僕と君の雑談物語《真実》
「『真実はいつも一つ!』ってあるよね』」
「ああ、あの有名すぎるミステリー漫画のあれだな」
「あれに私は物申したい」
「……まあ聞くだけは聞いておこう」
「事実、っていうのはそりゃ一つだと思うのよ。実際に起こったことは一つしかないんだからね」
「事実と真実って同じじゃないのか?」
「私の中では違うの」
「と言うと」
「真実は人の数だけあるんじゃないかなって。同じ『事実』を見たとしても、それにどういう感情を抱くかは人それぞれでしょ? その感情も含めて、その人から見た事実が『真実』になるんじゃないかと思ったんだけど」
「真実は人の主観に寄るものってことか?」
「大体そういうこと」
「はあ」
「なんか聞いたことがあるのよ。人は自分の色眼鏡で世界を見ているって。そういうフィルターを通して見たものが『真実』なんだと思うの」
「言いたいことは大体分かった。つまりあの決めゼリフは『真実は一つ』じゃなくて『事実は一つ』が正しいと言いたいんだな。語呂が悪いが」
「そういうこと。あなたは理解が早くて助かるわ」
「その上で聞いてみたいことがあるんだけど」
「何でもどうぞ」
「じゃあ、君が俺のストーカーをしているのは事実か? それともあくまで俺にとっての真実ってだけか?」
「…………」
「何で君が俺の起床時間を知っているのか。何で俺が朝飯はパン派なのを知っているのか。何で俺が寝るときジャージではなくパジャマなのを知っているのか。答えて下さい」
「…………それはご想像にお任せします」