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第7章 秘められし力 No.11

 真っ白なベッドの中で、リオは目覚めた。

 一瞬、自分が今いる場所が何処なのか解らず、頭だけ動かして周囲を見回す。

 真っ白な天井。真っ白なカーテン。真っ白な壁……。そして、やっと気付く。そこは保健室のベッドの中だった。

(そうだ。僕、教室で倒れたんだ……)

 リオは、急に強い脱力感に襲われ、枕に頭を沈めた。ぼんやりと眼を開けていると、爽やかな微風がリオの頬を掠めて流れ込んでくる。窓が開け放たれているのだ。

 暫くの間、窓と壁とのコントラストを見つめていた。真っ白な部屋に唯一色を添える窓。それは、小さな空間に独り取り残されたリオと、広い外界とを繋ぐ唯一の接点のように思えた。

 窓越しに伸びる木の枝は、外から差し込む眩しい光からリオを護ろうとするかの如く葉を茂らせている。ふと見ると、そこに一羽の真っ白な小鳥が停まっていた。小鳥は小首を傾げながら、じっとこちらを見ている。リオは気怠さを振り払うように上半身を起こし、手を差し出しながら小鳥に声を掛けた。

「おいで……」

 リオの言葉を理解したのか、小鳥は導かれるままに羽ばたき、窓を通り抜けた。そして、真っ白なシーツに包まれた膝の上に舞い降りると、小首を傾げてリオの瞳を覗き込んだ。愛くるしい仕草に惹き込まれるようにリオが小さく微笑む。

「ダメだね、僕は。全然気にしてないつもりなのに、どうしても忘れことが出来ないや。僕が、なぜ堕とされたのか、……そんなこと、今の僕には関係無いはずなのにね……」突然、瞳が涙で潤む。「僕は、生まれてきちゃ、いけなかったのかな? 僕は、誰かの役に立ちたいだけなのに……。この学校に入って、一生懸命勉強すれば、今度こそ、……今度こそ、僕だって、誰かの役に立てるかもしれないって、思ってたのに。僕は、生まれてきちゃいけない命だったから……、だから、誰かを傷付けることしか出来ないのかな? 何時も、何時も……」

 硬く閉じた瞼から、涙が一滴、頬を伝い零れ落ちた。膝を抱え、顔を埋める。

 小鳥は、驚いたように羽ばたくと、窓を通り抜けて飛び去っていった。

 喉の奥から言葉を搾り出すリオ。まるで、そうすることによって、心の奥底に湧き上がる哀しみ全てを吐き出してしまえると信じているかのように……。

「僕、どうしたらいいのか、もう解らないよ。ねぇ、教えてよ。どうしたらいいの? もう、嫌だよ……」

 その時、静寂に包まれた室内に、扉をノックする音が響いた。エリザベート先生は不在のようで、応える声は無い。扉が開く音に続き、こちらに近付いてくる足音。

 リオは慌てて顔を上げ、両手で眼の周りを拭うと、何事もなかったかのような表情を創った。

「リオ、……寝てるのか?」

 不意に名を呼ばれる。

 声の方向を見上げたリオ。ベッドの周囲を囲うカーテン越しに、見慣れた葡萄色の巻き毛。クワイだ。彼はカーテンを開け、俯きがちにリオを見下ろしている。

 リオの顔に、一瞬、困惑の表情が浮かぶ。だが、それは直ぐに、少し強張った微笑みに変わった。

「……僕に、何か?」

 クワイは、おずおずと、照れくさそうに小声で言った。

「ごめん、起こして。どうしても、話したいことが、あって……」

 それきり、足許に視線を落とし、口の中で何やらブツブツと呟く。

 その声は、あまりに小さくて、リオには聞き取れなかった。何時ものクワイらしからぬ様子。訳が解らず、リオは小首を傾げたが、思い出したように眼を見開き、こちらもまた、少し緊張気味に呟いた。

「さっきは、……ありがと」

 予想外の言葉。クワイは驚きも露に顔を上げた。

 リオは小さく微笑み、俯いたまま続けて言った。

「さっき、僕のこと、庇おうとしてくれたでしょう? 君は僕を嫌ってるはずなのに、それでも心配してくれるなんて、正直、少し驚いた。でも、……嬉しかったんだ。ありがと」

 狐に摘まれたような表情で立ち尽くすクワイ。それが解って、リオは直ぐに助け舟を出した。

「危ない、早く逃げろ……って、君の声が聞こえたよ」

「そりゃ、アルフの声だろう。俺は、そんなこと言ってない。俺は、邪魔だって言ったんだ」

 クワイは横を向き、乱暴に言い放った。


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