋賊の頭目も、参謀も、あまり普通とは言いがたい性格と能力の持ち主だった。

 当然のように、こんな状況でも二人は策動している。




「ここまで派手に動いた以上、シュタールとしてはもう完全にドレイクを直接統治するつもりだね」

 カロッサ伯による王国派議員掃滅が本格化していく最中、カイはインに対してそう言った。

 二大国激突のきっかけとなりかねない強攻策。あえてそれを選んだあたりにドルレアク公爵の強い意志が感じられる。

 ただ、これだけの行動がドルレアク公の独断で起こされたとは考えにくいので、シュタール宮廷も諒承済みの作戦とみて間違いないだろう。



 これまでドレイクの自治を尊重する姿勢を崩さなかった帝国政府――ダヤン侯爵が態度を翻した今、ドレイクをとりまく政治情勢は大きく変化した。

 帝国はあくまでドレイクの自治を認めず、ドルレアク公領の一都市としての立場を強制してきている。

 これに従えばドレイクは『自由都市』という繁栄の源泉を失ってしまう。では、逆らえばどうなるのか。



 孤軍でシュタール軍と戦う力はドレイクにはない。したがって、アルセイス王国に助力を求めることになるだろうが、アルセイス王国にはドレイクの自治のために兵を出す理由がない。

 援軍と引き換えに臣従ないしそれに近い政治的譲歩を求めてくるだろう。

 そう。結局のところ、どちらを選ぼうとも従属する国がかわるだけで、ドレイクの自治と繁栄は失われてしまうのである。

 そうなれば多くの商人は都市を離れ、ドレイクはありふれた地方都市のひとつになりさがる。挙句、シュタールとアルセイス、両国が境を接する最前線の都市として、戦闘が絶えない兵乱の地になりはててしまうだろう。




「それは自由都市ドレイクの死と同義。パルジャフ議長は今ごろ頭を抱えているだろうね」

 カイは同情するように言った。

 為政者としてのパルジャフの能力は両国にとって有用であり、たとえドレイクが衰退しようと、パルジャフ自身はいずれかの国で栄達することができる。それこそいずれは宰相の地位までのぼりつめるかもしれない。インと同様、カイもパルジャフのことは高く買っているのである。



 しかし、あの議長がそういう意味での出世を求めていないことは、これまでの行動からも明らかであった。

 パルジャフが求めるのはドレイクの繁栄であり、そこに生きる人々の平穏な暮らしを守ること。

 だが、現在の情勢では、そのいずれもかなえることはきわめて困難だ。シュタール帝国につこうと、アルセイス王国に従おうと、ドレイクの将来は暗雲に覆われている。

 であれば最後の手段、独立派の名称どおりに両国の支配をおしのけ、かつてのリンドドレイク王国を再興するしかないのだろうか?

 これは論外だった。独立を宣言した瞬間、シュタール軍によって叩き潰されるのは目に見えている。最悪の場合、シュタール軍とアルセイス軍に挟撃され、ドレイクは業火のうちに滅び去るだろう。




 現在のドレイクが置かれた状況は、控えめにいっても八方ふさがりといったところ。そのことをカイは順をおって丁寧に説明していく。

 インははじめこそ素直に耳を傾けていたが、途中からカイを見やる目は胡乱うろんげなものになっていった。経験上、カイが長話をするときは、たいてい何らかの悪だくみがくっついてくることを知っていたからである。



「――で、何を企んでる? ここで俺なりお前なりがパルジャフのもとに足を運んだところで、向こうは聞く耳をもたないと思うが」

「そうだね。議長は慎重で物堅い人だ。現状は理解しているだろうけど、だからといって昨日までの宗主国にいきなり反抗しようとは考えないと思う。たぶん、これまでの人脈を駆使して、粘り強く交渉した上で状況を変えていこうとするだろうね。帝国から自治を勝ち取ったときのように、もう一度シュタール宮廷を説き伏せることができれば、無駄な血を流すことなく事態を解決することができる」



 おそらく、パルジャフの能力をもってすればそれも不可能ではない。

 一時的に自治を失い、ドルレアク公領になることは避けられないだろうが、時間をかけて自治を再獲得することはできるだろう。単純な話、ドルレアク公とダヤン侯の決裂を待って事を起こせばいい。両者の協調が一時的なものでしかないことは、火を見るより明らかなのだから。



 しかし、それではインにとって益するところが何もない。

 今回の騒乱は緋賊にとって飛躍の刻――『賊』という殻を叩きこわし、名実ともに一個の勢力として大陸史に名乗りをあげる絶好の機会である。

 それは同時に、パルジャフ・リンドガルを麾下に招く無二の好機でもあった。みすみす見逃す手はない、とカイは言う。



「パルジャフ議長が加われば、僕たちの影響力は飛躍的に増大する。ドレイク兵の一部も麾下に入るし、もちろん議長個人の力も頼りになる。インとしても願ったりかなったりだろう?」

「それは否定しないが」

 カイが戯言を弄する人間でないことは重々承知しているインだったが、それでも表情に疑わしげな感情が混ざるのは止められなかった。

「パルジャフが口先だけで動く奴じゃないことはわかってるだろうに」

「そうだね、議長は口先だけで動く人じゃない。だから、今日の行動で議長のもうひらくことにしよう。シュタール帝国よりも、アルセイス王国よりも強大な存在がすぐ足元にいると気づかせるんだ。その上で僕たちが両国よりもドレイクに益するとわかれば、議長の前に新しい選択肢がうまれるよ」



 ふん、とインは鼻で息を吐き出した。

「今日の行動、ね。具体的には?」

「カロッサ伯爵がいる評議会館を強襲する、というのはどうかな。どうせインもセーデでじっとしているつもりはなかったでしょ?」

 さらっととんでもないことを口にしたカイに対し、インはもう一度鼻息を吐いた。

「やる気まんまんだな、カイ」

「それはもう。なにしろ僕のご主君が見るからにやる気まんまんだったからね。相応しい策を考えておかないと、役立たずの烙印をおされてしまう」



 人員の大半をフェルゼンに移したことでセーデの人数は大幅に減じたが、見方をかえれば、それだけ非戦闘員が減り、身軽に動けるようになったということでもある。

 これまではセーデに敵兵を呼び込まないよう、行動にある程度の制限を加えなければならなかったが、今のインにその枷はない。カロッサ伯の登場でドレイクが混乱していく最中、インがフェルゼン移住に注力していた理由の一つを、カイは的確に見抜いていた。



 また、戦術的な面から見ても、今の状況でセーデに引っ込んでいることは下策だった。

 カロッサ伯が緋賊やセーデの情報をどの程度把握しているかは定かでなかったが、こちらが動かなければ向こうも動かないと考えるのは楽観的に過ぎる。人数に劣るインたちが守りに徹したところで出来ることはかぎられており、百、二百の兵で攻められてしまえば対処することは難しい。

 逆に、こちらから打って出て敵を引っかきまわしてしまえば、敵はセーデを攻めることより自分たちの守りを固めることを優先する。攻めることが守ることにつながるのである。



 カイはカロッサ伯爵を討ち取れとも、評議会館を占拠しろとも言っていない。

 カイの狙いは少数の兵をもって多数を撹乱すること。常に先手をうち、戦いの主導権を握り続けること。

 緋賊の本拠がセーデにあることを知っている者も、緋賊の総数までは把握していない。インたちが動けば動くほどに緋賊の像は巨大になっていく。それは実を伴わない虚像であるが、やりようによっては虚ろな像に実体を与えることもできるのだ。



 その実体というのがパルジャフの参入であることは、インならずとも理解できる。

 要するにカイは、インが思う存分暴れている間にパルジャフと会って「これこのように僕たちには帝国と戦えるだけの力があります」と主張し、議長を味方に引き入れるつもりなのだろう。

 インはそれを一言でまとめてみせた。

「やっていることは詐欺同然だな」

「詐欺なんてとんでもない。インが今日まで積み重ねてきた成果が花開くだけだよ。根もあれば幹もある、立派な交渉さ」

「……まったくもって意味がわからないんだが?」

「こういうとき、もったいぶったことを言うのは軍師の特権だね」



 にこにこと笑うカイをインは渋面で睨んでいたが、すぐに気を取り直したように小さく息を吐き出した。

 今はカイの目論見がどうこうよりも、ドレイクを我が物顔で闊歩しているシュタール兵を追い払うことが先決だと思い直したのである。

 このあたり、カイに見抜かれていたように、インは移住が済み次第すぐにでも動くつもりだった。

 実のところ、インは当初からカロッサ伯爵のやり方には腹を据えかねていた。パルジャフのようにドレイクに対する責任感はなくとも、自分の庭を荒らされる不快感は明確に存在する。なにかと気にかけていたリムカを危うく殺されそうになった事実もこの感情に拍車をかけていた。

 むしろ、動かない理由がない――今のインはそんな心境だったのである。




 かくて、自由都市ドレイクの内で、外で、幾人もの人間が幾つもの思惑を抱きながら、それぞれに行動を開始する。

 セーデ区から数条の黒煙がたちのぼったのはこれから数時間後のことであった。



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