第一話 銀狐玉藻
_昔から体を動かすのは好きだった。
「ひっ…!」
目の前には、40代後半の男性が腰を抜かして、黒髪黒目の美少女である私を見ていた。
私の手には木刀。男性の側にも木刀が落ちていた。
「ま、参った!!だからもう勘弁してくれ…!」
当時6歳にも満たぬ私に頭を垂れて、涙を流し、許しを請う。
(あぁ…何て愚かなの…)
ツゥっと涙が流れた。
_元々は、この男が私にふっかけてきたのだ。
理由は単純。現総理大臣を父に持ち、巷で有名な大手の会社のご令嬢を母に持つ私への妬みと恨みだ。私個人と言うよりかは父や母へのものだと思うが。
まぁ、そんな私に恥をかかせてやろうと自分が師範として教えている剣道に呼び寄せ、沢山の弟子達の前で恥をかかせてやろうと愚かにも画策したが、恥をかいたのは自分の方だった。と言う、何とも哀れな結末だ。
そして、この晩。私は父に叱られていた。
「どうして叱られなくてはならないのです!?父様!」
意味が分からず反論する。
「黙れ!!あの男はな、良い取引先の息子なのだよ!!それをお前は!!!」
とは言え、私は6歳。親から叱られれば、泣く。これは当然だろう。
「な、何故なのですか…!私は、何も…!」
そう言った瞬間パシンと頬を叩かれた。
直ぐに、母に叩かれたのだと感じる。
「母様…?」
先程までずっと無言だった母から叩かれた。味方だと思っていた母から。
「お黙りなさい!!女性は男性の後ろに一歩下がって控えているのが『普通』なの!!!それを貴方は…!」
_ガミガミと何かを騒いでいるが、それら全て私の耳には入らなかった。
私はただ、父と母を侮辱されて剣を取っただけなのに。悪いのは侮辱したアイツなのに。
理解しろとは言わないが、実の子供である私をただ怒鳴るだけ。
子供に分かりやすく説明することも、ああなった理由を聞くと言うとても簡単なこともできない。
これほどまでに愚かだったのか?
私の自慢であった父と母に軽蔑の念を抱く。
ずっと、ずーーーーっと切れそうだった糸がプツリと切れた。
《もう期待しない》
「申し訳ありませんでした。父様、母様」
淡々と機械のような声で頭を下げる。
多少驚きはしたようだが、やっと分かってくれたのかと盛大な勘違いをかまし、満足気に頷いた。
_この時から私の親への愛情は消えたのだ。
次に両親が間違えを犯したら、家を出ることを躊躇わないくらいには
昨日は七夕でしたね
織姫様と彦星様は無事に出会えたでしょうか…?