第8話 魔王軍四天王の一人が実はデバッグ担当だった
パーティー結成から一週間。
俺たちは魔王領に近い国境の町に到着した。
世界昇格クエストの進行度はまだ8%。
バグは無限にある。
町の酒場で情報を集めていると、突然外が騒がしくなった。
「魔王軍だ! 四天王の一人が来たぞ!」
ヴィンセント「ほぉ……早速ボス戦か?」
俺たちは酒場を飛び出し、町の広場へ。
そこに立っていたのは、黒いマントを羽織った長身の男。
角が生え、背中に翼。典型的な魔族の見た目。
【魔王軍四天王 “漆黒の執行者”ゼグロス Lv120】
ゼグロスが低く笑った。
「人間どもよ。魔王様の名において、この町を灰にせよ――」
と言いかけて、俺の顔を見て固まった。
「……お前、誰だ?」
俺「アキラ。よろしく」
ゼグロスの頭上に、俺だけが見える文字が浮かぶ。
【ゼグロス・デバッグモード】
【本当の役割:内部テスト担当】
【魔王軍四天王設定:カバー用偽装】
【権限レベル:Debug_Admin(中間管理者より上)】
ヴィンセント「うわ、マジか。こいつデバッグ担当じゃねぇか」
ゼグロスが周囲を見回し、町の人々が逃げ惑うのを確認すると、小声で言った。
「……ここじゃ話せねぇ。ついてこい」
俺たちは不思議に思いながら、町外れの廃墟までついていった。
誰もいなくなったことを確認して、ゼグロスがマントを脱いだ。
「ようやく会えた。不正者……いや、世界修正者アキラ」
俺「知ってるのか?」
ゼグロス「知ってるも何も、俺が内部で監視してたんだよ。
お前が村を本物にした時、上層部が大騒ぎになった」
ヴィンセント「で、お前は何者だ?」
ゼグロスが苦笑いした。
「元はデバッグチームのリーダーだ。
この世界のバグを全部洗い出して報告する役目だった。
でも上(真の管理者)が『もういい、テスト終わり』って言ってきてさ。
全削除の指令が出た瞬間、俺は反対した」
リリア「反対……?」
ゼグロス「この世界、クソみたいなコードばっかだけど、
住民たちが少しずつ“本物”っぽくなってきてたんだよ。
特に最近の転生者たちの影響で、NPCが自我持つケースが増えてて……
それを全部消すなんて、許せなかった」
俺「だから魔王軍に?」
ゼグロス「偽装だよ。四天王って肩書きで好き勝手動いて、
実は裏でバグ修正を手伝ってるつもりだった。
でも権限が足りなくて、ほとんど何もできなかった」
ヴィンセント「で、俺たちに何を求めてんだ?」
ゼグロスが真剣な目で俺を見た。
「協力してくれ。
お前なら真の管理者権限に迫れる。
俺は内部のコードを知り尽くしてる。
一緒にこの世界を、本当に救おう」
俺は少し考えて、右手を差し出した。
「いいよ。仲間になれ」
ゼグロスが驚いた顔をした。
「魔王軍の四天王が、勇者側に?」
エレナ「もう勇者とか魔王とか関係ないでしょ」
ミラ「そうそう~。みんなで世界直しましょう~」
ゼグロスが笑って、俺の手を握った。
「決まりだ。よろしくな、アキラ」
ヴィンセント「パーティー6人目か……増えすぎだろ雑魚」
その瞬間、空に新しいログ。
【隠しキャラ加入:ゼグロス】
【世界昇格クエスト進行度:8% → 22%(急上昇)】
【新スキル取得:デバッグモード共有】
ゼグロスがニヤリと笑った。
「まずは魔王城のコードを見せてやるよ。
あそこ、最大のスパゲッティ地獄だからな」
俺たち一行は、魔王軍四天王を加えて、
魔王城に向かうことを決めた。
もちろん、魔王を倒すためじゃなく――
世界を直すために。
第8話 終わり
(次回『魔王城潜入したら魔王が引きこもりだった』)




