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めそめそさん  作者: きつねさん
神様
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あっ、失敗した、まあいいや

「失敗したっていいじゃないか。それが君の糧になるのだから。」

                        ――by,とあるカウンセラー


「いやあ、失敗失敗。」

男が本当に失敗したことを反省してるのかと思わず問いただしたくなるような軽い調子で自分が失敗したことを言っている。


「ほんと遊びで作った次元の穴にまさか人間がおちるなんて。」

男はそういって手の中にある水晶を覗きこむ。

その中には男が言った次元の穴の先の場所が映されていた。

そこにあるものはすべてが腐り落ちていた。

機械などの無機物もなぜか腐っているかのようなていをしている。

どこからか迷いこんで来た動物が肉が腐り落ち骨だけになっている。

すぐに骨も腐り落ちるだろう。


そんな世界を覗きながら男は感嘆の声を上げた。

「それにしてもこの人間かわってるなあ。」

そう先ほど次元の穴に落ちた人間も映りこんでいる。


その容姿からしてまだ中学生ぐらいの女の子だろうか。

元はかわいいという容姿をしているのだろうけれど今はところどころ腐り落ちていてゾンビのような様相をしている。

その女の子はずっと泣いていた。

この世界に来てからかれこれどれだけ経っただろうか、

それは分からないがずっと泣いているのだ。


「この世界に来て確か一日ぐらいだったか。

 おなかが減ったりしないとはいえそれだけ泣いてるなんてなあ。」

だいたい二十四時間泣いてるらしい。

この世界ではすべてのものが腐り落ちていく。

そんなありえない法則が働いてるがゆえに何も食べなくても大丈夫なのだ。

なぜならおなかがすく前に腐り落ちていくから。長くても二、三時間で。

それを考えるとこの少女は驚異的だ。

二十四時間の間もこの世界で生存しているのだから。


「まあ面白いしこのまんま観察しておこう。」

ああ、かわいそうに。

この男の失敗でこんなすべてが腐り落ちるようなありえない世界に来させられたのにそのまんま放っておかれるなんて。





いくらか時が経ち少女はやっと解放される。

「おー、すごいな。

 完全に腐り落ちるまで一年もかかったか。」

どうやら一年もあの世界で放置されていたらしい。

結局少女は何もせずに逝った。

つまりずっと泣いたままだったのだ。一年間。

それには男は呆れを通り越して感心してるようだ。


「すごいな、こいつ。

 あれだけ腐らなかったこともすごかったがその間ずっと泣いてるなんて。

 あー、けどさすがに悪いよな」

どうやら男は少女に罪悪感を覚えたようだ。


「そうだ、地上ではやってる小説のように異世界転生さしてやろう。喜ぶだろう。

 いや異世界転移だったか。」

男は少女を異世界転生さしてあげるらしい。

それで喜ぶと本気で思っており詫びのつもりであった。

男は神であり地上の本を気軽に読むことはできない。

そうであるがゆえに偏った知識しか持っていなかった。

男が呼んだのはいわゆる「俺つえー」ものでありその中の主人公はハッピーエンドを迎えていた。


だから男は知らない。

本当に異世界転移をさせられたら迷惑でしかないことを。

フィクションはフィクションであるから楽しめるのだということを。


「けどなあ、体はもう腐り落ちちまったし。」

この男のせいである。


「仕方ない。

 俺様特製の体を作ってそこに魂を込めて送ってやろう。」

どうやら異世界転移にありがちないわゆるチートをつけるらしい。


「ああ、そうだ。

 なんか特典も付けておいてやろう。」

さっきのはチートのつもりではなく少女の体の代替品のつもりであったらしい。

少女はどこまでチートにさせられるのか。


男は少女の体を作っていく。

ただ体の材料が足らなかったのかその大きさは小さい。

そしてかなりかわいい。

可愛いだけではなくその体はどこか神々しくもあった。

不可侵であるかのように。


「あっ、しまった。」

何か失敗したらしい。


「神属性をつけちまった。」

どうやら神々しいのは失敗だったようだ。


「まあいっか。強くなったんだし。」

適当である。


「あー、もうめんどい。

 特典とか考えるのめんどいし適当でいいや。」

男は少女への罪悪感が薄れたのか適当に特典を付ける。


「それじゃあ、適当な世界に放り込んでおくか。」

そういって少女の魂をかわいらしくも神々しい体に入れ適当な世界に送り出した。



どうやら少女はまたろくでもないことに巻き込まれそうである。


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