第十一話 カラス
「っ誰!?」
バッと勢い良く後ろを向くと、ちょこんと座った銀色の瞳のカラスがいた。
「ボクはただの喋るカラスさ」
ニコリと笑うように目を細める。
「化狐をあの2本角の旦那のところに行かせたくないんだろう?」
口に出したのは代わりに行ければと言う言葉だけ。
でも、このカラスは手紙の内容を全て知っている様子だ。
「貴方が手紙を出したの?わざわざ、女性のフリをしてまで」
それなら、何故手紙の内容を知っているのか合点が行く。
「否、その手紙を出したのはボクじゃない」
嘘…ではなさそうだ。
「じゃあどうしt」
「シー」
カラスが人の形に変わる。
短い黒髪に銀の瞳。背中からは真っ黒な翼が生えていた。
それよりも…
(どうしてこっちまで来ているの…!?)
あの数秒で少し距離があった私の元に近付き、私の唇にカラス?の手が添えられる。
「ボクの玉藻はそこまで馬鹿ではないはずだろう?」
分かっている。このカラスは只者じゃない。
どうして、私の名前を知っている?
どうして、この短時間でここまで近寄れた?
どうして、化狐の家に入れた?
そんなことはどうでもいい。
それよりも…
【私はいつ、コイツと会った?】