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第十二話 泣き止むなら

_コイツと話していると不思議と心が安らぎ、懐かしい気分になる。


(不審者で即刻打ちのめす対象なのに…)


 それはしたくないと体が拒否を示す。

「貴方、名前は?」

 考えるより先に口が動いた。

「名前?うーん…あ!【ラン】とでも呼んでくれ」

 明らかに偽名。だが、それでも良い。

「ラン。化狐を行かせない策があるなら、教えて欲しい」

 (しゃく)だが、仕方がない。化狐のためだ。

そう聞いた途端に上機嫌になるラン。とても腹立たしい。

「玉藻が代わりに行けば良いのだよ」

 

(私も考えた。でも、幽世での人間という存在は喋る肉袋程度。このまま言ったら…)


 まぁ、食べられること(パクリンチョ)は避けられないだろう。

そう講義する前にトンと1つの赤黒い液体が入った瓶を置かれた。

中身は明らかに何者かの血液だ。

「これを飲めば人ならざる者になれる。どうする?」

 ランの瞳が薄暗く光る。まるで試されているようだ。


(多分、()()()飲めば化狐は行かなくても済むようになる。

でも、人間にはもう…)


 それがなんだ?

「人間の姿に愛着なんてない。化狐を助けられるならそれで良い」

 瓶を受け取り、一気にあおる。

「おぇ…まずい」

 一言漏らしてしまうくらいにまずかった。

その言葉に苦笑するラン。

「だろうな。では、()()()()()()、明日の朝に会おう」

 ドクンと心臓が高鳴る。

視界が真っ赤に染まり、耳鳴りがする。

「ぐっ…!ぅう…!」

 堪らず、その場で崩れ落ちてしまう。


(痛い痛い痛い!!!!!)


 苦しい…辛い…死にたくない…!


(痛いのは嫌…!苦しいのも嫌!!でも…)


 チリンと風鈴の音とともに化狐の泣いている姿が脳裏に映し出される。


(貴方がこれで泣き止むなら、耐えてみせるよ)

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