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第6章 不安 No.4

「リオ! お前、寝てなくて大丈夫なのか?」

 それは、話を聴かれたことへの言い訳でも何でも無い、彼の正直な思い。

 リオがニッコリと笑い、コクリと頷く。 

「平気。心配掛けて、ごめんね」次いで、彼の視線は、部屋の主へと向けられた。「入ってもいい?」

 確認され、ルーはトコトコと扉に駆け寄り、リオの腕を引っ張った。

「ありがとう」

 言いながら、部屋に入るリオ。促されるまま、ベッドの端に腰を下ろし、二人の友を交互に見比べた。

「ごめんね、アルフ、ルー。君達が、こんなにも僕のことを心配してくれてるなんて思わなかった。でも、僕は平気だし、クワイは全然関係ないんだよ」優しい瞳が、不意に淋し気に曇る。「だから、アルフ、もうやめて。この学校で学んでいる間は、種族や年齢、性別は一切関係ない。入学式の日、校長先生が、そう仰っていたもの。それに、僕はクワイの言葉なんて気にしてない」

「なら、なぜなんだよ。なぜ、お前は、こんなに動揺してるんだよ。いったい何があったんだ?」

 率直なアルフの問い。

 しかし、リオは答えられない。困惑の態で眉根を寄せ、俯いてしまう。

 アルフは大きく溜息を吐くと前髪を掻き上げた。

「……答えないなら、それでもいい……。つまり、俺の勘は当たってるってことだ」

 断定的な言葉。

 リオが苦し気に眉を顰める。

「アルフ! それは違う。本当に違うんだよ」

「なら、お前は、どうしてそんなに落ち込んでるんだよ!」

 じれった気に壁を叩く。

 だが、リオは、今度も俯いたきり、何も答えなかった。

「……やっぱり、そういうことなんだろう? 他に理由なんかないじゃないか」

 アルフは小さく笑った。

「安心しろよ、リオ。俺は、種族とかで人を判断したりしない。実際、俺がそうされてきたし、一番嫌いなことだからな。でも……」次の瞬間、表情を硬くする。「あいつが、これ以上リオに何かするようなら……、そして、その時、必要だと思ったら、俺は……、言うぜ、このこと。それで、俺が悪者になったって……、恨まれたって、そんなこと構うもんか」

「ダメだよ、アルフ! 本当に違うんだ! お願いだから……」

 リオが身を乗り出す。アルフが今にも飛び出していくのではないかと危惧し、それを制止しようと、彼の腕を掴んだ。碧の瞳は、その心を映し出し、哀しみに揺れていた。

 リオがみせた、予想外に必死の表情。

 アルフは一瞬、酷い罪悪感に苛まれた。言葉すら失い、眼前の友を凝視する。

 その時……。

 アルフとリオの会話を聞いていたのか、いないのか、ルーが突然、口を開いた。

「ねえねえ。あのねぇ」

 二人の視線が、揃ってルーへと向けられる。

「ひょっとしてさ、クワイがリオを虐めるのって、サリバン先生が原因なんじゃないのかなぁ?」

 二人は無言のまま、ルーの次の言葉を待った。

 ルーは、ちょっと考え込むように首を傾げたが、独り納得した態で頷き、話を続けた。

「クワイが大変なのは、解るよ。きっと、すごぉく大変なんだよね。でもさ、それでも変じゃない? クワイがリオの能力にヤキモチ焼いてるんだとしたら、どうしてリオだけなんだろう。アルフだって、ボクだって、取りあえず、課題をこなすことくらい出来てるよ。リオは、みんなの前で、それ以上のことなんか何もしていないよね。それなのに、クワイはボク達なんか相手にもしないで、リオばっかり目の敵にしている。ってことは……」

「能力に対する嫉妬じゃ無いってことか?」

 アルフが言った。


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