第12話(最終話) この世界で、俺たちは生きていく
光が収まった後、世界は静かだった。
本当に静かで、
本当に穏やかで、
本当に“普通”だった。
魔王城の玉座の間は、
もうただの広い部屋になっていた。
埃っぽい空気も、
古い絨毯の匂いも、
全部が本物だった。
俺は床に座り込んで、
ぼんやりと天井を見上げていた。
ヴィンセントは肩に乗ったまま、
珍しく黙っていた。
「……終わったな」
俺の声が、少し震えた。
ルシフェルがゆっくり近づいてきて、
俺の隣に座った。
「アキラ……本当に、ありがとう」
彼女の声は、
今までで一番柔らかかった。
リリアが剣を鞘に収めながら、
エレナとミラと一緒に寄ってきた。
リリア「私たち……これから、どう生きるの?」
エレナ「シナリオがないって、
なんか……怖いわね」
ミラ「でも、嬉しいです~。
自分で決められるんですよね?」
ゼグロスが壁に寄りかかり、
小さく笑った。
「怖いのは最初だけだ。
俺はもう、偽の四天王じゃなくていい。
ただのゼグロスでいいんだ」
俺はみんなを見回した。
「そうだな。
これからは、俺たちで決める。
何を食べるか、どこに行くか、
誰を好きになるか、
全部、自分で」
ヴィンセントが、ぽつりと呟いた。
「……俺はどうすんだ?
もうバグもねぇし、
注入する相手もいねぇ」
俺はヴィンセントを指で軽く突いた。
「お前は、俺の相棒のままでいいだろ。
毒舌のまま、
肩に乗って、
文句言いながらついてきてくれ」
ヴィンセント「……ふん。
しょうがねぇな。
雑魚の面倒見てやるよ」
みんなが笑った。
本物の笑い声だった。
数日後、
俺たちは魔王城を離れた。
ルシフェルは「もう玉座はいらない」って言って、
普通の服に着替えた。
黒髪をポニーテールにして、
少し照れくさそうに歩く姿が、
なんだか新鮮だった。
リリアは剣を腰に差したまま、
「これからは自分のために戦う」って言った。
エレナは魔法の研究を続けながら、
「暴走しない魔法、もっと極めたい」って笑った。
ミラはみんなの傷を治しながら、
「過回復しないように、優しく治します~」って。
ゼグロスは「旅の護衛でもやるか」って、
意外と頼りになる後ろ姿を見せてくれた。
そして俺は――
もうコードが見えない世界で、
ただ歩いている。
ヴィンセントが肩でぼそっと。
「……お前、泣いてんのか?」
俺は鼻をすすった。
「泣いてねぇよ。
……ちょっと、目がチカチカするだけだ」
ヴィンセント「……バーカ」
俺たちは、
これから先の道を、
ゆっくり歩き始めた。
どこに行くか、
何をするか、
全部決まってない。
でも、それがいい。
この世界は、
もう誰かのシナリオじゃない。
俺たちの世界だ。
俺は空を見上げて、
小さく呟いた。
「生きていくぞ」
みんなが頷いた。
本物の、
温かい頷きだった。
――終わり。
『異世界のソースコードが読めてしまった件〜この世界全部プログラムで動いてました〜』
完




