癪に障る女
「内向的な人は表面上は穏やかだ。でもその裏は・・・・・ということだ。」
―by,とある町人
「はあ、勇者様、その回答は五点です。」
たかがメイドに僕は思いっきり馬鹿にしたような顔で言われた。
ふざけるなっ!僕は勇者だぞ!
向こうにいた時とは違うんだ。
クラスメイトのさげすんだ眼、道場の連中の憐みの眼、親の心配そうな眼、
そんなものが向けられるむこうとは・・・・・・・・。
僕は向こうでは弱かった。
どれだけ勉強しても、それこそ視力が落ちるくらい集中してもそこそこの点しか取れなかった。
道場でどれだけ練習しても全然強くならなかった。
それで傷を作りまくって親に心配される。がんばりすぎなんじゃないかと。
ふざけるな、頑張らなければ他の人に追いつけないんだよ。
それをがんばるなと?何もわかってない。追いつけないぼくがどれだけ惨めだったかと。
だから僕がVRMMOにのめりこんだのも必然かもしれない。
VRMMOの世界では頑張ればある程度その実力が反映される、
がんばってもそこそこになれない現実の世界とは違う。
そして今、その世界が現実になった。これからは僕の時代だ。
だからこんなメイドに馬鹿にされる必要はないんだ。
「おい、そういうのならどういうことか説明してみろ。」
強気で行く。向こうの世界だったらこんないい方しなかっただろうなあ。
こっちに一緒に来たやつらが驚いてるけど僕は生まれ変わったんだ。
さえない相模 零次からすごいエンチャンターであるケイジに。
だというのにメイドは相変わらず馬鹿にしたように見てくる。
「では説明します。」
その冷えた冷静な声が癪に障る。
「なぜ農村から奴隷が来るのか?それはそうしないと村が飢餓で死んでしまうからです。
そもそもアンダーグラウンドな奴隷以外は本人の了承がなければ奴隷になれません。」
確かに納得できる理由だ。
でもこの女の言うことに納得するのは癪に障る。
「それでも奴隷など間違っている!人権を無視している!」
メイドは馬鹿にした顔を崩さない。
「では勇者様は飢えそうな農村の民にこういうのですか?
奴隷制度は間違っている。
だからお前たちは自分から奴隷になってもいいと言っている人を売らずに飢えて死ねと。」
メイドの言い方がむかつく。
お前らは俺に救ってもらう側の立場だというのに。
「お前などでは相手にならん。もう俺は自分で学ぶ。」
そうだ、凡俗を相手にする必要なんてないんだ。
生まれ変わったケイジには凡俗の相手など必要ない。
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「あれはどうしたのかしら?」
「さあ?何か変なものでも食べたんでしょう、あまねさん。」
「いえ、勇者様たちのお食事は特別注意を払っていましたからそれはないでしょう。」
「いや、冗談だから。マジレスしないでよ。」
「それはそうとあれどうするんだ?思いっきり魔法使って町の方にとんでったぞ。」
「まあ、ほっといたらいいんじゃない?そのうち戻ってくるでしょう。
時間かかるかもしれないけど、無駄にプライド高いからね。」
「けどいいのでしょうか?勇者ですのであの人もかなりの力量なのですが。
今の気が立ってるあの方に何かする人がいたら・・・・・・・・。」
「まあ、さすがに人は殺さないだろうからほっといていいと思うよ。」
「そうですか・・・・勇者様がそういうのなら。」
最後の会話はあまね、朱里、侍女長、朱里、高次、小柄な勇者、侍女長、小柄な少年、侍女長の順番です。
一応口調をそれぞれ変えたつもりですがかなり分かりにくくなっていたためかいておきました。




