第1話 【深淵の相棒《ヴィンセント》】
目覚めたら森の中。
肩に10cmの黒い小人が乗ってた。
「おい、クソ雑魚。さっさと起きろ」
「……お前誰だよ」
「ヴィンセント。お前の監視者兼デバッグツールだ。死ぬなら勝手に死ね」
狼が5匹襲いかかってくる。
俺「助けろ!」
ヴィンセント「は? 自分でなんとかしろよ。死体は回収しない」
HP残り12。
血まみれで這いずりながら叫ぶ。
「マジで死ぬ!!」
ヴィンセント「……ちっ。しょうがねぇ」
瞬間、脳内に緑色のコードがドバーッと流れ込んできた。
俺(急に理解)
「……ただのループ処理か」
指を鳴らす。
狼5匹同時フリーズ→泡吹いて死亡。
ヴィンセント「遅えよボケ。もうちょっとで死体だったぞ」
俺「最初から助けられたろ!?」
ヴィンセント「当たり前だろ。甘えんな雑魚。
次も死にそうになったら助けてやるから、せいぜい頑張れ」
その後も――
ミミックに噛まれてHP3
→ギリギリで注入→一撃粉砕
ヴィンセント「遅ぇ」
崖から落下0.1秒前
→注入→ワープで着地
ヴィンセント「ギリギリすぎて笑える」
村娘に絡まれて逃げ場なし
ヴィンセント「これは助けねぇ。死ね」
俺「死なねぇよ!?」
こうして、
死ぬ寸前だけ脳にコードを流し込んでくれる、
超ドSなクソ相棒との異世界生活が始まった。
俺は確信した。
こいつがいなきゃ今頃100回は死んでる。
でも絶対に「ありがとう」とは言わない。
言ったら次からもっとギリギリまで放置されるに決まってるから。
第1話 終わり
(次回『ヴィンセントが村のバグを放置したせいで村が崩壊しかけた』)




