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第二十話 いない
「あの、お婆さん。私、冷酷な2本角の鬼が経営している旅館に行かなきゃならなくて…行き方とか知らない?」
お婆さんはうーんと悩み始めた。
「うーん…冷酷な2本角の鬼…あぁ、鬼城陽斗様のことですね。それなら、鬼の宮行の電車に乗れば着くと思いますよ」
鬼城陽斗…なんだか明るそうな名前だが、冷酷らしい。
(鬼の宮…)
「教えてくれてありがとうございます」
次いでに、そこからどう行けばいいのかも問う。
「えぇっと…あまり詳しくは知らないんですが、中央改札から真っすぐ進むと見えてくると思いますよ。確か…『旅館鬼城』と書いてある建物だったと」
旅館鬼城…まんまだな。
「あぁ!私、そろそろ行かなくてはなりません」
スクリと立ち上がり、あせあせと準備を進める。
「では、良い旅を。銀狐玉藻さん」
可愛らしいお婆さんから真っ黒なスーツを着た青年に変わる。
「え…?」
ブワッと風が吹き、思わず目を瞑ると…
「いない」
そこに可愛らしいお婆さんはいなかった。




