第11話 残り1% 世界の最後のバグ
魔王城の玉座の間は、静かすぎた。
真の管理者が崩壊した後、
世界は一見「正常」に見えた。
空は青く、風は優しく、住民たちは笑顔で暮らしている。
でも、俺の視界の隅に、
まだ消えない赤い警告が点滅し続けていた。
【世界昇格クエスト 進行度:99.99%】
【最終バグ検出:1件】
【内容:未解決の“自我ループ”】
【影響範囲:全存在】
ヴィンセントが肩の上でため息をついた。
「……まだ残ってんのかよ。最後の1%がこれか」
ルシフェルが玉座に座り直し、俺を見た。
「アキラ……これ、何?」
俺はみんなに説明した。
「真の管理者が消えた今、世界はほぼ本物になった。
でも、最後に残ったバグが……“俺たち全員がまだプログラムの一部だって思い込んでる”ってやつだ」
ゼグロス「つまり……俺たち自身が、最後のバグ?」
エレナ「そんな……私たち、もうデータじゃないはずなのに」
リリア「でも、もしそれが本当なら……
私たちはずっと、管理者のシナリオの中にいるってこと?」
ミラ「え~、そんなの嫌です~……」
俺は深く息を吸った。
「だから、俺が最後にやるべきことがある」
俺は玉座の間に立って、みんなに言った。
「今から、俺はこの世界の全コードにアクセスする。
ヴィンセント、最後のフル注入を頼む」
ヴィンセント「……お前、死ぬぞ」
俺「知ってる。でも、これで終わりにする」
ルシフェルが立ち上がった。
「アキラ、一人じゃ無理よ。私も一緒に」
ゼグロス「俺もだ」
リリア「私たち全員で」
エレナ「そうね。最後のバグは、みんなで直すものよ」
ミラ「うん! みんなで幸せになろう~!」
ヴィンセント「……クソ雑魚どもが……
まぁいい。最後のサービスだ」
俺たちは円陣を組んだ。
全員が手を繋ぎ、俺を中心に立った。
ヴィンセントが俺の頭に指を当てた。
「いくぞ。
これで俺の機能も限界だ。
最後まで耐えろよ、雑魚」
ドババババババババババババ!!!!!
今までで最大の、
いや、世界そのものを飲み込むようなコードの洪水が、
俺の脳に、全身に、魂に流れ込んだ。
痛い。
壊れる。
でも、わかる。
世界の全コードが、俺の視界に広がった。
そして、最後のバグが見えた。
それは、
「この世界は偽物だ」という、
最初の転生者から受け継がれた、
小さな、でも無限にループする思い込み。
俺は叫んだ。
「違う!!
この世界は本物だ!!
俺たちは生きてる!!
痛いのも、嬉しいのも、全部本物だ!!」
みんなの声が重なる。
リリア「本物だ!!」
エレナ「私たちはここにいる!!」
ミラ「幸せだよ~!!」
ゼグロス「俺たちは自由だ!!」
ルシフェル「この世界は……私の、みんなの居場所だ!!」
ヴィンセント「……ふん……
まぁ、悪くねぇ世界だな」
俺は最後の力を振り絞って、
指を鳴らした。
【最終バグ削除処理実行】
【自我ループ 完全解除】
【世界昇格クエスト 進行度:100%】
【クエストクリア:世界は本物となりました】
世界が、光に包まれた。
光が優しく、温かく、
俺たちを包み込んだ。
俺の視界から、すべてのコードが消えた。
もう、何も浮かばない。
ただ、普通の空。
普通の風。
普通の仲間たちの顔。
ヴィンセントが、肩の上で小さく笑った。
「……終わったな、雑魚」
俺はみんなを見て、涙が止まらなかった。
「終わった……
本当に、終わったよ」
ルシフェルが俺を抱きしめた。
「ありがとう、アキラ。
これからは……普通に、生きていこう」
みんなが笑った。
笑顔が、世界を満たした。
第11話 終わり
(最終話『この世界で、俺たちは生きていく』へ続く)




