第6章 不安 No.2
ルーの表情が暗く沈んだ。椅子をベッド側に向け、アルフと正対する。
「何とかしてあげようよ、アルフ。リオは絶対、自分から弱音を吐いたりしないんだもの。今のリオを見てると、ボク、哀しくなっちゃうよ」
「そんなこと、言われなくたって解ってる。俺だって、あいつが喜ぶことなら何だってしてやりたいよ。ただ、どうしたら良いか解んないから困ってるんだろう」
アルフは、そう言ったきり黙り込み、ベッドの枠を指で小刻みに叩いた。
ルーは椅子の上で両膝を抱え、組んだ腕の間に顔を埋めた。
二人とも、思いは一つだ。大切な友を救いたい。なのに、どうすればいいか解らなかった。
長い沈黙の時が流れた。時計の音だけが、規則正しく響く。
「まったく……。それでなくても、クワイのことだけで頭痛いってのに……」
アルフが忌々し気に呟く。その声は決して大きくはなかったけれど、静寂の中でルーの耳に届くには充分だった。
ルーは顔を横に向け、アルフの独り言に答えて言った。考えていたはずのリオの件については、良い案が何も浮かばなかったようだ。
「そうだよねぇ。好き嫌いがあるのは、しようが無いことだけど、でも、どうして、あの子は、最初からリオのことを嫌ってるんだろうね。リオには誰かに嫌われる理由なんて何も無いんだよ。クワイにだって何も悪いことなんかしてないんだもん」
当たり前の疑問。
アルフは宙に視線を泳がせ、少し考え込んでいたが、ふと、小声で呟いた。
「『力への憧れが強ければ強いほど、妬みや嫉妬も大きくなる』……か」
「何? アルフ、なんて言ったの?」
よく聞き取れず、ルーが問い返す。
その瞬間、アルフはハッと眼を見開き、ベッドの枠を強く叩いた。
「ちきしょう……! そういうことか!」
うめくような言葉。
「アル……? どうしたの?」ルーが問い掛ける。
アルフは苦々し気に言葉を継いだ。
「最近、リオの様子がおかしかったのは、きっと、そのせいなんだ。俺としたことが、こんな簡単なことに気付かなかったなんて……。クソ!」
「何? 何のこと? アルフ、ボク、全然解らないよ!」じれったそうにルーがアルフの袖を掴む。
その声が聞こえているのか、いないのか、アルフは、まるで独り言のように呟き続けては、独り、納得の態で頷いた。
「リオは、校長先生に依頼されて、ヤナイ族に会いに行ったんだ。そこで、何かがあった。あいつの信念を混乱させるような何かが……。それで、悩んでるんだ。きっとそうだ!」
独りだけで話を進めるアルフ。
ルーは、アルフの腕を掴み、上下に何度も大きく揺らした。
「もう! アルフ、ボクにも、ちゃんと解るように話してよ!」