盗聴
「脳とは使うことで発達する器官だ。」
「考えるのを、やめるな。
思考停止は楽だが、それに安住すると脳の発達を阻害する。」
by,某魔王陛下
さー、私の幸運はどこだ―。
とか言ってたのんきな私を殴りたい。
私の目の前にはどっさりととある魔道具がある。
集音するための網目状の部分に、集めた音を記録しておくいわばメモリーの部分。
回りくどいことを言わずにはっきりいうと盗聴機の魔道具版。
それが何個も部屋に仕掛けられていた。
あまねさんに言われて魔力感知でいろいろなとこを探たらこれだよ。
盗聴器を仕掛けられてたなんて夢にも思わなかった。
それで盗聴器を発見した時のあまねさんの反応だけど、
「トイレには仕掛けられてないなんて甘いわね。」だよ。
あまねさんが弱いって言ってたけどそれはあくまで戦闘面だけなんだね。
戦闘以外では完璧超人だよ。それでこそ私が惚れたあまねさんなんだけど。
というかトイレに盗聴器に仕掛けるとかただの変態じゃないの?とか思う私は変なんだろうか?
情報収集のためにはトイレにも仕掛けないといけないのだろうか?
あっ、ちなみにトイレは魔道具のおかげで水洗でした。
「それで朱里、これって向こうさんにも聞こえてるのかしら?」
あまねさんが花瓶の底にあった盗聴器を手でもてあそびながら聞いてくる。
「えーっと、確かそのタイプはメモリー型ですから聞こえてないですね。
でもこっちのはたしか相手さんに聞こえてると思いますよ。」
私はベッドの裏側に張り付けてあった盗聴器をあまねさんに差し出す。
「ありがとう。」
「いっいえ。」
あまねさんが微笑みながら礼を言ってくれる。
それだけで私は幸せになる。
向こうの世界ではあまねさんの助けになるなんてほとんどなかったから、
礼を言われることもなかったんだよね。
私こっちの世界来てよかったかも。
「さて聞こえてるかしら?まあ聞こえてるわよね。
そちらの都合もあるかもしれないから三十分あげるわ。
それまでに部屋まで来て説明なさい。
もし来なかったら国と勇者の関係に亀裂が入ることになるでしょうね。」
あまねさん盗聴器仕掛けた人を呼ぶなんて度胸ありすぎです。
さて、十分ぐらい待ってると騎士長さんが来ました。
「すまない、部下が独断で行動したようだ。
盗聴器を仕掛ける作戦を考えた部下と協力した侍女は今背後関係を調べるために訊問中だ。」
騎士さんはいかにも予想外でしたという顔をしてかなり焦ってる。
「別に私はいいよ。
まあ、私にも責任はあったしね。女王を押し倒して殺すぞとか脅したりしたし。
それで、朱里はどうなの?」
「へっ、、なっなにがですか?」
私は急に話を振られてあわててしまった。
「盗聴器を仕掛けられた点についてよ。
もしあなたが望むなら実行犯の侍女さんと作戦を考えた騎士に結構な罰を与えることができるわよ。」
あまねさんが騎士長の方に確認するような目線をむけると騎士長さんは仕方がないといった顔で頷く。
「盗聴ぐらいでそんな大それた罰を与えないでいいと思います。
トイレには仕掛けられてませんでしたし。」
トイレに仕掛けられていたらほんとに怒ったと思うでしょうけどなかったですし。
「じゃあ近衛騎士長さん、背後関係だけはきっちりと調べといてね。」
「ああ、言われるまでもなく調べますよ。
勇者の位は王族と同等なんですから。それを許していれば王族への行為も許すことになりますし。
今回部下と侍女は勇者直々の許しによって罰自体は少なくても尋問は必要になるでしょう。
尋問だけで相当な罰になりますね。」
・・・・・・なんか相当怖い事言ってる気がするんですけど。
いや気のせいだ。たぶん。
まあ難しいことはあまねさんに任せて・・・・ってこの思考がダメなんだよ。
あまねさんに負担をかけないってさっき思ったばっかりじゃない。
これからはあまねさんに頼らずに自分で考えることもしよう。
・・・・・あまねさんには勝てそうにないけど
さて前書きの魔王陛下がだれかわかった人はいるのでしょうか?
言葉は少し違うかもしれません。
なにしろこのキャラクターが出てる本を読んだのは結構昔ですので。
もしわかった人がいらっしゃったら感想欄にでも書いてください。
何人目に正解したのかを書いた返信を送らせてもらいます。
ヒントは「人界の魔王」「影」です。




