一つ屋根の下
「楽観することはだめじゃない。ある程度息抜きは必要だから。
でも楽観しすぎたら死んじゃうよ。」
――by,とある女冒険家
「では、お部屋の方に案内させていただきます。」
私の前を案内の騎士さんとあまねさんが歩いてる。
本当はあまねさんの横を歩きたいぐらいなんだけど・・・・・・・
さっきの思考が頭の中に残っててまともにあまねさんの方を見れないんだよ。
こんなんで夜大丈夫かなあ?ちゃんと寝れるかな?
私枕とか布団が変わったらあんまり寝れないタイプなんだけど。
だから家の布団も破れたところを縫ってごまかしながら使ってもう十年ぐらいかな。
そろそろごまかしもやばいとこだったから、
お母さんには新しいの買いなさいって言われてたっけ。
ああ、お母さんにも多分もう会うことはできないんだろうなあ。
異世界召喚っていうのは大抵元の世界に変えることはできないし。
だめだ、思考がどんどん鬱の方向に向かってる。
何とかしないと。あまねさんに心配かけちゃう。
そういえばそのあまねさんだけどなんかこっちの世界に来てから生き生きしてるよね。
練習中とかはなんか気でも出てるんじゃないかっていうぐらいだったけど、
普段はすっごく落ち着いたというか、なんか覇気がないっていう感じだったんだよ。
でもこっちに来てからはなんかやることができて充実してますっていう感じ?
うーん、よくわからないけど生き生きとしてるのはいいことだよね。
私も見習わなきゃ。
「つきました。こちらの部屋です。」
「ありがとう。
後もし何か連絡とかあるときはあなたにその連絡役をしてもらいたいんだけどいいかしら?」
「えーっと、私自身は良いですし嬉しいのですが、それは上が決めることですので。」
「じゃあ、騎士長さんに私からの提案だって伝えといてくれる?」
「はいっ、また会えるのを楽しみにしてます。」
案内役の騎士がずいぶんとあまねさんになついてる。
お風呂とかで結構会話してたもんね。
あまねさんの魅力なら騎士の人がひかれるのは分かるんだけどなんか複雑。
「じゃあ、入りましょうか。」
「あっはい。」
考え事をしてた私は慌ててあまねさんの後についてはいる。
「うわあ。」
部屋はすごかった。ホテルのスイートルームみたいで。
いや泊まったことないけどテレビで出てたのとか、いやもっとすごいかもしれない。
いろんな魔道具とかが置いてあってこっちの方が便利だし。
とあまねさんが荷物を置いて右側のベッドでなんかいろいろといじってる。
あれ?ベッドが二つある。
「あまねさん、ベッドが二つあるんですけど。」
「そうね。」
いやあまねさん、そうねじゃないですよ。
これってもしかして・・・・・・・。
「あまねさん、つかぬ事をお聞きしますが私ってどこで寝ればいいんでしょうか?」
「こっちがよかった?」
「いっいえどちらでも。」
うわー、確定だ。あまねさんと一つ屋根の下だよ。
いやお城に住んでる人は全員一つ屋根の下って言っても嘘ではないけど。
そんなことはどうでもいいんだよ。
おんなじ部屋で寝泊まりするってことはあれだよ。
朝、しっかり者のあまねさんが寝ぼけて甘えん坊になってたり、
寝ぼけてあまねさんが私の布団に入ってきたりっていうフラグだよね。
うわー、今からドキドキしてきた。
あっ、けどあまねさんが寝ぼけたりしなかったらどうしよう。
同じ部屋という特権がいかせない。
まあその時は私が寝ぼけたふりをしてあまねさんの布団にもぐりこめばいいか。
ふふふ、どう転んでも大丈夫な完璧な作戦だよ。
さー、私の幸運はどこだ―。
朱里
ジョブ:魔導師
あまねへの感情:恋慕
備考:本人いわくレズなわけじゃなくて好きになったのがあまねさんだっただけ。
また夜の稽古がしたいなどと普段は言ってるが純情。
普段の態度は見せ掛けだけ。
不良に襲われていたところ茜が消えてむしゃくしゃしてたあまねが
ストレス発散のために不良をぼこったので結果的に助けられて憧れを抱く。
その後あまねに会うために天草流道場に入門。
そうやってあまねのことを見ているうちに恋慕に発展した。




