あまねの心情
「心が読める?そんなことないよ。
私はただあんたが言って欲しいだろうっていうことを言ってるだけだよ。」
――by,とある占い師
茜が行方不明になってから七年がたった。
私は茜のことを必死に探した。
警察も探してはいたようだがそんなに必死じゃなかった。
だから私は探偵に依頼したりもした。
幸いお金は潤沢にあった。
あの男(一応父親)の言うことに従ってればお小遣いと称して結構な額のお金をもらえた。
あの男の慰み者になるのはいやだったけど茜を探すためにはしょうがなかった。
それでもらったお金を株やFxで増やしてたら、なんだかんだと私は結構なお金持ちになってた。
それを使って色々な探偵を雇った。
絶対にこんなところから目撃証言などでないだろうというところにも人をやった。
それはもう隅々まで探させたし、私自身も暇を作っては探してはいた。
けど分かったことは、茜があの日私と別れた後あの黒猫を追いかけて行ってた事だけだった。
目撃証言が山の森に入って行ったというところを最後に途切れているのだ。
それどころか山の中に茜が入ったという痕跡すらなかったという。
まるで魔法みたいに茜は消えたのだ。
そこからの足取りは全くわかっていない。
そして今日、茜の失踪宣告の日だ。
茜は両親との関係はあんまりよくなかったからきっとあの両親は失踪宣告を出すだろう。
けど私は探偵への依頼は取り消さない。
たとえ私が死んでも。
茜を探し続けさせよう。
たとえそれで死体が発見されても・・・・・・・・。
誰にも発見されないまま遺体が残ってるよりましだろう。
母親が死んでから茜は私にとって唯一の癒しだった。
小さい頃、私は他人の思考に敏感だった。
もはや超能力ではないかと疑うほどに敏感だった。
相手がなにを考えてるのかさえ分かってしまった。
そんなわけで私は小さい時からマセていたし、すれていた。
だってそうでしょう。相手が嘘を言ってることが分かっちゃうんだもの。
例えば保育園の先生。
一緒にいて楽しいとか言って置きながら内心では面倒だと考えている。
保育園のバスの運転手さん、園児が騒いでてもにぎやかだといってニコニコとしてる人、
その人は騒がしいと、うるさいと怒鳴りつけたくてイライラしてた。
そんな環境で私は育った。
当然子供の心のよりどころである両親の心の声も聞こえてしまっていた。
母親はまだよかった。
私に対して苛立つことはあっても本当に愛情を向けてくれた。
だがあの男、戸籍上は父親であり生物学的にも父親であるあの男は、
私に全く愛情をむけていなかった。
それは幼い私にとってはきつい事だった、だから父とは壁を作ってた。
だから父親には一切なつかず母親にだけなついた。
それがますます父との間に壁を作る。
そんな日常だった。
そして嘘をついてるのは大人だけではない。
同い年の子も当然嘘をつく。
遊んでる相手が嫌いだけど友達の友達だらしょうがないという時、
一緒に遊んでる間はニコニコとしてて、その子がいなくなると陰口をたたく。
皆さんもそういう経験があるだろう。
その陰口が遊んでる間に私に聞こえてくるのだ。
私は拗ねた。
多分そのまま成長してたら私は立派な不良に成長してただろう。
だけどそうはならなかった。
茜と出会ったのだ。
茜はいわゆるあほの子だった。
でもそれだけに単純で私とっては安心できた。
心の声と実際に話してることが違わないのだ。
嘘をつけるほど器用な子ではなかったから。
だから私はいつも彼女のそばにいた。
彼女の心の声は純粋でそばにいると心地よかったから。
ただ茜はアホの子だけにとろかった。
いつも失敗ばかりしてた。
そして一緒にいる私はその後始末をすることが多かった。
だから私は大人に茜の世話をするえらい子だと評価された。
茜にも感謝された。
・・・・・私は唯、逃避の場所として茜のそばにいただけなのに。
まあ茜と付き合ってるうちに彼女を逃避の場所としてではなく友達と思えるようになっていた。
いや親友かな。
というより私は心から友達と思ってるのは茜だけだった。
私の心は想像以上に弱く嘘をついてる他の子を友達とは思えなかったのだ。
他の子とは衝突しないように、
相手の望んでる態度である程度付き合ってたから私は人気者になった。
茜も人気者な私を慕ってくれた。
心地よかった。
中学生のころ母が死んだ。
私は一層、茜にのめりこんだ。
人は大なり小なり嘘をつく。
私も、ほかの人も。
でも茜は純粋なままだった。
だから私はいつしか茜のそばから離れられなくなった。
私の学力と父親の財力なら中学から私立に行くことも可能だった。
だけど私は茜と離れたくないから茜と一緒の公立中学に通った。
高校も学力的にもっと上のところに行けると学校の先生からしきりに言われたけど、
茜と同じ学校の入試を受けた。
茜は第一志望校を専願で受けた。私は併願で受けた。
私の予想通り茜は第一志望校に落ちた。勉強を教えたりしてたから予想通りだった。
それで茜は滑り止めに受けていたかなりレベルが下の高校に通うことになった。私も受けていた。
当然私は茜の第一志望校には受かっていたが茜と同じ高校に通った。
母親が死んでからあの男は発作的に私に母親の代わり、つまり私の体を求めた。
いやだったけどあの男の援助がなければ茜と同じ学校に通うことはできない。
私は受け入れた。
あの男は行為が終わると申し訳なさそうにして結構な額のお金をお小遣いとして渡してきた。
ふざけるなっ、と思ったが将来一人暮らしをするためにお金は取っておいた。
あの男のそばは茜とは逆で気持ち悪かったから。
母への愛情、性欲、私への罪悪感、征服感、その他さまざまな感情が私の中に流れ込んでくるのだ。
このころ私は父のそんな心の声を聞きたくなくて自分の能力の抑制に努めた。
そのかいもあって調子のいい時にはあの男の感情も流れ込まなくなった。
方法は暗示だ。
アンティークのカギを取り寄せてそれをじっと見ながら心を閉ざすようなイメージをするのだ。
そうすると心の声も感情も流れ込まなくなるのだ。
それに自分の感情の起伏も乏しくなる。
だけど長時間そうしているとかなり疲れる。
それに心にかけた鍵も緩んでくるのかだんだん感情が流れ込んでくる。
だから私は茜といるときと寝るときは鍵をかけないことにしてた。
そうじゃないときっと疲れ切ってたから。
今ではこの方法に開放句と閉鎖句を作って完璧に制御できてる。
まあ要するに呪文みたいなのをつけて、心の鍵をかけるイメージを補強してるってこと。
これで感情も制御してるつもりだったけど・・・・・・・。
今日は茜の失踪宣告日。
茜が法的に死ぬ日。
・・・・・・・・茜、さびしいよ。
子供のころはあまねは心の声つまり相手の思っていることがはっきりと聞こえていました。
ただ歳をとるにつれてしての感情や、思っている事の方向性という程度、つまり思考とかが断片的にのみ流れ込むとか嘘の判断とかしか分からなくなっています。
例えば相手のことが嫌いだとか好きだとか、めんどくさいと思っているとかです。
歳をとってからの嘘の判断とか感情とか思考の方向性とかも心の声として今後扱いますのでよろしくお願いします。




