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マグノリア  作者: 胡子
1/1

北の海を覆う流氷の下には、冷たい海流が激しく渦巻いています。

そこには魚たちでさえ迂闊に近付けません。

もし人間が迷いこんだなら、一瞬で心臓が凍ってしまうでしょう。

そして、その骸は二度と浮かび上がること無く、深く深く海の底へと沈んで行くでしょう。


でも、もしも。

如何なる神の御加護かあなたの心臓が持ちこたえる事が出来たならば。

あなたは昼も夜も無い闇よりも暗い深海の底に、光輝く真珠の国を見ることでしょう。


そう。それはあらゆる魚より、いや人間より強靭な躯と、等しく知恵を持つ海の覇者。

人魚の国なのでした。


その真珠の国には一粒種の王女がいました。美しく、そして他の人魚の若者に負けず勇敢な王女でした。

王女はゆくゆく真珠の国を受け継ぎ、人魚たちを導いていくことを期待されていました。

そして王女も当然そのつもりでした。

だから、王女は放って置けなかったのです。

自分達の海に起こりつつある異変を。



その異変は数年前から始まりました。

ある河口から、河に住む魚や小さな巻き貝などの死体が海に流込むようになりました。

それ自体は特に気に止めるような事ではありませんでした。

海とは違って季候の変化が起こりやすい陸の世界では、一度に多くの生き物が死ぬこともあるのです。

それから黒い土砂が流込むようになりました。

今までも大雨の後に土砂が流込むことがありました。

それは山の養分をたっぷり含み、海草の良い肥料となりました。

良く育った海草は、稚貝たちの餌になり、その年の海の実りを豊かにしてくれるのです。

しかし、黒い土砂は違いました。

初めは少量でした。

だから誰も気が付かなかったのです。

黒い土砂は絶えず流込んできました。

そしてどんどん流込む量が増えました。

やがて黒い土砂が小さな入江を覆いつくす頃、入江に住んでいた海の生き物に異変が現れました。

卵から子が孵らない。

背骨が折れている。

おそろしく短命。

その黒い土砂には毒が含まれていたのです。





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