第十三話 9本の尻尾
ネトコン13に応募させていただきました!
「………」
ゆっくりと起き上がる。
口に付いた血を拭い、手、足、と順々に機能を確認する。
(五体満足。変わったところはない)
スッと顔を上げるとそこに置いてあった鏡の中の自分と目が合った。
「え」
瞳や顔の形は変わっていないが、真っ黒な髪は臙脂色に変わっており、しかも…
「耳…?」
人間の耳がなくなって、頭に狐の耳が生えており、お尻からは9本の尻尾が生えていた。
試しにギュッと引っ張ってみる。
「痛い」
本当に生えているようだ。
(化狐の尻尾は1本だっのに、何で私は9本なんだろう?)
失敗してしまったのかもしれない。
「あ。ランがいない」
帰ったのか。死んだと思われたのかな。
「まぁ、いいや。化狐に手紙書いて、家を出よう」
要らない紙の裏にいつも置いてある鉛筆で『私が代わりに行くから心配しないで』と書き、幽世行きと書かれた切符を手にする。
(初めて会ったとき、化狐は『お客様は珍しい』『私が見えることがお客様の条件』って言ってた。
つまり、見えることは珍しい)
まぁ、追手も私が死んだと勘違いして、いないだろうし。
(なら、外に出ても大事ない)
玄関の取っ手に手をかける。
「お世話になりました」
ポツリと呟き、久しぶりの外に出た。